SF2026シーズン終盤へ。今季王座への道が絞り込まれる富士2連戦

スーパーフォーミュラ 2026年第9・10戦 富士スピードウェイ Spotter Guide

 レースフォーマット

◼️大会概要:土・日それぞれ、午前中に予選、午後に決勝レースを行う「1dayフォーマット×週末2連戦」

■レース距離

第9戦<10/10(土)> 180.017km  (富士スピードウェイ 4.563km×41周・15時00分スタート予定)

第10戦<10/11(日)> 180.017km  (富士スピードウェイ 4.563km×41周・15時00分スタート予定)

(ともに、最大レース時間:1時間15分 中断時間を含む最大総レース時間:2時間)

  • 先頭車両が2周回を完了する前にレースが中止された場合、レースは成立せず、選手権得点は与えられない。
  • 先頭車両が2周回を完了し、走行距離がレース距離の75%(小数点以下切り捨て)未満でレースが終了または中止された場合、レースは成立、選手権得点は1/2となる。
  • 先頭車両がレース距離の75%を完了した後に終了または中止となった場合、レースは成立、選手権得点は全てが与えられる。

第9・10戦でこの「75%」に該当するのは、31周。

写真:JRP

■予選方式:ノックアウト予選(Q1-2の2ステージ)方式

2グループ(A組・B組)に分かれて走行する公式予選Q1、そのそれぞれ上位6台・計12台が進出して競われる公式予選Q2の2セッションで実施される。

10/10(土)は9時40分から、10/11(日)は10時00分から、実施予定

  • 公式予選Q1はA組10分間、5分間のインターバルを挟んでB組10分間。そこから10分間のインターバルを挟んでQ2は7分間の走行。
  • 公式予選Q1のグループ分けは、各戦とも前戦終了時点のドライバーズ・ランキングの上位から振り分ける形にて。ただし参加車両が複数台のエントラントについては、少なくとも1台を別の組分けとする。
  • 第9戦Q1の組分けは…

  • Q2進出を逸した車両は、Q1最速タイムを記録した組の7位が予選13位、もう一方の組の7位が予選14位、以降交互に予選順位が決定される。
  • Q2の結果順に予選1~12位が決定する。
  • 各セッション終了直前にアクシデント等で赤旗提示、走行が中断された場合は、コースインして1周し、次の周回でタイムアタックが可能な残り時間を設定して再開する。(スーパーフォーミュラの慣例として/富士スピードウェイの場合は3分)

◼️今戦の(個人的独断)トピック

今戦も大会期間に入った金曜日にようやくこの稿をまとめる(主にコピペ、ですが-汗-)ということドタバタ状況。このところ雨が多かった関東・東海地方ですが、この週末は好天に恵まれる予想が出ていて、爽やかな秋空の下、路面コンディションと路表面温度、大気状況も良好、安定した中で2連戦ができそうです。すでに金曜日の走り始めFP(Free Practice)1から、ここ富士スピードウェイでの前回開催、7月の第6・7戦(と第3戦代替)の時(微妙に雨が残っていた金曜日)よりも、さらに昨年同時期の第9・10戦のFP1と比較しても、良いタイムが出てきています。

ここでまず、前戦SUGOで再発した(詳しくは述べませんが、近年のSFレースの中で何度か発生している)SC(Safety Car)導入時のてんやわんやについて私見を少し。

前回の富士ラウンドでも第3戦代替・第7戦でSCが導入された。富士スピードウェイでは長いストレートの終端・1コーナーでSCが競技車列の前に入るので、混乱は少ない。(写真:JRP)

