H2-FCEV

燃料電池で自動車を走らせることでの問題点は?【自動車のCN化-その真実_全てBEVになる日は来ないvol.15】

水素でクルマを走らせると…

ついでに語っておくと、燃料が気体だと、「重量あたりのエネルギー量」はそれなりに大きいのですが、「容積あたりのエネルギー量」は当然ながら液体燃料よりもかなり小さくなります。

H2-FCEV
トヨタMIRAI(II)、クラウンFCEVのランニング・コンポーネンツのレイアウト。70MPa(700気圧)という超高圧にした気体状態の水素を蓄えるタンク(黄色の筒)3本(サイズはそれぞれ異なる)で141ℓ・水素質量5.6kgが「満タン」容量。これで、実走行ではかなり丁寧に運転して500km強の航続能力はあるが、その範囲内で水素ステーションを見つけることが不可欠。タンクはCFRPを巻き重ねた主材に内壁には水素の透過を抑制する薄膜層を張り込んだ構造。フロントのボンネット下の箱が燃料電池で、発電した電力は後席背後にある電池にいったん蓄え、電動モーターで駆動して走行し、車両重量も2tあるので、運転感覚としてはBEVと同様。蹴り出しの力感は若干薄い。走行用電池の出力密度によるのかも。
写真:トヨタ自動車

例えば水素。分子量「2」の最も小さな物質。電力を直接生み出すメカニズムとしては燃料電池が実用化されていますが、これじつは「電池」ではなく、水の電気分解とは逆のプロセスで、水素と(空気中の)酸素を反応させて水を作る時に電力を発生させる「発電装置」で、英語では「Fuel cell」と言います。内燃機関の燃料に使うことも、着火しやすく燃焼制御がかなり難しいのですが、可能です。燃焼は、酸素と結びつく反応で熱を発生する現象で、純水素を燃やせば水が生成されるわけです。

ここで問題は、水素は基本的に気体として存在していて、大気圧状態では1m3あたり90gと非常に軽い。つまり1kgでの体積は11m3にもなる。一方、ガソリンと同じエネルギー量(発熱量)を持つ「体積」を計算してみると、ガソリンの約3200倍が必要になります。

H2-FCEV バス
日野自動車の車体・走行機構にトヨタ開発のFCスタック、高圧気体タンクを組み合わせた路線バス「SORA」。ルーフ上に10本のタンクを配置し総容量600ℓ・水素質量約20kg。「満タン」からの実用的な航続距離は200km程度か。車両基地に近接して水素ステーションが完備している環境で周回路線を走る使い方が現実的。災害時の給電ステーション機能もアピールするが、水素供給がない状況では…。コスト面も含めて当分の間は社会実験レベルにとどまる。
写真:トヨタ自動車

そこで気体のままで自動車などに搭載するにあたって、まず350気圧(35MPa)まで圧縮して高圧対応ボンベに充填するところから始め、最近は700気圧(70MPa)まで高めるやり方が、日本では一部で始まっていますが、いうまでもなくそのためには充填スタンドにもそれなりの圧力生成システムが必要になります。押し込む側の圧力と容積の両方が十分に大きくないと、そして冷却を続けないと、受け入れる側の圧力が高まってくると充填速度が落ちて、最後はなかなか入っていかないということも起こるので。現状実用化されている「水素スタンド」で確かめたところでは、充填圧力80+MPa、ガス温度-40〜-35℃で運用していました。

この70MPa貯蔵を実車に搭載しているトヨタの燃料電池-電動車両(FCEV)で遠出したことがありますが、141ℓ(5.6kg)〜ガソリン、軽油タンクの2倍以上の容積なので、搭載スペースを確保するのはかなり大変です。円筒形のタンクそのものものも高圧に耐えるためにC(カーボン)FRPを巻き上げて成形し、内面には水素の透過を抑えるフィルムを貼るなど、手間とコストがかかったもの〜の水素タンクを“満タン”でスタートして、580kmを、ほとんどの行程を高速道路巡航で走って、充填した水素は5.0kg。さすがに目的地付近の水素スタンドを事前に確認しておいて途中で“給ガス”しました。このクルーズの平均燃費としては110km/kgというところで、満タン使い切りの航続能力としては600km。WLTCモードとされる公称値の820kmは、やはり実用的には難しいことを確認しました。

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東京から静岡県某所まで片道240km、現地で簡単な試験計測も行う旅程を”給ガス”なしで走り切れるか…。ちょうど難しい距離で、東名高速と静岡県内だとまだ水素充填ステーションの数は少なく、あらかじめ調べ、営業日・時間も確かめた上で、浜松まで足を伸ばして水素を補給。BEV普及初期の感覚に近い。気体充填だと送出側と受け入れ側(タンク)の圧力差が大きい時には順調に流れ込むが、圧力差が小さくなると充填ペースが落ちる。そこで高圧かつ大容量の送出設備が必要になる。社会インフラとしての水素充填ステーション網は、水素を作り、運ぶだけでなく、こうした面でも様々な難関を乗り越えないと普及が難しいのを実感した。
写真:筆者

ちなみに走らせた感触は、ふつうに「モーターで走るクルマ」であり、そこではアクセルペダルの動きに対する駆動力の作り方など、今の日本車に共通する弱点をいろいろ発見しましたが。FCEVに関しては、走れば走るほど、水素を消費して水が生成されるので、酸素が加わる分だけ重量が増えていきます。今、使われている燃料電池は「固体高分子型」で、その電極部分は作動時に90℃ちかくまで温度が上がり、生成した水は水蒸気の状態から冷却されていったん蓄えられ、タイミングをみて車外に排出されます。これを「パージ」といいます。この「電極部分に水が生成する」ことで、氷点下で作動を止めて長時間駐車していると、作動の中核部分に氷が生ずるのが固体高分子型燃料電池を自動車に使う時の難しさにひとつでしたが、そこは始動時にはFCスタックを予熱するなどの開発・改良によって改善され、最近では外気温-30℃〜でも使用可能とされています。<続く>

(両角岳彦)

 

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