自動車とCN_vol02

「CN燃料」を燃やす「ICEV」となってもハイブリッドは必須【自動車のCN化-その真実 全てBEVになる日は来ないvol.04】

「内燃機関自動車全面禁止」は転換ムードへ

「カーボン・ニュートラル(CN)液体炭化水素燃料」を燃やす内燃機関(Internal Combustion Engine)で走る車両、すなわちICEVが当面の方向だと考えた私は、「CN燃料の合成・その量産化」に関わる情報に目を配るようになったのですが、いうまでもなく最近は、それをインターネット上でウオッチするだけで、確度の高い情報が刻々入ってきます。合成燃料の量産可能性はもう20年ほど前から具体化していましたが、とりわけ2020年を過ぎて、ガソリン、軽油、航空用燃料それぞれに「量産を前提にした生産設備の建設」「CN燃料合成事業への投資」などが活発になってきました。さらに2022年以降、実際にCN燃料の生産が始まったり、日本でもその技術を導入、市販に向けた動きが始まっています。
ここまで来ると、先ほどの「ICEVとBEVの棲み分け」が現実のものとして迫ってきました。一度は「内燃機関で走る自動車(ICEV)の販売はいずれ全面禁止」を提唱し、自動車メーカーもそれに対応する動きを始めたヨーロッパで、2023年春から180度に近い方針転換が起きているのも、これを反映したもの、と読み解いていいでしょう。
世界各国・地域でBEVの販売減速が表面化しているのも、新しいモノへの興味と表面的な“エコ(ロジー)”・ムーブメントに動いた人々の需要が一巡したのと、BEVがまだいろいろと抱えている「自動車としての難しさ」がそうしたユーザーの実感・実体験から社会に広がっているのと、そして何より「CN燃料が現実になって、内燃機関はなくならない」ことが、人々、メディア、社会に、じわじわと浸透してきたからだと思います。日本はまだまだ…ですが。
こうしたカーボン・ニュートラル技術の進化を踏まえて、電池と炭化水素液体燃料のそれぞれが持つエネルギー源としての特質にまで立ち戻ると、これからの自動車における動力源の「棲み分け」と、そこに向けて交通社会をどこに向けて変えて行くのが望ましいか、がよりクリアに見えてきます。
まず、大量のモノや人を、長い距離を一気に走って運ぶ車両、大型トラックや長距離バスはCN燃料を燃焼させるディーゼル・エンジンで。これは今と変わりません。でもそこに自動運転に向かう最新技術とそれを支援する道路や施設が欠かせない時代になるはずです。この話はまた別の機会に。

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BEV化に向いている分野:短距離路線バス/ヨーロッパ(と中国他途上国)では日本的に言う路線バスに電池-電動化車両の導入が進んでいる。運行基地から出発してある距離を走り、またその基地に戻るので、そこに中大規模の充電設備を整備することで、公共交通機関としての運用システムが構築できる。残念ながら日本ではバスメーカーもオペレーター(運行社・組織)も資本・資金が極端に減少し、新しい車両の開発は停滞、車両を揃え運行基地とシステムを整備することもままならない状況。本来、公共交通機関には資金と運用に行政が深く関与すべきであって、欧州・途上国ではそれが当たり前なのだが。(写真:Daimler)

一方、決まったエリアを走って人の移動を受け持つ路線バス–これからはオンデマンドやBRT(バス・ラピッド・トランスポート・システム)など、必要とする人々に必要な場所と時間に移動サービスを提供する方向へ進むはずですが–やタクシーなどのトランスポーテーション・サービス、あるいは今で言うと宅配や郵便などの集配サービスなどは、BEVの出番です。走る場所や経路などのパターンが管理しやすく、ということはエネルギー消費量が把握でき、車両が定置場所に戻ったら、供給もコストも安定していて、かつカーボン・ニュートラルに作られた電力を使って、電池にも優しい充電(これについても後で触れます)をする。

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BEV化に向いている分野:地域内配送・ワーキングビークル/1回の使用での走行距離が短く、運行基地に戻って充電が可能、そして走行速度が高くない。走行時に燃焼ガスを排出せず、騒音面でも静か、というBEVの特質が社会適合する。という意味で、物流の末端における個別配送、ごみ収集(写真)などはもっと積極的にBEV転換することが望ましい。もちろんタクシーなども。(写真:Daimler)

こうした棲み分けによって、まずは異なる動力源で走るクルマを「適材適所」に配し、同時に「エネルギー源の多様化」を実体化しつつ、CO2 排出も削減する自動車社会への移行を、できるだけ早い速度で進める。これが今、ものづくりから使用者、そして社会システム全体に至るまで、自動車に関わる者が追求すべきテーマになったわけです。
そして、ここまでの現実とそこにある科学技術を踏まえると、様々なタイミングで、様々な道を、少なからぬ機会には「楽しみながら」走る「個の移動空間」としてのパーソナルカーは、これからも内燃機関を主たる動力源として走るものでいい、というところに行き着きます。ただし、これも後でじっくり説明しますが、単純に「内燃機関だけで走る」クルマを選ぶのも趣味としては「あり」ですが、移動空間としての資質において、そしてせっかく作ったCN燃料を個人としても社会としてもより有効に使うために、モーターと電池による電動機構を組み合わせた、いわゆるハイブリッド動力で走るクルマが圧倒的多数になって行くはずです。そのための「ハイブリッド動力」は、内燃機関とモーターがお互いの「得手不得手」をカバーしあって、より少ない燃料で、クルマが走る中で求められる様々な「力の表現」もちゃんとできる、つまりドライバーにとっては「意のままに反応する」、自動制御システムにとっては「制御性が高い」、そういう動力源であることが求められます。ここで言っておくなら、残念ながら「ハイブリッド車では世界に先行している」というフレーズを冠して語られがちな今の日本車はまだ、そうした資質を有してはいません。むしろ技術と実装の両面において世界に遅れをとりつつある…のが、現状なのです。この話も、詳しくはまた後段で。<続く>

(両角岳彦)

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