スーパーフォーミュラ 2026年第3戦 オートポリス Spotter Guide
今戦は、土曜日午後に予選〜Q3までの3セッション〜、日曜日午後に決勝の、2日間1戦のイベント。
タイヤ交換義務は「11周完了」から。
■レース距離:191.634km
(オートポリス インターナショナルレーシングコース 4.674km×41周)
(最大レース時間: 75分 中断時間を含む最大総レース時間: 120分)
4月26日(日) 14時30分 フォーメーションラップ開始予定
■予選:ノックアウト予選方式〜今季、1大会1レースにおいて実施される「3ステージ方式」
Q1はA,B各組12車→各組上位6車・合計12車がQ2に進出→上位5車がQ3に進出。
4月25日(土) 14時15分Q1A組 開始予定
- 公式予選Q1はA組10分間、5分間のインターバルを挟んでB組10分間。そこから10分間のインターバルを挟んでQ2は10分間の走行。そこから10分間のインターバルを挟んでQ3は7分間の走行。
- 公式予選Q1のグループ分けは、第3戦決勝終了時のドライバーズランキングに基づいて、主催者(JRP)が決定する。ただし参加車両が複数台のエントラントについては、少なくとも1台を別の組分けとする。
- Q1の組分けは…
- Q2進出を逸した車両は、Q1最速タイムを記録した組の7位が予選13位、もう一方の組の7位が予選14位、以降交互に予選順位が決定される。
- Q2上位5車がQ3に進出。以下、予選6~12位が決定する。
- Q3の結果で、予選1〜5位が決定する。
- 公式予選通過基準タイムは、Q1各組それぞれの1位タイムの107%以内とする。
- 各セッション終了直前にアクシデント等で赤旗提示、走行が中断された場合は、コースインして1周し、次の周回でタイムアタックが可能な残り時間を設定して再開する。(スーパーフォーミュラの慣例として)
- オートポリスにおける現在のSFのコースレコードは、2020年11月15日第4戦・予選Q3で野尻智紀(無限)が記録した1分24秒140。コロナ禍で開催時期が遅らされた年で、この日も予選時間帯の気温20℃、路面温度24〜25℃という、大気密度、路面ともに良いコンディションだった。
SF23エアロに切り替わってからは、2023、2024年とも5月開催、ドライ路面だったが、2023年5月20日第4戦・Q2で坪井翔(セルモ)が記録した1分26秒187が現状最速。この日は気温23〜25℃、路面温度38〜40℃弱で、オートポリスは標高が高いのでもともと気圧が低く、気温が上がるとさらに大気密度が下がり、空力ダウンフォースが減るだけでなく、NREのターボチャージャーの遠心圧縮機の圧縮仕事限界に入り込む(コンプレッサー・サージ)ことも知られている。そこに路面温度の高さもあって、タイムが伸びない傾向になったものと思われる。
昨年は土曜日が雨と霧(山にかかる雲の中)で走行は全て中止。予選を日曜日午前に実施したが、路面はなんとか水が消えたかどうかという状態で、40分間1セッションの計時予選の中、野尻の1分26秒767がポールタイムとなった。その後にも雨が少し来たりして、午後の決勝は曇天の下、気温20℃、路面温度も上がらず20℃というコンディションでスタートしたのだった。今戦は好天だといいのだけれど。本稿執筆時点での天気予想は主に「くもり」のようです。
■今回のトピック:燃料リストリクターとエンジン特性について
まず、お詫びから。
前回、第1・2戦向けSpotter Guideで、燃料リストリクターによる燃料流量(質量)上限を「88kg/h」と記しましたが、現地での聞き取りの結果、今季も昨年までと同じ「90kg/h」であることが判明しました。
昨年暮れ、鈴鹿でのルーキーテストでは今季の移行を見据えて2kgダウンの88kg/hを試用したものの、その後、今季は変更なしと決まったことが、専門メディアでもフォローされていず、また主催団体であるJRPからも「今季のレース・フォーマット」としての基本情報各種が発表されていないことから、事実確認が後回しになってしまった…。言い訳です。