そもそもSCがコースに入るのは、コース上に発生した危険な状況を処理するために「レースを中立化」するためで、「SC」ボードがコース脇の各ポストで、またフラッグディスプレイに点滅表示された時点で、コース全域がイエローフラッグ相当、「安全を確保できる速度で走行する」区間となる。ここで、なんらかの利益を生むためにレーシングスピードで走り続けるのは、モータースポーツの安全確保のために走行から周辺の対応、SC運用などまでを定義したFIA国際モータースポーツ競技規則「付則H項」に、少なくともその精神において背いていることになる。もちろん、そうは言っても競技者は自らの利益のためにやれるだけのことはやる、わけで…。そこでこの基本規則を皆に徹底させるべく、ある瞬間から全車が一定速度まで落として走ることを義務付ける「FCY(Full Corse Yellow)」が生まれ、F1では各車がコースのどこをどんな速度で走っているかを詳密に把握し、コーナーひとつひとつやその中間まで区切ったミニセクターで、区間だけのイエローフラッグ提示に対して速度を落としたか、アクセルペダルを戻したかを確認、予選では自身の最速タイムを更新した場合はその周回の結果は抹消、というところまでコントロールするに至っています。しかしこうした対応のためには、何よりまず車両走行位置と状態をリアルタイムで把握することが必要で、そのために精密系GPS(一般利用のGPSは数mの誤差がある)の車両への搭載に始まり、コース管理側にもそれなりの設備が必要になる。現状のスーパーフォーミュラにはそれに対応するだけのシステムがなく、従前のままH項遵守はドライバーに一任する状況にありました。

前戦SUGOではレース終盤で発生した自己処理のためにSC導入。それを予測してピットイン、タイヤ交換を行ったグループがコースに戻ったところにSCが入り、その前方にいた2車がレーススピードのまま1周した後にタイヤ交換、順位が入れ替わる結果になった。(写真:JRP)

先日のJRP開発テストでは、FCY導入のトライアルが行われたとのことですが、おそらくSFgoのテレメトリーシステム、走行車両からの遠隔データ送信の機器を利用したものと思われます。とはいえ現状のSFgoの機材は精度も、通信容量とその安定度もかなり限定されているので、なかなかに難しいところもありそうですが。また実戦に導入するとなると、まず全日本選手権としての競技規則からそれに応じたものに変更を加える必要があります。そして国内ではスーパーGTが既に採用しているとは言っても、SFの競技運営のシステムと判定の仕方、それを各サーキットに持ち込んで展開し、現地の競技団とすり合わせるなど、いろいろな準備も必要。もちろんその判定方法や罰則なども決めて、ドライバーとチームに毎戦のブリーフィングで徹底して、ようやく実戦導入が可能、ということになる。だからSFにFCYを、あるいはVSC(Virtual Safety Car)を導入するのは、来季から、が順当なところ。ちなみにスーパーGTは独自の競技規則の中でSC運用についても細かく規定していますが、SFはFIA国際規定に沿った選手権として、SC運用も「H項」に準拠している。このあたりも「ルールに沿って競うスポーツ」でありつつ、それぞれの枠組み、流れの違いが現れるところです。でも、戦いの中での「H項」遵守の再確認とそのガイドラインを示すことも含めて、これらはぜひ進めてほしいと思います。

9月30日・10月1日に鈴鹿で行われた開発テストでFCYの機能試験も実施。ステアリングホイールに組み込まれたディスプレイに通信で表示された「FCY」。
鈴鹿での開発テストで試された「SC運用」通信の車両側表示。これはSC先導走行がこの周回で終わる、というメッセージ

 

さて、今戦。

6月30日-7月1日にここ富士で全チーム参加の公式テストがあり、そこでは最近のSFならではの車両セットアップのディテールに踏み込んで、それぞれにいくつものトライをしたのではないかと思われます。SFを走らせる中では、今や0.1秒どころか0.01秒を1周で、そのためにはひとつひとつのブレーキング〜旋回〜加速で、その1/100秒を詰めたい、失いたくない。それはドライビングでがんばれば何とかなる、わけでは当然なく、マシンの分解・組み立ての“精度”に始まって〜2台を走らせているチームでも、ほんのわずかの差異、それも例えば路面との薄い隙間を流れる空気の圧力変化によってダウンフォースの多くを生み出すマシン底面のパネル、かなり大きな面積のCFRP成形品を骨格であるモノコックにボルトで止め、一部をワイアで吊る。この組み付け後の位置精度が1mm、あるいはそれ以下でも違っているだけで、2台の特性が変わってきてしまう。組み立てを様々に工夫して基本的な部位の3次元測定もしているのに、走らせると2台に微妙な違いがあるのは、そうしたところに原因があるとしか思えない、と語ってくれた技術者もいます。そんな中で、どこをどうすれば、何をどう組めば、ドライバーの運転のリズムとクルマの反応が合い、タイヤのパフォーマンスを使い切ることができるか。その模索を試すのが今のテスト、担っているはず。

