スーパーフォーミュラ 2026年第4・5戦 鈴鹿サーキット spotter guide
レースフォーマット
■レース距離
第4戦<5/23(土)> 180.017km (鈴鹿サーキット 5.807km×31周・14時45分スタート予定)
第5戦<5/24(日)> 180.017km (鈴鹿サーキット 5.807km×31周・14時45分スタート予定)
(ともに、最大レース時間:1時間15分 中断時間を含む最大総レース時間:2時間)
■タイムスケジュール
土曜日、日曜日の各日、午前中に公式予選、午後に決勝レースを行う週末2レース開催となる。「2026年全日本スーパーフォーミュラ選手権統一規則」第6条4項における「1大会2レース制」に該当。この場合、2戦それぞれのレース距離は最短110km、最長300kmとされる。
ちなみに
- 先頭車両が2周回を完了する前にレースが中止された場合、レースは成立せず、選手権得点は与えられない。
- 先頭車両が2周回を完了し、走行距離がレース距離の75%(小数点以下切り捨て)未満でレースが終了または中止された場合、レースは成立、選手権得点は1/2となる。
- 先頭車両がレース距離の75%を完了した後に終了または中止となった場合、レースは成立、選手権得点は全てが与えられる。
今回の2戦でこの「75%」に該当するのは、24周。
金曜日(5/22)午前(10時50分〜)に60分間+スタート練習5分間、午後(15時40分〜)に50分間+予選シミュレーション想定2組各10分間の専有走行枠が設けられている。
■予選方式
ノックアウト予選方式
2グループ(A組・B組)に分かれて走行する公式予選Q1、そのそれぞれ上位6台・計12台が進出して競われる公式予選Q2の2セッションで実施される。
5/23(土)は9時15分から、5/24(日)は10時25分から、実施予定
- 公式予選Q1はA組10分間、5分間のインターバルを挟んでB組10分間。そこから10分間のインターバルを挟んでQ2は7分間の走行。
- 公式予選Q1のグループ分けは、各戦とも前戦終了時点のドライバーズ・ランキングの上位から振り分ける形にて。ただし参加車両が複数台のエントラントについては、少なくとも1台を別の組分けとする。
- 第1戦Q1の組分けは…
- Q2進出を逸した車両は、Q1最速タイムを記録した組の7位が予選13位、もう一方の組の7位が予選14位、以降交互に予選順位が決定される。
- Q2の結果順に予選1~12位が決定する。
- 各セッション終了直前にアクシデント等で赤旗提示、走行が中断された場合は、コースインして1周し、次の周回でタイムアタックが可能な残り時間を設定して再開する。(スーパーフォーミュラの慣例として/鈴鹿の場合は3分)
◼️今戦のトピック
今季、既に2大会・3戦を行なってきたが、決勝レースが本来の形で実施できたのはもてぎでの第2戦だけ。オートポリスの第3戦はレース自体が成立手前で赤旗中断、中止となり、代替レースの準備を進めているとのことだが、昨年のように最終2連戦の直前に短い距離の決勝を組み込んだ場合は、車両に損傷を与えることを避けたい意識も働いて、順位変動の少ないレースになることは予想に難くない。天候に恵まれないシーズン序盤となっている中、今週末の鈴鹿も「走り梅雨」で土日とも雨の確率が高い予想。ただ日中は曇りの確率が高く、予選・決勝はできそうだが、路面状態、気温・路面温度の変化も大きくなりそう。ちゃんとしたレースが見たい、したい、という思いは見る側も走り走らせる側にも溜まっている、はず。その思いについて、また悪天候対応の競技運営段取りなどについては、来週発売のAUTOSPORT誌にコラムを執筆、掲載されるので、興味のある方はご参照ください。
