ヤマハの電動小型特殊車両「DIAPASON(ディアパソン)」に乗って気付いた大東さんが目指すこれからのメーカーのあるべき姿

ディアパソンとはなんだ?

東京オートサロン2024会場ヤマハ発動機ブースには何台もの小型電動車両が展示されてました。名前はディアパソンとされてますが、電動であること以外特に共通項は見当たらず、何を持ってしてディアパソンシリーズと言っているのがはっきりしませんでした。ちょうど近くにいた広報担当の岩崎さんに「この展示は何なんでしょうか?」と素直に尋ねてみたところ、「ちょうど担当者の大東さんがいらっしゃいますので、直接聞いてみてください」とのことで短時間でしたがインタビューを試みました。

↑東京オーロサロン2024に展示されたディアパソンたち

まずディアパソンと言うシリーズはプラットフォームであるとのことでした。プラットフォームと言えば、我々自動車に接した人間からすると、フレームやシャシーなどをイメージしますよね。けれど、どう見ても、大きさも駆動方式も違う乗り物たちでハードウェアの共通項は見当たりません。結局モーターやその制御などのプラットフォームが共通項なのだと解釈したのでした。

2024年末、再びディアパソンを個別に取材する機会に恵まれました。ちょうど東京オートサロン2025へのヤマハ発動機が出展する車両が発表されたタイミングでした。ディアパソンC580が二台展示されるとのことで、ディアパソンは小型特殊車両で農家のお年寄りなどが普通免許を返納しても農地に行けるような乗り物としても使ってもらう乗り物であり、AIを使ってデザインしてたんだ、ということで、コンセプトだけでなく開発手順も新しいのだという内容でした。

そして、2025年6月いよいよディアパソンに試乗できると言うことで、参加してきました。

C580は、小型特殊車両なので、最高速度は15km/hとされています。オートサロン出展時は左ハンドルだったのですが、これを右ハンドルに変更し走らせるためではなかった。デザイン展示のためシートポジションも人が座れるようなものではなかったのを、ちゃんと運転できるドライビングポジションを決められるような手直しもされたとの事でした。

逆に言えば、メカニカルな部分では、サスのセッティング、アライメント、ステアリング切れ角など、まだ手をつけていないとのことで、走って車両を評価するみたいなタイミングではまったくありません。

では、なぜこのタイミングで試乗会を開いたのか。それはディアパーソンと言うプロジェクトは、担当者の大東さんが乗り物を作りたかったわけではなく、人を作りたかったからです。

大東さんは、某自動車メーカーから某工学機器メーカーを経て、ヤマハ発動機へ入社しています。そこでの経験を踏まえ、これからのメーカーのやるべきこと、開発の方法などを考えた場合、開発期間を大幅に短縮させるために、AIによるデザイン案の創出、ベンチャーも含めた他者との共創などが必要だと感じていました。これらは、これまでの会社でやりたかったこと、やれなかったことをヤマハで実現しようとしているのです。

大東さんはそういう考えを持ってくれる。若い人を育て、社内外の発想や行動力のすごい人たちをも一緒になって、新しいものを生み出すことができるようになるのが、これからのメーカーの1つのあり方だと考えているのだそうです。2024年のオートサロンで明確に理解できなかった大東さんの目指すプラットフォームはこうした仕事の流れを含んで意味していたようです。

ディアパソンは、そのための1つの手段であり、それを成功させることが、次のステップへのスタートとなるのでしょう。

ディアパソンC580のCはコンセプト、580は開発者の小屋(こや=58)さんにちなんでいます。ディアパソンシリーズの数字は、すべて開発者の名前に関連させているのです。そうすることによって、プロジェクトを投げ出さない、最後まで面倒を見るだろうと言うのが大東さんの狙いだそうです。トヨタだってホンダだってスズキだってフォードだってポルシェだってみな創業者の名前ですもんね。ヤマハも日本楽器を創業した山葉寅楠(やまは・とらくす)が由縁です。

ヤマハ発動機技術研究本部共創・新ビジネス開発部の大東淳さん(左)とヤマハモーターR&D台湾総経理室に所属しC580開発プロジェクトリーダーの小屋孝男さん。

そして、このほど羽田空港でプライベートジェット向けの荷物搬送車両にディアパソンC310が実証実験として供されるようになりました。

空港旅客ターミナルとプライベートジェットを結ぶ手荷物輸送の実証実験に供される「DIAPASON C310」

大東さんが目指す新しいメーカーのカタチは着々と進んでいるようです。御本人は「プロジェクトが大きくなってくると周りから色々言われるようになるんですよ」とおっしゃいますが、「ヤマハは”出る杭は伸ばす”社風だ」と言います。他社は”出る杭は叩く”どころか、”出る杭は抜く”会社もあるようです。大東さんが担当するディアパソンの次の”杭”にも期待しましょう。

大東さん

(文・写真:小林和久)

 

 

 

 

 

 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP