アルピーヌA110注文から納車までに145万円の値上がり! 現在では1000万円オーバーとなったA110購入記録

■サラリーマン時代にハンコを押しました

A110を注文したのは2023年3月のこと。あと3年で定年になるというサラリーマンの時でした。そんな、サラリーマンがA110を注文に至るまでの経緯、そしてグレードやオプションの選び方をお話ししましょう。

有明のショールームにあったA110

有明のショールームにあったA110

思い起こせばスーパーカーブームを小学生時代に経験し、「いつかはあんなペタンコに低くてカッコいいクルマに乗ってやるんだ」と思い続けながらもサラリーマンを続けること三十数年。このままでは目も耳も衰え、反射神経も鈍り、ついでに物忘れも酷くなってると感じだした僕は、もう我慢しているタイミングではないんだと、僕なりの「スーパーカー」を探し始めました。

当初、考えたのはポルシェ。スーパーカーブームの頃は、イタリアのFとLの両社、それにデ・トマソなどの研いだ刃物のような当時覚えたての「ウェッジ・シェイプ」じゃなきゃスーパーカーじゃないという気もしてましたが、やっぱり”腐ってもポルシェ”みたいなことわざも会ったような気がするし、その絶対的なブランドにはどうしても抗うことができない感覚でありました。

930ボディのポルシェ911SC

930ボディのポルシェ911SC。やっぱ憧れですな

ただし、ぜったいに911です。クルマとしてボクスターだってケイマンだって、決して悪いクルマでもなく、乗ればやっぱりポルシェです。けれど、一生の思い出にする一台が、寝たきりになったときベッドの上で「あの時、どうして911にしなかったんだろうなぁ……(涙)」となるのだけはどうしても避けたいと思いました。

かといって、最良のポルシェなはずの最新型である992、ちょっと譲って991でも、サラリーマンをあと50年くらい続けた退職金でも無理っぽい。となると、涙目の996も悪くはないけど、機械仕掛けが電気仕掛けになった時代で却ってお金が掛かりそう。というより、ずーっと以前から「いつかはポルシェ」のポルシェは僕の中では930でした。ナローは子供の頃から既に旧車のイメージでしたし。

だけど御存知の通り、すべての空冷相場はすでに高騰し、とてもじゃないがメンテ代を手元に残して買えるような金額ではなくなっていたし、動かせずに朽ち果て得ていくのを見守るオブジェを買ってしまうことになりかねません。

実は僕は数十年前、「小さい頃に親父が家族を色んな所へ連れて行ってくれたスバル360ってどんなクルマだったんだろう?」と思って買ってはみたものの、実用性はほぼなく実物大オブジェとして過ごした経験から、古いクルマには苦手意識もあります。

手頃な個体も見つからぬまま相場は上がり続ける2年くらいをダラダラと経過し、「930もう無理か…・・・だったらカッコよくて普通にいつでも走れるのがいい」と頭を切り替えました。そこで「はっ!」と思い直したのがアルビーヌA110です。2018年にフランス大使公邸での発表会で見たときからカッコいいと思ってましたし、乗るとめちゃくちゃ楽しい。唯一気に入らないのが2ペダルであること。これから老化防止も考え絶対マニュアルでと思っていましたが、改めて考えるとそんなこと忘れさせるくらい足がいい。

それに何よりも、近い将来、純ガソリンエンジン車は生産できなくなるのが目に見えている。そうなればクラッチペダルが無いどころじゃない。それに、コスパ最高のスーパーカーだし、リセールバリューも期待しちゃいます。

えい、注文しちゃえ!と契約書にハンコを押してしまいまったのが、まだサラリーマンだった2023年の3月末でした。

さて、そのハンコを押す手前にはもちろん、どのA110を選ぶか?という最大の楽しい悩みがありました。その頃のラインナップは、ただのA110の通称ピュアと、A110GT、A110Sがありました。
A110Rも発売済みでしたが、すでに完売かつ1500万円の価格はとても手が出ませんので除外。ならば選ぶのは3種類から。

A110全車に搭載されるM5Pエンジンはベースが日産MRエンジンで製造は韓国工場

A110全車に搭載されるM5Pエンジンはベースが日産MRエンジンで製造は韓国工場

エンジンはすべて1798cc、ボア・ストローク797✕90.1mmの4気筒ターボエンジン。通給圧その他制御の違いにより、ビュアは185kW(252PS)/6000mm、320Nm(32.6kgm)/2000rpmを発生させ、GTとSでは221kW(300PS)/6300rpm、340Nm(34.6kgm)/2400rpmを発生。

何と言ってもGTとSの出力「300ps」はピュアの「252ps」より魅力的に映ります。どうせ買うならスペックが低い方は選びたくない、と思うのは日本人の悪い癖のようなものでしょうか…。
A110 Sは、引き締められた足まわり「シャシースポール」が最大の特徴なのに加え、外観ではエンブレム類がブラックアウトされるなどスポーティな装いとなります。ブレーキキャリパーカラーはオレンジが標準となり、フロントスポイラー&カーボン製リヤスポイラーの専用エアロキットがオプション設定されます。インテリアトリムにはマイクロファイバーが多用され、タイヤは3グレード共通のミシュランパイロットスポーツ4が標準。