さて、その「鈴鹿」。これまではシーズン・オープナーとして開催されてきたが、今年はF1日本開催が早まったことから、この時期に組み込まれている。あの“寒い”時期ではないことは、走る側にとってもタイヤのコンディションが整えやすい、とは言える。その一方で、2025-26年の短いシーズンオフの間に、NIPPOコーナー(旧・ダンロップ)立ち上がり/東コース・ショートカット先から最終・Astemoシケインに至るまで、西コース全体+αの舗装が張り替えられている。前年の東コース舗装張り替えに続いて、これでコース全体の舗装がリニューアルされた。
図版:鈴鹿サーキット提供
この西コースの新舗装に関して、SFとしては一応、2月末の公式合同テストで走行する機会があったわけだが、まず2日間のうちドライ路面は1日だけ。そして舗装完成直後で舗装表面がまだ安定していなかった(油分が滲み出しやすい)時期、ドライになった2日目は気温15℃・路面温度19℃との記録が残っているが、一日を通してみればまだまだ寒さの残る時期。このコンディション下では、路面平滑度の向上を含めた概況の確認はできたにしても、今回のレース本番でどんな路面特性になるのか、しばしば「タイヤに対する攻撃性が、日本国内でも最も高い」と言われる鈴鹿が、この新舗装でどんな変化を見せるのか、については、少なくとも土曜日・第4戦の予選・決勝を走ってみないと(それもドライ路面で)、どのチームも「見えてこない」のが本音ではないかと思われる。
その意味では金曜日に2セッション組まれているフリー走行の重要度がいつも以上になりそうだが、木曜日は雨で、いったんリセットされた路面の状態からの走り出しになる。朝いちからSFL、FRJの走行時間枠が組まれていたこともあり、10時50分からのSFのフリー走行はドライ路面。走行する中で青空ものぞいてきたが、この段階では路面の「グリップ感」はあまり良くないようで、セッション最終盤にクィックラップをトライした面々も1分38秒台にとどまった。もちろんこのセッションではユーズドタイヤで走り込んでいたはずで、新品かそれに近い状態のタイヤセットを履くのは、午後。そこまで、そして明日明後日と、各車が走行を重ねるにつれて、いわゆる「ゴムが乗る」につれて、路面=タイヤの粘着状況が刻々変化していくことは容易に想像できる。まずはその中で土曜朝の第4戦・予選に向けた最適セットアップを見つけられるのはどこか、誰か、が観察者としてはまずは最初のテーマになりそうだ。
タイヤについて
■タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク
ドライ1スペック, ウェット1スペック
■タイヤ使用制限:ドライ(スリック)
2026年全日本SF選手権統一規則・第23条2項には、「競技会期間中を通じ、1レース、車両1台あたりに使用できるドライタイヤは最大6セットとする」と規定されている。ここで、1大会・2レース制の場合は、その内容がちょっとややこしくなる。土曜日の第4戦に関しては、新品を3セット供給、それ以外に前戦までに供給されたものの中から“持ち越し”3セットを使用することができる。その6セットの中から、翌日の第5戦に向けて4セットを“持ち越し”とし、新品は2セットが供給される。
開幕もてぎ2連戦のうち緒戦・決勝が雨でSC先導走行に終始したので、第3戦オートポリスには新品もしくは予選1アタックだけのユーズドタイヤを“持ち越し”セットとして準備できていたはず。そしてオートポリス決勝レールも雨で決勝はSC先導1周のみだったので、Q3まで進出した車両でも予選1アタック品で、それ以外の車両では新品を含めて、“持ち越し”3セットを準備することが可能なはず。今季のタイヤ運用としては、第3戦(AP)でのドライタイヤ6セットのうち3セットは、使用・未使用に関係なく第4戦に“持ち越し”できることになっているので。それらを金曜日のフリー走行に投入。最初の持ち込みセットアップの確認から新路面に対応するセッティング調整、さらにロングランでのデグラデーション確認を進める。午後の走行枠後半、2組に分かれる時間帯では、予選シミュレーションとしてできるだけコンディションの良いものを履いて走る。そして土曜日は、路面がドライなら予選に新品投入。Q2まで進出しても、決勝には新品1セットが残る。日曜日に向けた持ち越しセットとしては、予選で使った1アタック品が1セットは残るはずで、新たに入手した新品2セットをまずは予選に投入。この3セットの中から状態の良いものを2セット選んで決勝を走る、という使い方になりそう。
