「クルマはもうすぐ、全てデンキジドーシャになる?」その答を導き出す【自動車のCN化-その真実 全てBEVになる日は来ないvol.001】

「そろそろ、デンキジドーシャに買い替えた方がいいんでしょうか?」

はじめに……

新しい(ものだけではないか…)クルマに乗って”味見“をする。その体感と、エンジニアリングを重ね合わせて、考え、語る。そんなことを、もう何十年にもわたって続けてきました。ざっと振り返って、何千台かのクルマと対話してきたことになります。
そんなことを生業(なりわい)にしていると知った方々から、最近とりわけ多く問われること。それは…
「そろそろ、デンキジドーシャに買い替えた方がいいんでしょうか?」
私の答えは、簡単。
「当分、いや私たちが生きている間は、今とおんなじ『エンジンで走るクルマ』で大丈夫ですよ」。
なぜそういう結論が導き出せるのか。そこをちゃんと筋道立てて語ろう、というのが、このストーリーの狙いです。

Erster Mercedes-Benz Ladepark in den Vereinigten Staaten am Firmensitz von Mercedes-Benz USA in Sandy Springs, Georgia, eröffnet First Mercedes-Benz Charging Hub in North America located at Mercedes-Benz USA Headquarters in Sandy Springs, GA
ジョージア州サンディースプリングスのメルセデス・ベンツUSA本社に開設された、北米初となるメルセデス・ベンツの充電ハブ。

最後まで読んでいただければわかるように、私(だけでなく、現実認識を共有する少なからぬ人々)は、電気自動車を否定しているわけではありません。ただ、今日、世界中に存在し、使われている17億台とも言われる「自動車」の全てを、自車に搭載した電池の電気エネルギーで走るクルマに置き換えることは、当面は(五十年、百年というスパンで)できない。その中で私たちは、どんな動力源をどのように使っていけば、クルマを使う移動や輸送によって排出されるCO2 を、リアルに減らしてゆくことができるのだろうか。そこをもう少し論理的に、科学的な視点からの分析と考察を軸に語っていこうと思います。

Fast-charging stations should be used to briefly recharge when the state of charge is low.
BEVの普及には多くの急速充電器の設置が必須とも語られるが、急速充電はバッテリーへの負荷も大きく、一般に劣化を促進するとされる。

日本の世間一般で、「社会的雰囲気」と化してしまった「クルマはもうすぐ、全てデンキジドーシャになる」という俗説–それは無知・無責任な“メディア”が導いたものです–を一度クリアして、「私たちは今、これから、道路を使った移動をどう“デザイン”して行こうか」に、私と一緒に思いを巡らせてみてください。
これからは、というよりも今この時は、「エネルギー源の多様化」に向かう時代です。
それはクルマや、他の交通機関にとっても共通する課題であり、ならばどんな移動機械に、その使い方に応じて、どんなエネルギー源を割り当てるのが良いのか、その最良の組み合わせを見出していかなければならない。その転換点に、私たちは立っているのです。
大学院時代に毎月、車両運動特性計測をしていた頃まで戻って数えると、もう50年近くにわたって自動車を走らせてその特質・特性を把握し、分析し、エンジニアリングと結びつけつつ考える、というプロセスを繰り返してきています。それなりに体験し、知り得たことも多いわけで、そうなると最近は様々な方々から「電気自動車ってどうなの?」「そろそろ(電気自動車に)乗り換えを考えたほうがいいのかな?」などという問いかけをいただくことも多くなっています。
これに対する私のお答えは簡単。
「当分は、これまでどおりの『内燃機関で走るクルマ』に乗り続けていていいですよ」。

2021年12月14日、「トヨタは2030年までにBEVを30車種を展開、グローバル年間販売を350万台にする」目標を発表していました。

このストーリーの中で、その意味を説明する内容を、今、私が知るかぎりの実態と情報を、整理してお伝えしたいと思います。一般のメディアが断片的に、しかも十分な知識と理解を持たずないまま、「お題目」–この場合は「自動車は明日にでも全てが“電気自動車”になる」「CO2 を出さないから」–に当てはめるだけで送り出す情報と、それが醸し出す「社会の雰囲気」、さらにはその情報の断片、雰囲気、気分に追随するだけの企業経営、行政、政治…の危うさを少しでも理解し、ご自身の頭脳で考えていただければ幸いです。

「BEV(バッテリー=電池に蓄えた電力で走行する電動車両)は、日々の暮らしの中で様々にクルマを使い、時々は遠出もする、という“ふつう”のオーナーが、購入して暮らしを共にする対象として考えなくてもいい。これが現時点での私の判断。
もっと広い視野に立つと、BEVはこれからの道路交通には欠かせない存在。ですが「今の世界に存在する自動車の全てがBEVに置き換わることにはならない」。BEVは「あるエリアをカバーする道路交通インフラストラクチャー」という役割を担って行くことになるでしょうし、そういう社会に向けて動いていかなくては。私はそう考えるに至りました。
まずはその意味するところについて、お話ししてゆくことにしましょう。これについては…

●ユーザーとして、BEVという移動空間を、どう捉えればいいか。
●自動車として、その技術構築と運動能力に照らした時に浮かび上がるBEVの特質と限界
●科学技術の原理原則から見たBEVの現状と将来

と、複数の視点から見て、考えて行く必要があります。
この後、これらを複数のブロックに分けて、見て、考え、論じていきます。

(両角岳彦)

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