でもそのテストの成果は、そこからさらに分析して知恵を絞った内容は、次の第6・7戦に投入したはずなのだけれど、でも雨が残り路面コンディションが最良に整わない状況、その中で第3戦代替レースも組み込まれた慌ただしいスケジュールの中で、十分に確かめることができなかった。そんな不完全燃焼感を抱いて次のSUGOに向かったエンジニアは、そしてドライバーも、多かったのではないかと思います。SUGOからもほぼ9週間の時間があり、9月は国際イベントが多く、国内トップカテゴリーは3週前のスーパーGT・SUGO戦だけ、というちょっとだけ余裕があった中、エンジニアたちがどれだけ知恵を絞ってきたか、加えて天候条件が“良くなる”のをどう織り込むか。そしてそれをドライバーがどう感知してどう操るか。そこでどんなコミュニケーションが交わされて、いかに速さと、強さに結びついて行くのか。これが今週末の見どころと言えるでしょう。

スーパーGT・GT500では、レース間隔が空いた中で車体側の動きを最適化するセットアップを、実車を載せて加振・入力付与するビークル・シミュレーターを“走らせて”煮詰めてきたことがパフォーマンスアップにつながった(と思われる)事象が、つい最近ありました。でもSFの場合は、チームとしてビークル・シミュレーターを所有しているところはない〜巨大な予算を使い切るF1とは違って〜ので、このあたりの「重箱の隅」まで掘り込んで行くプロセスは、もっぱら脳内作業になる。その成果が、今週の走りと勝負にどう現れるか、見て、読み解いてみたいものです。

タイヤと燃料

■タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク

ドライ1スペック, ウェット1スペック

■タイヤ使用制限:ドライ(スリック)

2026年全日本SF選手権統一規則・第23条4項には、「競技会期間中を通じ、1レース、車両1台あたりに使用できるドライタイヤは最大6セットとする」と規定されている。今大会は、まず前戦までに入手した中から新品で残してあったものやコンディションの良いものから選ぶ“持ち込み”が3セット、第9戦に向けて金曜日から投入できる新品が3セット。これで土曜日までを戦うと、そこでさらに新品2セットが供給される。

つまり、金曜日のFP1,2では、最低でも新品1セット、持ち越しに新品があればもう1セットを履いて、予選シミュレーションが可能。そして土曜日、日曜日とも、予選は当然、新品を投入して、Q2まで走った車両は、決勝は1アタック品を2セット、Q2進出を逸した車両は新品1セットを残して臨むことになる。

■決勝中のタイヤ交換義務:第9・10戦ともに、あり

  • スタート時に装着していた1セット(4本)から、異なる1セットに交換することが義務付けられる。
  • 先頭車両が11周目の第1セーフティカー(SC)ラインに到達した時点から、先頭車両が最終周回に入る前までに実施すること。

(富士スピードウェイの第1SCラインはピットロード分岐・本コースとの間に入るゼブラゾーンの起点、減速用S字カーブ手前で、本コースまで横切る白線で示されている。ちなみに第2SCラインはピットロード出口先・ピットアウト指示ラインがT(ターン)1・TGRコーナー手前まで伸びた先に直交する形で示された白線)

  • なお、セーフティカーが先頭車両10周回終了時点で導入されていた場合、そのSCが呼び戻され競技が再開された後(ということは第1SCラインは既に通過している)、先頭車両が最初に第1SCラインに到達するまでにタイヤ交換を実施しても、タイヤ交換義務消化とは認められない。
  • レースが赤旗で中断している中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは見なされない。ただし、中断合図提示の前に第1SCラインを越えてピットロードに進入し、そこでタイヤ交換作業を行った場合は交換義務の対象として認められる。
  • タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
  • レースが(31周を完了して)終了する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには競技結果に40秒加算。
  • 決勝レースの中でウェットタイヤを装着してコースインした場合、このタイヤ交換義務規定は適用されないが、ウェットタイヤが使用できるのは競技長が「WET宣言」を行なった時に限られる。