■決勝中のタイヤ交換義務:あり
- スタート時に装着していた1セット(4本)から、異なる1セットに交換することが義務付けられる。
- 先頭車両が8周目の第1セーフティカーラインに到達した時点から、先頭車両が最終周回に入る前までに実施すること。
(鈴鹿サーキットの第1SCラインは最終コーナーを立ち上がり、ピットロードが右に別れる分岐点に引かれた白線。ちなみに第2SCラインはピットロードが本コースに合流後、1コーナーに向かうコース幅に収束した位置に引かれた白線。)
- タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
- レースが赤旗で中断している中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは見なされない。ただし、中断合図提示の前に第1SCラインを越えてピットロードに進入し、そこでタイヤ交換作業を行った場合は交換義務の対象として認められる。
- レースが(31周を完了して)終了する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには競技結果に40秒加算。
- 決勝レースの中でウェットタイヤを装着してコースインした場合、このタイヤ交換義務規定は適用されないが、ウェットタイヤが使用できるのは競技長が「WET宣言」を行なった時に限られる。
■タイヤ使用制限:ウェット 1大会2レース制の場合、車両1台あたりに使用できるウェットタイヤは最大8セット
■走行前のタイヤ加熱:禁止
燃料, 燃料流量, オーバーテイク・システム
■決勝レース中の燃料補給:禁止
■燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(117.4L/h)
- 今戦の公式通知「ガソリン性状」に記された比重の値は「7666」。前戦の本稿で解説したように、今季開幕から使われているソルガム起源のエタノールを体積比10%混合したENEOS製「E10」燃料は、ベースの原油起源ガソリンのほうを重質成分側にして炭素含有量を増やしているので、比重はかなり大きく、揮発性なども通常のハイオクタン・ガソリンの“ブレンド”でいえば「高気温時期=夏用」に近いものになっている。今大会に向けて持ち込まれるものは、前のオートポリスの時と比べても若干重め、それもあってか蒸留した時により高温にならないと揮発しない成分が少し増えている。ちなみにSFL/FRJが使う通常のハイオクタン・ガソリンは比重0.7528。蒸留した時の揮発もより早く現れるデータが公示されている。
その一方で、エタノール混合によって植物によるCO2吸収効果が多少なりともあると算定されるような性状を持つ“軽い”E10燃料の試作も進められていて、先日ツインリンクもてぎで行われた今年1回目のSF開発テストでは、その燃料が使われたと聞いている。含有炭素量は多少減っているはずだが、ピーク出力にはほとんど影響がないようであり、当然ながら気化性=ドライバビリティはここまでの実戦用よりも、とくに低気温時に良くなるものと思われる。
- 燃料リストリクター、すなわちあるエンジン回転速度から上になると燃料の流量上限が一定に保持される仕組みを使うと、その効果が発生する回転数から上では「出力一定」となる。出力は「トルク(回転力、すなわち燃焼圧力でクランクを回す力)×回転速度」なので、燃料リストリクター領域では回転上昇=時間あたり燃焼回数の増加に対して1回の燃焼に使える燃料の量が減るので、回転速度に反比例してトルクは低下する。つまり一瞬一瞬にクルマを前に押す力は減少しつつ、それを積み重ねた「仕事量」、つまり一定の距離をフル加速するのにかかる時間、到達速度(最高速)が各車同じレベルにコントロールされる、ということになる。
