自動車とCN_vol03

ガソリンなど炭化水素液体燃料がいかに優れるか【自動車のCN化-その真実_全てBEVになる日は来ないvol.07】

飛行機が飛ぶのも炭化水素液体燃料のおかげ

それにしても、炭化水素系の液体燃料と、それを燃焼させて力を作る「内燃機関」の組み合わせは、「自らの中に積んだエネルギーを使って、走り、飛ぶ」乗り物にとって、じつに良くできた仕組みなのだな、と、改めて痛感します。
その基本形が固まってすぐに–その直前まで、エンジンの燃料は石炭を蒸し焼きにして作るガスだったわけで、そのさらに前は石炭を直接燃やして水を加熱する蒸気機関が産業革命の“動力”となり、蒸気機関車の登場は1804年とされています。ここから鉄道が一気に普及していきました–、ガソリン・エンジンはまず車輪を駆動して道を走る「自動車」の発明を生み、同時期にモーターサイクル(2輪車)と船も、ダイムラーのグループが実機を作って走らせています。
自動車の誕生から17年後には、アメリカ・ノースカロライナ州キティホークで、ライト兄弟が世界初の動力飛行に成功しました。これが「空気より重い航空機」の歴史の始まり。この時に使われたのは自作の直列4気筒3.3Lのエンジンでしたが、すでに混合気を作るのはキャブレター、点火にはスパークプラグが使われています。ちなみに1886年のベンツ・パテント-モートァヴァーゲンのエンジンは、混合気生成は糸束に染み込ませたガソリンを蒸発させ、点火はランプ状の炎を小窓開閉で導く構造でした。この時はまだ“原始的”。ついでに触れておくと、航空機(主に中大型機)の動力が内燃機関でもピストンエンジン+プロペラからタービン推力(燃料は揮発性が少し控えめの灯油系)に移行したのは、第二次大戦以降のことです。第二次大戦中にジェットエンジンが開発、一部実戦投入され〜この頃の燃料はガソリンが主〜、大戦終結後、まずは戦闘機、続いて爆撃機、そして民間旅客機と、1950年代半ばまでの十年ほどの間に一気に「ジェット化」が進行しました。

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内燃機関で走るクルマの出現から17年後の1903年、アメリカ・オハイオ州デイトンで自転車店を営んでいたウィルバーとオービルのライト兄弟がほぼ独力で作り上げた複葉機が、ノースカロライナ州キティホークの砂浜で、離陸〜飛行に成功。これが「世界初の”空気より重く””操縦が可能”な航空機による動力飛行」である。エンジンは店員・技術者だったチャリー・テイラーが作った水冷直列4気筒3.3ℓ・12hp。ここから上下主翼間・左右に置いたプロペラをチェーンで駆動。プロペラトルクを相殺する逆回転を既に採用していた。横操縦は直方体状の主翼全体を端部を引っ張ってねじることで行う。
写真:public domain

こうした歴史を、技術進化と社会変化の両面で振り返るのも、今日から明日への動きがどこへ向かうか、何が主流になるかを考える時に、良い指針が得られます。文明と社会活動は同じような歩みや振れを繰り返しながら螺旋(スパイラル)状に進んできたものなので、未来予測は、まずは過去を知ることから。
これだけの移動機械と、それらが作り出す移動と社会を生み出し、支えてきたのは「液体炭化水素」燃料。体積・重量あたりの発熱量、すなわちエネルギーが大きく、つまりある質量の移動体が走り、あるいは飛行するのに、その中に積むエネルギー源の容積、重量が少なくて済む。とくに質量は運動のエネルギーに直結=比例し、「走る・飛ぶ」はそのエネルギー量を増減させる行為なので、これはきわめて重要。つまり移動機械として「効率が良い」ものになる。
同時に、この液体はとても“安定した”物質。
空気と混合して燃焼させるのにはちょうど良い揮発性を持ち、発熱とガス変化をコントロールしやすい。その一方で、人間が社会活動している地域の気象、とくに温度の幅、マイナス30℃〜プラス50℃ぐらいの中では液体状態を保ち、多少のショックを与えたり、小さな炎を投げ込んだぐらいでは着火しない。アクション映画などでクルマが派手に“爆発”するシーンがしばしば演じられますが、衝突や落下の衝撃程度ではあんなに簡単に圧力増加を伴う急速な“燃焼”が起こることはありません。あくまでもエンターテイメントとしての“演出”です。もちろん、「取扱注意!」なのは間違いなく、気化して空気と混じり合い、そこに何かの着火要素がある場合は、急激な燃焼が起こりますが。
だから、うまく制御した燃焼を作れば、一気に大きなエネルギーを生み出せる一方で、色々な形・仕組みで運ぶのも容易で事故が起こりにくい。これだけ普及したのも「なるほど」と納得できるエネルギー源なのです。<続く>

(両角岳彦)

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