■タイヤ使用制限:ウェット 1大会2レース制の場合、車両1台あたりに使用できるウェットタイヤは最大8セット

■走行前のタイヤ加熱:禁止

写真:JRP

■決勝レース中の燃料補給:禁止

■燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(117.4L/h)

  • 今戦の公式通知「ガソリン性状」に記された比重の値は「7668」。エタノールを体積比10%混合したENEOS製「E10」燃料として、前回7月のここ富士での公式通知記載の比重0.7653と比べてほとんど同じ、ほんのわずか“重い”。いずれにしても、以前から語っているように、混合のベースとなる原油起源ガソリンのほうを重質成分側にして、通常のハイオクタン・ガソリンの“ブレンド”でいえば「高気温時期=夏用」に近いものになっている。

常温揮発性、温度を上げて行った時の揮発の仕方などの数値もこれまで細かく変化している。もちろんガソリンは“なまモノ”と言ってもいい工業製品なので作り置きはできず、かつこのSF用バイオ起源エタノール混合ガソリンの製造量は、石油メーカーにとっては「ごく少量」でもあり、ある程度の量をロット製造しているのではないかと推測される。

  • 燃料リストリクター、すなわちあるエンジン回転速度から上になると燃料の流量上限が一定に保持される仕組みを使うと、その効果が発生する回転数から上では「出力一定」となる。出力は「トルク(回転力、すなわち燃焼圧力でクランクを回す力)×回転速度」なので、燃料リストリクター領域では回転上昇=時間あたり燃焼回数の増加に対して1回の燃焼に使える燃料の量が減るので、回転速度に反比例してトルクは低下する。つまり一瞬一瞬にクルマを前に押す力は減少しつつ、それを積み重ねた「仕事量」、つまり一定の距離をフル加速するのにかかる時間、到達速度(最高速)が各車同じレベルにコントロールされる、ということになる。
  • NRE(Nippon Racing Engine)導入直後の2014年は最大流量100kg/h(8000rpm以上)、2015年からは95kg/h(7600rpm以上)へ。この間もSUGOのみ90kg/h。2016年以降は鈴鹿と富士を除いて90kg/7200rpmまで絞られた。鈴鹿と富士は95kg/hを2020年まで継続。2021年からは全てのコースで90kg(7200rpm以上)の設定に統一されている。
  • 現在の富士におけるSFのコースレコードは、2020年第7戦(コロナ禍の中、12月20日 晴れ・気温5℃・路面温度10℃)で野尻智紀がマークした1分19秒972。すなわち車両はダウンフォースが大きかった「SF19」、燃料リストリクター「95kg/h」でのもの。