- NRE(Nippon Racing Engine)導入直後の2014年は最大流量100kg/h(8000rpm以上)、2015年からは95kg/h(7600rpm以上)へ。この間もSUGOのみ90kg/h。2016年以降は鈴鹿と富士を除いて90kg/7200rpmまで絞られた。鈴鹿と富士は95kg/hを2020年まで継続。2021年からは全てのコースで90kg(7200rpm以上)の設定に統一されている。
- 現在の鈴鹿におけるSFのコースレコードは、2020年第5・6戦の予選(12月5日 晴れ・気温11℃・路面温度24℃)でキャシディがマークした1分34秒442。すなわち燃料リストリクター「95kg/h」でのもの。
2021年に燃料流量上限が「90kg/h」に絞られ、この条件での最速ラップタイムは、2024年開幕戦(3月9日 薄曇り・気温5℃という寒い中で行われた)の予選Q2で、阪口晴南が記録した1分35秒789。昨年の開幕2連戦と最終2連戦(同時に行われた富士での第7戦代替レースは既に確定しているその時の予選結果を適用)では、予選アタック最速でも1分36秒フラットに止まった。今回は、西コースが平滑な新路面になっているので、気象条件さえ整えば、予選は1分35秒台の争いになるか? 2月下旬の公式テスト、ドライ路面になった2日目の最終盤に、恒例とも言える予選アタック・シミュレーションの中で記録されたベストタイムは、福住の1分36秒290。
■オーバーテイク・システム:最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)。
作動合計時間上限:200秒間
ステアリングホイール上のボタンを押して作動開始、もう一度押して作動停止。
一度作動→オフにした瞬間からの作動不能時間(インターバルタイム)は、鈴鹿は100秒。
- OTS作動時は、エンジン回転7200rpmあたりで頭打ちになっていた「出力」、ドライバーの体感としてはトルク上昇による加速感が、まず8000rpmまで伸び、そこからエンジンの「力」が11%上乗せされたまま加速が続く。ドライバーが体感するこの「力」はすなわちエンジン・トルク(回転力)であって、上(燃料リストリクター作動=流量が一定にコントロールされる領域)は、トルクが10%強増え、そのまま回転上限までの「出力一定」状態が燃料増量分=11%だけ維持される。概算で出力が60ps近く増える状態になる。すなわちその回転域から落ちない速度・ギアポジションでは、コーナーでの脱出加速から最終到達速度までこの出力増分が加速のための「駆動力」に上乗せされる。
- ドライビングとしては、直線全体の加速(余裕駆動力)が強まり、先に待っているコーナーへのアプローチで速度が高まる、ということは、ブレーキングはその分だけ手前から始めないと、そのコーナーにターンインし、旋回することができる速度まで減速できない。OTSを作動させた時にはこの感覚の調整も要求される。
- 後方を追走している側は、前走車がOTSを発動させれば加速が段付き状に強まるので、それがわかり、どう対応するかを判断することは可能なはず。先行する側は、「ここで使ってきそうだ」と思ったら“ディフェンス”OTSを発動させる手もあり、実際にそうしたケースが増えているが、後続車両のドライバーは早めにOTSを切ると、お互いの作動不能時間が終わるのが自車のほうが早くなるので、そこで仕掛ける、といった駆け引きが生まれている。
- このオーバーテイク・システム(OTS)の発動を知る方法としてはSFgoアプリのテレメトリーデータになるのだが、それぞれの車両を選択表示させた上で、その画面を注視することが必要。しかしそこにアプリ上の伝送遅れ時間が、通信環境にもよるが、何十秒間かある。
- チームとドライバーの無線交信の中で、直前・直後の車両のOTS関連情報を知らせる、問い合わせるケースが多くなっている。ドライバーからは「(直接競い合っている)車両・ドライバーがOTSを発動させたかを問い合わせる交信もあるが、SFgoには伝送遅延時間があり、即応が難しい。むしろ「(相手は)残り何秒?」が、競争の組み立ての中では意味が大きい。