流量上限を2kg/h、2.2%絞っただけで、ドライバーからは「コーナー脱出加速でアクセルペダルを踏み込んでも、すぐに力が頭打ちになり、加速しない」「これでは、とにかく奥まで踏み込んでしまうしかないので、ドライビングのリズムが崩れるし、そこで巧拙の差がつかない」「SFらしい走り、攻防ができなくなる」といった意見が多く出て、90kg/h継続の判断になった、とのこと。何か、今季のF1で噴出している問題とオーバーラップする話。F1では、ターボチャージャーと同軸に排気エネルギーを利用して発電するMGU-Hを廃止する一方、エンジンに直結されている駆動用モーターMGU-Kの出力も、1周の中で“回収”できる電力量も大幅に増やした。その結果、減速回生で得られる発電量では1周分に足りず、高速を保ちつつ速度とアクセルワークを微妙にバランスさせるはずのコーナーで、エンジンは全負荷運転を維持、旋回維持に必要なトルクだけは駆動に使うけれど、残りは全てMGU-Kに送り込んで発電する、という状況になっている。ドライバーとしては、感覚と勇気をフル稼働させて“挑戦する”高速コーナーが、アクセルペダルはベタ踏みのまま、ステアリングだけで通り過ぎる場所になってしまった。外から走りを見ていても、ギリギリの車両運動で旋回していない。それでも、1周のラップタイムをできるだけ短くするためには、高速まで速度を伸ばすストレートで放出できる電力量を確保しないと、で、高速コーナーでそのための電力を得るように走らせるのが“正義”になってしまったわけだ。でもその方向には進まないのがSF、ということで、これは歓迎したい決定。
そういえば、NRE(Nippon Racing Engine)導入時には、私もあちこちで燃料リストククターの効果と「燃料流量上限を決める」機構について解説したけれど、最近はすっかり「当たり前」にしてしまっていたな、と思い返し、ここで簡単に復習しておくことにします。
まず、あるエンジン回転速度から上で燃料の流量が一定に保持されるようにすると、その効果が生ずる回転速度から上では概略、「出力一定」となる。出力は「トルク(回転力、すなわち燃焼圧力でクランクを回す力)×回転速度」で表される「仕事量」なので、燃料リストリクター領域では回転上昇=時間あたり燃焼回数の増加に対して1回の燃焼に使える燃料の量が減るので、回転速度に反比例してトルクは(ほぼ直線的に)低下する。つまり、クルマを前に押す力は一瞬一瞬に減少してゆく。ドライバーの体感として「力が出ない」「加速しない」のは、まさにそのとおりなのだ。でもその「力」を積み重ねた「仕事量」、つまり一定の距離をフル加速するのにかかる時間、そしてその積み重ねとしての到達速度(最高速)が各車同じレベルにコントロールされる、ということになる。もう少し細かく見ると、往復&回転運動機構であるエンジンは、回転速度の上昇とともに内部損失が増えるので、「出力一定ライン」に到達してから先は、出力特性のカーブも徐々に下降してゆく。
(作図:筆者)
この流量(上限)一定をどんなメカニズムで実現するのか。
NREは燃料をシリンダー内に直接噴射する。そのために、燃料タンク内からガソリンを吸い上げて送る低圧ポンプからの燃料配管の先に、バルブ駆動カムシャフト端で回転させるカムを使ってピストンを往復させ、燃料に圧力を加える高圧ポンプが組み込まれている。この高圧ポンプの入り口側に、燃料リストリクターが組み込まれる。これは細い管の中を一定の圧力によって流れる液体は、その管路に絞りがあると流速が上がり、それが音速を超えると衝撃波が発生して一気に流れが阻害される、という原理を応用したもの。その効果が流体の質量によって決まるので、質量流量の上限を定める、ということになる。
ここで流路に組み込む絞り管(ジェット。管路絞りという意味でオリフィスともいう)は、その効果をどれも同じにするために、並列で流す2個をひと組にしてあり、ジェット個々の絞りのばらつきを、組み合わせで一定にするようにしている。SF用ではこの基本絞り路と並列に、10kg/hを通過させる別の経路が組み込まれていて、これがオーバーテイク・システム作動時に開く。こうして高圧ポンプが吸い込むガソリンの最大流量が決まる。その手前までは、高圧ポンプはカムシャフトの回転によってピストンが往復する機構なので、エンジン回転速度に比例した燃料流量が得られる。そしてこうしたリストクターでは当たり前のことだが、リストリクターが作動してしまうと燃料の流れが乱れ、しばらく安定しないため、その手前から噴射弁の開時間=流量を抑えて一定値に落ち着かせるような制御も、各社組み込んでいる。この高圧ポンプから先の燃料配管は閉回路になっていて、その内部は現状のNREでは200気圧に保たれる。インジェクター(噴射弁)も各社が同じ基本仕様の製品を使うことで、性能全般の均質化も図られている。
(作図:筆者)