 オーバーテイク=出力一時増強システム

■オーバーテイク・システム:最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)。

作動合計時間上限:200秒間

ステアリングホイール上のボタンを押して作動開始、もう一度押して作動停止。

一度作動→オフにした瞬間からの作動不能時間(インターバルタイム)、富士は120秒。

  • OTS作動時は、エンジン回転7200rpmあたりで頭打ちになっていた「出力」、ドライバーの体感としてはトルク上昇による加速感が、まず8000rpmまで伸び、そこからエンジンの「力」が11%上乗せされたまま加速が続く。ドライバーが体感するこの「力」はすなわちエンジン・トルク(回転力)であって、上(燃料リストリクター作動=流量が一定にコントロールされる領域)は、トルクが10%強増え、そのまま回転上限までの「出力一定」状態が燃料増量分=11%だけ維持される。概算で出力が60ps近く増える状態になる。すなわちその回転域から落ちない速度・ギアポジションでは、コーナーでの脱出加速から最終到達速度までこの出力増分が加速のための「駆動力」に上乗せされる。
  • ドライビングとしては、直線全体の加速(余裕駆動力)が強まり、先に待っているコーナーへのアプローチで速度が高まる、ということは、ブレーキングはその分だけ手前から始めないと、そのコーナーにターンインし、旋回することができる速度まで減速できない。OTSを作動させた時にはこの感覚の調整も要求される。
  • 後方を追走している側は、前走車がOTSを発動させれば加速が段付き状に強まるので、それがわかり、どう対応するかを判断することは可能なはず。先行する側は、「ここで使ってきそうだ」と思ったら“ディフェンス”OTSを発動させる手もあり、実際にそうしたケースが増えているが、後続車両のドライバーは早めにOTSを切ると、お互いの作動不能時間が終わるのが自車のほうが早くなるので、そこで仕掛ける、といった駆け引きが生まれている。
  • このオーバーテイク・システム(OTS)の発動を知る方法としてはSFgoアプリのテレメトリーデータになるのだが、それぞれの車両を選択表示させた上で、その画面を注視することが必要。しかしそこにアプリ上の伝送遅れ時間が、通信環境にもよるが、何十秒間かある。
  • チームとドライバーの無線交信の中で、直前・直後の車両のOTS関連情報を知らせる、問い合わせるケースが多くなっている。ドライバーからは「(直接競い合っている)車両・ドライバーがOTSを発動させたかを問い合わせる交信もあるが、SFgoには伝送遅延時間があり、即応が難しい。むしろ「(相手は)残り何秒?」が、競争の組み立ての中では意味が大きい。
  • ロールバー前面LEDは、当初、緑色。残り作動時間20秒からは赤色。インターバルタイム中の点滅も引き続き表示される。残り時間がなくなると消灯。作動の状態にある時は、ロールバー上とリアのLED表示は「遅い点滅」。車両電源ONでエンジンが止まっていると、緑赤交互点滅。また予選アタック時にドライバー自身がその意思を外部に表示したい時には、このLEDを点滅させる「Qライト」機能も使用可。

で、富士スピードウェイという舞台では…

  • 富士スピードウェイのコース・レイアウトを考えると、言うまでもなく最終コーナーの立ち上がり加速から作動開始、ストレ―トエンドまで約20秒連続作動させて加速と最終到達速度を高め、前を行く車両を捕らえるのが、まずは定番の使い方。
  • 100RからADVANコーナー、さらに300Rと続く高速区間も、空気抵抗も増えている高速域でパワーオン、加速する時に駆動力の上乗せがタイムを削る効果を生む。直線よりもタイム短縮効果が大きい可能性すらある。したがって、ライバルに対してラップタイムを削っておきたい状況、例えばピットストップに向かうインラップをできるだけ速く走って、いわゆるオーバーカットを狙う、という時にはここで使うと意外に効果大かと思われる。
  • セクター3はずっと上り勾配が続くので、出力増大がコーナーとコーナーの間の過渡駆動(トラクション)を強める効果を生むのだが、SFの場合はそもそもコーナリングスピードが速く、車両の質量に対して余裕駆動力が大きいので、このセクションの旋回からの「蹴り」はアクセルペダルをデリケートにコントロールする「パーシャル」領域がほとんどになる。したがってこの上り勾配区間の中でのOTSはあまりメリットがなさそうだ。
  • ドライビングとしては、直線全体の加速(余裕駆動力)が強まり、先に待っているコーナーへのアプローチで速度が高まる、ということは、ブレーキングはその分だけ手前から始めないと、そのコーナーにターンインし、旋回することができる速度まで減速できない。この感覚の調整も、とくに富士の長いストレートとシャープに曲がり込む1-2コーナーでは難しいところだ。上りつづら折れの続くセクター3では、旋回の中からのアクセルオンで、ターボ過給特有の吸気圧力上昇の応答遅れ(ターボラグ)からただでさえ強く立ち上がってくるエンジントルク=低いギア(変速段)での駆動力がさらに燃料増量分だけ一気に強くなり、テールスライドを起こしやすくなる。元々デリカシーが必要な右足に、さらに繊細な感覚と動きが求められるわけだ。
  • 一度作動させてしまうとその後120秒間は作動不可、ということは、最近の富士のレースペース(ラップタイム)がドライ路面では85〜86秒、タイヤ交換直後&燃料搭載残量・少で84秒台半ばあたりだったので、作動-OFFから後は1周と2/5、例えばストレートエンドまで使った場合は、そこから次の周回のストレートを走り切り、セクター2を終わるあたり(ダンロップコーナー手前)までは使えない、という計算になる。
    写真:JRP