- ロールバー前面LEDは、当初、緑色。残り作動時間20秒からは赤色。インターバルタイム中の点滅も引き続き表示される。残り時間がなくなると消灯。作動の状態にある時は、ロールバー上とリアのLED表示は「遅い点滅」。車両電源ONでエンジンが止まっていると、緑赤交互点滅。また予選アタック時にドライバー自身がその意思を外部に表示したい時には、このLEDを点滅させる「Qライト」機能も使用可。
で、鈴鹿という舞台では…
- 一度作動させてしまうとその後100秒間は作動不可、ということは、鈴鹿のレースペース(ラップタイム)がドライ路面で101〜103秒なので、一度使った後は、作動オフしたところからちょうど1周かちょっとだけ先、までは使えない、という計算になる。
- コース・レイアウトから見て最も効果的なのは、スプーンカーブ立ち上がりから作動させてバックストレッチの加速〜最終到達速度を高める、という使い方。競り合いの中で、先行車両に追いつく速度差が出た場合などは、もはやアクセルを戻さないことも多い130Rもそのまま、シケインにアプローチするブレーキングに入る瞬間まで作動を続けることもありうる。
- もちろん、最終コーナーの加速からメインストレートで使うことも、速度上昇を早めるのには有効。ただそれだけでオーバーテイクが可能か、というと…。シケインでの攻防から先行車の立ち上がり加速が鈍った、といった状況でないと1-2コーナーで追い越しを仕掛けるところまで行くのは難しい。そのまま使い続けてS字〜ダンロップコーナーを上り切るまで行き、デグナー入口までに一気に差を詰める、という使い方も見受けている。
- スプーン立ち上がりから作動、バックストレートからさらにシケインを抜けてメインストレートまで使い続ける、という「長い」使い方も可能。
- 2コーナー立ち上がりからS字、逆バンク、さらにダンロップコーナーを抜けてデグナーまでの区間も、登り勾配だけにアクセルを戻す瞬間が入りつつも、OTSを作動させることで各所の加速を強め、区間タイムを切り詰める効果はかなり出る。
- ドライビングとしては、直線の先に待っているコーナーへのアプローチで速度が高まる、ということは、ブレーキングはその分だけ手前から始めないと、という感覚の調整は、鈴鹿ではとくに1コーナーへのアプローチ、デグナーからヘアピン、あるいはスプーン、両方のアプローチでのブレーキング、そして最後のシケインの飛び込みで要求されるところ。
レース中のタイヤ交換ピットストップについて
■ピットレーン速度制限:60km/h
■レース中ピットレーン走行+停止発進によるロスタイム: 鈴鹿の場合、最終コーナーを立ち上がった先でピットロードが分岐するが、速度制限区間が始まるのは計時ラインの30mほど手前であり、そこまではエントリーロードをほぼレーシングスピードで走ってくることもあり、ピットレーン走行による(ストレートをレーシングスピードで走行するのに対する)ロスタイムは約27〜28秒と推測される。ちなみにピットロードの速度制限区間の長さをGoogle Map上で測ると405m。これを時速60kmで走行し、途中に停止・発進が入った走行時間の机上概算値は26.2秒。
これにピット作業のための静止時間、現状のタイヤ4輪交換だけであれば7〜8秒を加え、さらにコールド状態で装着、走り出したタイヤが暖まって粘着状態になるまで、路面温度にもよるが半周、スプーンカーブにかかるあたりまでペースが上がらないことで失うタイム、おおよそ1秒ほどを加えた最小で35秒、若干のマージンを見て40秒ほどが、ピットストップに”消費”される時間となる。言い換えれば、ピットタイミングが異なる車両同士では、この「ミニマム35〜36秒」が、順位変動が起こるかどうかの目安になる。