これらの機能がユニット化された燃料リストリクターは、全品が流量特性の確認(ジェットの組み合わせ調整)を行なった上で、大会ごとに抽選で各車に割り当てられて、その現地で組み込まれ、回収されている。
(写真:筆者)
■燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(117.7L/h)
- 前戦・本稿で紹介した今季用ENEOS製「E10」ガソリンだが、そのもてぎラウンドの公式通知として公示された「燃料性状表」では、比重7417、揮発性を示す温度-留分の数値など、ほぼこの時期の一般的な市販ハイオクタン・ガソリンと同等と見なせる内容だった。しかし今戦に向けて同様に公示された「燃料性状表」では、比重0.7645とかなり“重く”、加熱した時の気化性も高温寄りとなっている。以前も記したように市販されるガソリン、軽油は季節や地域に応じてブレンドを変えるカクテルのようなものであり、これまではサーキットそれぞれのスタンドに納入されたガソリンをそのまま使っていた。これに対して今季の専用燃料は、使用量もけして多くない中で成分調整を行なって製造するので、気化〜燃焼において条件が厳しくなる「夏場」向けの特性としている、という情報もあり、また前回も記したようにエタノール混合によって若干減少する炭素量を、ベースのガソリンの含有炭素量を増やすことで補う〜それだと化石燃料起源の炭素、その燃焼で生成するCO2の量はほとんど減らないわけだが〜、というENEOS担当者の発言も確認している。またエタノールの一般的な比重は0.8前後でもあり、今回の性状表の内容はこれらの方向に沿ったもの、と見ることができる。この件、もう少し追いかけてみるかも。
- NRE(Nippon Racing Engine)導入直後の2014年は最大流量100kg/h(8000rpm以上)、2015年からは95kg/h(7600rpm以上)へ。この間もSUGOのみ90kg/h。2016年以降は鈴鹿と富士を除いて90kg/7200rpmまで絞られた。鈴鹿と富士は95kg/hを2020年まで継続。2021年からは全てのコースで90kg(7200rpm以上)の設定に統一されている。
ちなみに今回、某検索エンジンのAIモードで「スーパーフォーミュラの燃料リストリクターによる流量の推移」を検索してみたところ、初期の100kg/h、近年の90kg/hは拾い出したけれど、サーキットそれぞれの設定違いや、全体としての変遷状況は拾い出せず、間違った内容が表示されました(笑)。インターネット上にはそこに触れた記事や公示がほとんどないから、ではありますが、こうした事象やメカニズムなどの経時的検索は、相変わらず要注意です。
■オーバーテイク・システム:最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)。
作動合計時間上限:200秒間
ステアリングホイール上のボタンを押して作動開始、もう一度押して作動停止。
一度作動→オフにした瞬間からの作動不能時間(インターバルタイム)は、オートポリスでは100秒。
- OTS作動時は、エンジン回転7200rpmあたりで頭打ちになっていた「出力」、ドライバーの体感としてはトルク上昇による加速感が、まず8000rpmまで伸び、そこからエンジンの「力」が11%上乗せされたまま加速が続く。ドライバーが体感するこの「力」はすなわちエンジン・トルク(回転力)であって、上(燃料リストリクター作動=流量が一定にコントロールされる領域)は、トルクが10%強増え、そのまま回転上限までの「出力一定」状態が燃料増量分=11%だけ維持される。概算で出力が60ps近く増える状態になる。すなわちその回転域から落ちない速度・ギアポジションでは、コーナーでの脱出加速から最終到達速度までこの出力増分が加速のための「駆動力」に上乗せされる。
- ドライビングとしては、直線全体の加速(余裕駆動力)が強まり、先に待っているコーナーへのアプローチで速度が高まる、ということは、ブレーキングはその分だけ手前から始めないと、そのコーナーにターンインし、旋回することができる速度まで減速できない。OTSを作動させた時にはこの感覚の調整も要求される。