A110Rにもフランスディエップで乗りました

A110Rにもフランスディエップで乗りましたが、スーパーカー過ぎて選択肢から外れました

Sならば、より峠やサーキットでは楽しめそうですが、普段使いにはややハードかなあ。一方GTとビュアはロングツーリングまでこなす、A110らしいしなやかな足まわりです。それにGTは、シートバック角やハイト調繋式のリクライニングシートですが、Sとピュアは高さはやや特殊な工具によってディーラーで変更を推奨されている3段階の調整シロがあるものの、普段は前後調整のみ可能なバケットシートが装備されます。

どれもそれぞれに選ぶ理由がありそうですが、改めて考えてみると、A110にはしなやかな足を求めている。せっかくならスポーツカーらしいバケットシートを選びたい。絶対的な速さよりも気持ちよさを求めている。サーキット走行は今のところ予定がない。なにより、A110の魅力はコスパ最強のスポーツカーである。しかも、7速DCTはトルクの低いピュアのほうがダイレクトなセッティングになっているらしい。

そう考えると、もう選択肢はビュア1択に絞られていました。老後資金を少しでも取っておきたいですしね。

ヘリテージカラーの立体色見本

ヘリテージカラーの立体色見本

次に選ぶべきはカラー。A110は、追金ナシのスタンダードカラーと2種類の通常有償色に加え、過去のA110をオマージュした特別な有償色「ヘリテージカラー」が選べます。スタンダードは0円、スタンダードオプションが12万円と27万円、ヘリテージカラーが72万円(価格はいずれも契約時のもの)ですので、回らない寿司屋で言うところの、梅、竹、松いずれかの握りセット、またはカウンターでお任せで食べるような選択肢でしょうか。ヘリテージカラーにはめちゃ魅力的なカラーがありますが、車両本体価格の1割も色だけにお金は出せない貧乏性と、まあ何より一番似合うと素直に思えるブルーアルピーヌを選びました。

ホイールはFUCHSで鍛造のシルバー。キャリパーはイエローを選択しました

ホイールはFUCHSで鍛造のシルバー。キャリパーはイエローを選択しました

あとは、シルバーのFUCHS製18インチ鍛造アロイホイール (+16万円)、イエローのブレーキキャリパー(6万円)、左ハンドル(追加0円)を選択し、自分にとってはとても高価な買い物をしてしまったわけです。ちなみに、メーカーオプションでFUCHSのアロイホイールを選択すると、車検証上の車重が5kg軽くなり、1115kgから1110kgとなるので、希望ナンバーの数字を定番の「・110」ではなく「1110」としたのです。さて、ここまでに書いたオプション価格は、僕がハンコを押した時点で選べたものの税込み価格です。

では、本体価格の変遷について触れておきたいと思います。
A110が日本にデビューした2018年6月、その本体価格は790万円(このときはピュアのみ)でした。エンジンはともかく、その他をアルミで専用設計した2シーターミッドシップスポーツカーとしては、かなりのコストパフォーマンスに思えました。

その後、一部改良や限定車の発売、GT、Sなどの追加があるものの、ピュアはおよそ800万円前後の価格設定をキープしていました。ところが、円安の影響が大きいと思われますが、2022年11月に845万円となります。それ以前に他の輸入車は軒並み価格を上げてきていましたので、ルノー/アルピーヌは頑張ってたように思ってました。そのせいもあって、「値上げはまだ続くのではないか?」と噂されていましたので、ガソリン車が無くなる以前に買えない価格になってしまうかも、という懸念から購入に至ったわけです。

案の定、その後の2023年4月には30万円アップの875万円、同年10月には940万円、翌2024年2月には990万円。なんと、僕がハンコを押してから、145万円も値上がりしてしまいました。その後もさらに値上げ続け、2024年10月には1,040万円とついに大台を超えています。

ちなみに、2024年12月末現在での本国フランスでの価格は65,000 ユーロ(約1070万円)、イギリスでの価格は54,490ポンド(約1080万円)なので、実は日本はお買い得なのです。輸送費を考えても日本のほうが安いのは理解できません。春頃にまた値上がりするのかも知れませんね。

フランスのA110は6万5000ユーロから

フランスのA110は6万5000ユーロから

イギリスののA110は5万4490ポンドから

イギリスののA110は5万4490ポンドから

純ガソリン車に乗れなくなる、騒音規制もだんだん厳しくなっている、ADASその他の装備義務化で重くなっていく、原材料費その他の高騰で価格は上がることが予想されます。

それになにより、人生において自分の身にいつ何が起きるかわからないが確実に歳は取っていく。そう考えると、すぐに好きなクルマを手に入れることをおすすめします。残りの人生において、今が一番若い自分なんですから。

(文・写真:小林和久)

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