■ピットストップ: ピットレーンでの作業が認められる要員は6名まで。ただし1名は「車両誘導要員」として、いわゆる“ロリポップ“を手にしての誘導に専念することが求められる。したがってタイヤ交換に関われるメカニックは5名となる。この人数の中でタイヤ交換以外の作業時間を削り取るべく、前側のジャッキアップを自動化。車両ノーズの進入を接触センサーなどで検出し、圧縮窒素ボンベからのガス圧力で伸縮するシリンダーを伸ばしてリフトさせる。後側は人手で空圧ジャッキ挿入後、リフトを自動化。どちらも空圧を抜けば車両重量でジャッキが“落ちる”。各チームのメカニック・グループの設計製作なので、車両検知・リフトのメカニズムがそれぞれに異なる。前側に自動上昇ジャッキ、後のジャッキ(これも空圧作動が普及)の挿入・上昇の作業に1名が付き、残り4名は各輪の場所で待機して車両が滑り込んできたら一気に4輪交換に入る。前輪側の一人が作業終了して移動、反対側の作業完了を確認した瞬間にフロントジャッキを落とし、リアは専任者が同様にジャッキダウンして、発進…という流れが一般的。このあたりは、各チームの知恵と練習の成果が現れるところ。
【参考①】鈴鹿サーキットのセクター平均速度
(1)SF23(燃料流量90kg/h)での現状最速タイム=2024年第1戦予選最速タイム(阪口晴南:1分35秒792)にて計算
| セクタータイム[秒] | 区間距離[m] | 平均速度 [km/h] | 1周タイム比率[%] | |
| セクター1 | 25.635 | 1658 | 232.84 | 26.8 |
| セクター2 | 15.413 | 936 | 218.62 | 16.1 |
| セクター3 | 36.127 | 2130 | 212.25 | 37.7 |
| セクター4 | 18.614 | 1084 | 209.65 | 19.4 |
| 周回 | 95.789 | 5807 | 218.24 | (100) |
| 直線到達速度 | 283.355km/h |
【参考②】鈴鹿サーキット周回における「風」の影響
鈴鹿サーキットでは、鈴鹿山脈側から吹き下ろしてくる北西の“山風”は、メインストレート、西ストレートでは追い風に、S字〜デグナーなど主要コーナー区間では向かい風になり、伊勢湾側から山に向かって吹く“海風”はこの逆で、日によって、あるいは一日の中でも、この風が変化することがしばしばある。そしてSFやF1、スーパーGTなど空力ダウンフォースでタイヤ荷重→摩擦力を高め、より大きな慣性力を支えて旋回速度を引き上げる類のレーシングカーでは、前者の「鈴鹿おろし」のほうが、まずS字やデグナーでのダウンフォースが増え、2本の直線では追い風で到達速度が上がることで、ラップタイムが良くなることが知られている。ここに着目して、今日の空力ダウンフォース依存度が高い車両の代表とも言えるSF23では、風向きによってコーナリング・スピードがどれほど変化するのかを、ちょうど昨年3月のSF開幕戦で、大会1日目と3日目が“山風”、2日目が“海風”だったことに着目して、予選アタックラップの、風の影響が最もダイレクトに現れるとみられる通称「逆バンク」の旋回速度をSFgoのオンボード映像+テレメトリーデータから読み出し、推定風速を加えた「対気速度」からダウンフォースの変動と、そこで得られたタイヤ摩擦力=旋回遠心加速度(求心加速度G)を推算。合わせてセクター1の区間タイム、ラップタイム、直線終端到達速度を比較する、という記事をまとめ、AUTOSPORT誌2025年6月号p.82〜85「SUPER FORMULA TIMES」に掲載しました。巷間言われてきたように、「鈴鹿おろし」が4+m/sほど吹いている状況では、海からの風が1+m/s程度の状況と比較して(風速差6m/s弱)で逆バンクのボトムスピードが10km/h近く速くなり、横Gも0.3Gほど高く、こうした各コーナーでの積み重ねの結果としてセクター1の区間タイムが0.5秒ほど縮まり、ラップタイムもちょうどその分だけ良くなる、という結果でした。
その読み出し・計算内容を一覧表にしたものを以下に貼り付けておきます。より詳しくは、あるいは読み解きの内容・意味については、上記AS誌記事をご参照いただければと。