- 後方を追走している側は、前走車がOTSを発動させれば加速が段付き状に強まるので、それがわかり、どう対応するかを判断することは可能なはず。先行する側は、「ここで使ってきそうだ」と思ったら“ディフェンス”OTSを発動させる手もあり、実際にそうしたケースが増えているが、後続車両のドライバーは早めにOTSを切ると、お互いの作動不能時間が終わるのが自車のほうが早くなるので、そこで仕掛ける、といった駆け引きが生まれている。
- このオーバーテイク・システム(OTS)の発動を知る方法としてはSFgoアプリのテレメトリーデータになるのだが、それぞれの車両を選択表示させた上で、その画面を注視することが必要。しかしそこにアプリ上の伝送遅れ時間が、通信環境にもよるが、何十秒間かある。
- チームとドライバーの無線交信の中で、直前・直後の車両のOTS関連情報を知らせる、問い合わせるケースが多くなっている。ドライバーからは「(直接競い合っている)車両・ドライバーがOTSを発動させたかを問い合わせる交信もあるが、SFgoには伝送遅延時間があり、即応が難しい。むしろ「(相手は)残り何秒?」が、競争の組み立ての中では意味が大きい。
- ロールバー前面LEDは、当初、緑色。残り作動時間20秒からは赤色。インターバルタイム中の点滅も引き続き表示される。残り時間がなくなると消灯。作動の状態にある時は、ロールバー上とリアのLED表示は「遅い点滅」。車両電源ONでエンジンが止まっていると、緑赤交互点滅。また予選アタック時にドライバー自身がその意思を外部に表示したい時には、このLEDを点滅させる「Qライト」機能も使用可。
で、オートポリスという舞台では…
- 最も標高が低い位置にあるT(ターン)11~12の立ち上がりから作動させて、登り勾配のコーナー立ち上がり加速を強め、最終コーナーからメインストレート終端近くでブレーキングを開始するところまで使うのが、タイム短縮効果が最も大きいと思われる。短めに使うのであれば、最終コーナー手前T16後半の左120R立ち上がりで作動開始、メインストレート終端手前まで、あるいはその先、下り坂でも加速を続けるので、勾配のボトムで待ち受けるT3手前まで作動を続ける、といった使い方も競り合いの中で速度の伸び効果を期待できそうだ。
- T11-12の立ち上がりからメインストレート終端手前まで連続作動させると、レースラップ(ドライ路面)で1回の使用が50秒ほどになりそう。最終コーナー手前からだと15秒程度か。作動時間上限が200秒間なので、長く使っても4、5回、競り合いの中など「加速をちょっと強めたい」という短時間の作動ならばその倍程度の回数は使うことができ、OTS・LEDを点滅させて走り、競う姿を各所で目撃することができそうだ。
- 一度作動させてしまうとその後100秒間作動不可、ということは、オートポリスはレースでのラップタイムが90秒強なので、一度使った後は1周と少し、例えばストレートエンドまで使った場合は次の周回のセクター1先まで、実質的にはT6を回り込んだ先の登り勾配にかかるまでは使えない、という計算になる。
- 順位争いをしている車両の一方がピットインしたところで、コース上に残った車両がOTSによる出力向上効果を使ってタイムを削り取り、そこでピットに飛び込む、という「オーバーカット」を狙った使い方もしたいところで、その場合は登り勾配になるT6立ち上がりかT8の中から使い始めてもいいし、もちろんT11-12立ち上がりから最終コーナーへのアプローチまで、が「使いどころ」になるだろう。最終コーナー手前で止めておけば、アウトラップのセクター3では作動可能になるので、後続車両が接近してきても、そこからストレートまでのディフェンス使用も可能になる。
- ドライビングとしては、直線全体の加速(余裕駆動力)が強まり、先に待っているコーナーへのアプローチで速度が高まる、ということは、ブレーキングはその分だけ手前から始めないと、そのコーナーにターンインし、旋回することができる速度まで減速できない。OTSを作動させた時にはこの感覚の調整も要求される。オートポリスの場合、まず1コーナー、そして3コーナー、セカンドヘアピン(T10)のそれぞれアプローチがそのポイント。そして上りセクション後半のT15-16の左コーナーへのパワーオンも、タイヤの状況などによって「プッシュ・アンダーステア」、つまり加速に入ってリアから押し出されるように旋回円が膨らむ挙動が現れやすい。
■タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク ドライ、ウェットともに1スペック
今季のタイヤ仕様は、昨年投入されたものをキャリーオーバー。すなわち「再生可能と認定される素材・リサイクル素材」の比率(重量ベース)を、2024年仕様よりも高めたもので、ドライ、レインとその前後、4種の合算において46%に到達している、とのこと。以前にも触れたようにこれは必ずしもタイヤそのものを構成する素材が天然資源などに依るもの、再生材だという意味ではなく、「加工・流通の中で使用したと算定されるバイオマス由来の原料の重量分を織り込む(マスバランス法)などを含む計算の結果。またこのタイヤが使用後にリサイクルされるという意味でもない。
ちなみに製品としての重量でいえば「レイン用後輪」が最も大きいので、それに使う素材、とくにトレッド・コンパウンドに再生可能材を多く使うことが、ここで言う“比率”を高めるのに効果的。そこで注目されるのはゴム素材だけでなくそこに練り込む「シリカ」(主に二酸化ケイ素)。現状では『籾殻』由来のものを採用、とのこと。シリカはもともと岩石や土壌を構成する物質でその意味では普遍的なもの。タイヤに使われる「ゴム」は、カーボンブラック(炭素粉粒)を練り込むことで力を受け、伸びてちぎれる時の強度を高めている。だから「タイヤは黒くて(、丸くて、よくわからないもの…と続く=横浜ゴムで最初のADVAN開発設計、同時にレースタイヤ開発も兼務された技術者であり私のタイヤのお師匠様の一人・山下隆さんの名文句)」なのである。その一方でカーボンブラックは水を弾く性質がある。一方、シリカはその成り立ちからして親水性があり、混練することでウェット路面での摩擦を助ける。ただゴムに練り込む時、転動するゴムの変形の繰り返しの中では静電気を発生するので、この面では扱いが難しい。そこを解決して現在では一般車用タイヤでも混入率が増えている。しかしタイヤを形作る様々な「ゴム」の強度を高める役割には今でもカーボンブラックが主に使われているので、「タイヤは黒い」ものであり続けている。最近ではタイヤをリサイクルする中でこのカーボンブラックを分離・抽出・回収して再利用する試みも主要帯なメーカーを中心に進められている、なんてことも知識の片隅に入れておいていただければと思う。
■タイヤ使用制限:ドライ(スリック)
2026年全日本SF選手権統一規則・第23条2項には、「競技会期間中を通じ、1レース、車両1台あたりに使用できるドライタイヤは最大6セットとする」と規定されている。
- そこで今戦は…各車に新品・4セット、持ち越し(シーズン前テスト〜前2戦からの)・2セット
前回のもてぎラウンドでは、第1戦の土曜日が予選はドライでQ2に進出した12車はドライタイヤ2セット投入。しかし午後は雨で決勝レースはウェットタイヤ。しかもSC先導走行が長く、「戦闘状態」は1+1周だけでレースディスタンスは走行せず。金曜日からこの第1戦に向けて供給されたドライタイヤ4セットのうち、最少でも新品1セットは残る。第2戦の日曜日は予選の路面は一応ドライになり、決勝レースは完全ドライだったので、多くの車両はこの日に向けて供給された新品2セットも含め、ドライタイヤの新品を3セット使ったものと思われる。
シーズン前テストで供給された4セット(2日間・2時間×4セッションのうち1日目は雨)から前2戦の6セットまでの合計10セットをどうやりくりしたか、次第ではあるが、新品か“1アタック品”を持ち越しセットにできているはずで、土曜日午前のフリー走行では新品で走り出して、まずは“持ち込みセッティング”の確認からある程度の周回を重ねて、タイヤ消耗によるグリップレベルの変化=ラップタイムの低下傾向、いわゆる「デグラデーション」の確認。そしてセッション終盤にはもう1セット、コンディションの良いセットを投入して予選アタックのシミュレーションを行う、というパターンが多数派になりそう。それでもこの日午後の予選はQ3までそれぞれ新品を投入。ずっとドライ路面で進行した場合、日曜日の決勝には、スタートで装着する新品は全車が残しているはずで、しかし義務付けられている履き替えの2セット目は、Q3に進出した5車だけは“1アタック品”しか残っていない計算になる。
■決勝中のタイヤ交換義務:あり
- スタート時に装着していた1セット(4本)から、異なる1セットに交換することが義務付けられる。
- 先頭車両が11周目の第1セーフティカーラインに到達した時点から、先頭車両が最終周回に入る前までに実施すること。(オートポリスの第1SCラインは最終コーナーの曲線部が終わり、コース図面としては直線に移行した先に引かれた白線。左側の縁石の中間部でその外ではグラベルベッドの幅が縮小し始めている地点。ちなみに第2SCラインはピットロード出口レーンが本コースと合流、コース幅員が一定になるところに引かれた白線)
- タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
- レースが赤旗で中断している中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは見なされない。ただし、中断合図提示の前に第1SCラインを越えてピットロードに進入し、そこでタイヤ交換作業を行った場合は、交換義務の対象として認められる。
- レースが(41周を完了して)終了する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには競技結果に40秒加算。
- 決勝レースを、ウェットタイヤを装着してスタートした場合、およびスタート後にドライタイヤからウェットタイヤに交換した場合は、このタイヤ交換義務規定は適用されないが、決勝レース中にウェットタイヤが使用できるのは競技長が「WET宣言」を行なった時に限られる。
■タイヤ使用制限:ウェット 1レース、車両1台あたりに使用できるウェットタイヤは最大6セット
昨年は雨と霧(雲)で土曜日のスケジュールが全てキャンセルとなった。今年はウェットタイヤの出番がないといいのだが。
■走行前のタイヤ加熱:禁止
(写真:JRP)
◆レース中のタイヤ交換ピットストップについて
■ピットレーン速度制限:60km/h
■レース中ピットレーン走行+停止発進によるロスタイム: オートポリスのピットレーンに進入して速度制限区間が始まるのはシケイン状の入路の最初の左カーブを曲がったところ、左右の縁石が切り替わるところに引かれた線であり、出口側の速度制限解除はピットビル端のパドックとの通路の幅中央・ピットウォール端で、この区間の長さをGoogle Map上で測ると317mと短め。これを時速60kmで走行し、途中に停止・発進が入った走行時間の机上概算値はおよそ20秒。これにピットロード手前の減速と本コースに戻る加速のロスを加えた走行時間と、レーシングスピードでメインストレートを駆け抜けた場合との差、いわゆる「ピットインによるロスタイム」は24〜25秒ほどと推定される。これにピット作業のための静止時間、現状のタイヤ4輪交換だけであれば7〜8秒を加え、さらにコールド状態で装着、走り出したタイヤが温まって粘着状態になるまで、路面温度にもよるが1周弱で失うタイム、おおよそ1秒ほどを加えた最小で32秒、若干のマージンを見て32〜34秒ほどが、ピットストップに”消費”される時間となる。
■ピットストップ: ピットレーンでの作業が認められる要員は6名まで。ただし1名は「車両誘導要員」として、いわゆる“ロリポップ“を手にしての誘導に専念することが求められる。したがってタイヤ交換に関われるメカニックは5名となる。この人数の中でタイヤ交換以外の作業時間を削り取るべく、まず前側ジャッキアップを自動化。車両ノーズの進入を接触センサーなどで検出して空圧(正確には、圧縮窒素ボンベからのガス圧力で伸縮する)シリンダーを伸ばしてリフトさせる。後側は人手で空圧ジャッキ挿入後、リフトを自動化。どちらも空圧を抜けば車両重量でジャッキが“落ちる”、という手法が2018年後半から急速に普及した。前側に自動上昇ジャッキを使うことで、後のジャッキ(これも空圧作動が普及)の挿入・上昇の作業に1名が付き、残り4名は各輪の場所で待機して車両が滑り込んできたら一気に4輪交換に入る。前輪側の一人が作業終了して移動、反対側の作業完了を確認した瞬間にフロントジャッキを落とし、リアは専任者が同様にジャッキダウンして、発進…というプロセスになる。ここで、誰がどう動くかのフォーメーションは、各チームの知恵と練習の成果が現れるところ。
こうした作業手順でタイヤ4輪交換に必要な静止時間は、車両停止の瞬間から作業終了してジャッキを“落とし”、ドライバーがクラッチを繋ぐ瞬間まで、何も支障が起こらずに進めば最速6秒程度、なのだが、近年の実績ではスムーズに進んだケースで実質7秒、ちょっと何か遅れが生じると8秒かそれ以上を費やしたピットストップ事例も少なからず見受けている。
◼️オートポリスという“舞台” に関する一般情報については昨年のSpotter Guide オートポリス編をご参照ください。他にも重複部分は多いのですが…。
(両角岳彦)