ピットストップ

◆レース中のタイヤ交換ピットストップについて

■ピットレーン速度制限:60km/h

■レース中ピットレーン走行+停止発進によるロスタイム: 富士のコースでは、長いストレートを加速して行く途中でピットロードが分岐、S字状の速度抑制部を抜けた先から速度制限区間が始まる。ここから出口シグナルまでの速度制限区間は約380m(Google mapによる)。そこを60km/hで走り抜ける中に停止・発進を挟むと走行時間は25秒ほど。しかし減速は手前の屈曲部で始まり、出口側でも速度制限区間が終わったところで、レーシングスピードでストレートを走ってきた車両の速度は250km/h(秒速69.4m)を越えようとしている。ちなみに燃料流量制限90kg/hで走ったプレシーズンテストで、レースペース想定と見られる周回で、OTSやスリップストリームを使っていない状況でスピードトラップを通過した速度は290km/h前後。ピットアウトしてきた車両との間の速度差は200km/hほどにも達する。

かくして富士スピードウェイでのSFのレースでは、ピットインにおけるピットロード走行+停止・発進のロスタイムはかなり大きく、28〜30秒と見積もられ、実際に近年のSFのレースデータから抽出・概算した値もそのくらいに落ち着いている。

これにピット作業のための静止時間、現状のタイヤ4輪交換だけであれば7〜8秒を加え、さらにコールド状態で装着、走り出したタイヤが温まって粘着状態になるまで、路面温度にもよるが半周、セクター3にかかるあたりまでのペースで失うタイム、おおよそ1秒ほどを加えたぎりぎり最小で36秒、若干のマージンを見て38〜40秒ほどが、ピットストップに”消費”される時間となる。

■ピットストップ: ピットレーンでの作業が認められる要員は6名まで。ただし1名は「車両誘導要員」として、いわゆる“ロリポップ“を手にしての誘導に専念することが求められる。したがってタイヤ交換に関われるメカニックは5名となる。この人数の中でタイヤ交換以外の作業時間を削り取るべく、前側のジャッキアップを自動化。車両ノーズの進入を接触センサーなどで検出し、圧縮窒素ボンベからのガス圧力で伸縮するシリンダーを伸ばしてリフトさせる。後側は人手で空圧ジャッキ挿入後、リフトを自動化。どちらも空圧を抜けば車両重量でジャッキが“落ちる”。各チームのメカニック・グループの設計製作なので、車両検知・リフトのメカニズムがそれぞれに異なる。前側に自動上昇ジャッキ、後のジャッキ(これも空圧作動が普及)の挿入・上昇の作業に1名が付き、残り4名は各輪の場所で待機して車両が滑り込んできたら一気に4輪交換に入る。前輪側の一人が作業終了して移動、反対側の作業完了を確認した瞬間にフロントジャッキを落とし、リアは専任者が同様にジャッキダウンして、発進…という流れが一般的。このあたりは、各チームの知恵と練習の成果が現れるところ。

写真:JRP

◆富士スピードウェイのセクター平均速度

*現在のコースレコード=2020年スーパーフォーミュラ第7戦・予選最速タイム(野尻智紀)<燃料流量上限95kg/h>にて計算

セクタータイム[秒] 区間距離[m] 平均速度 [km/h] 1周タイム比率[%]
セクター1 20.551 1305 228.60 25.7
セクター2 24.187 1523 226.68 30.2
セクター3 35.234 1735 177.27 44.1
周回 79.972 4563 205.41 (100)

 

付記:SF23導入以降における予選最速タイムは…

2023rd1・野尻智紀(計時予選) 1分22秒062  S1: 21.001秒 S2: 24.966秒 S3: 36.095秒 スピードトラップ: 299.169km/h

2023rd2・野尻智紀(Q2) 1分21秒196  S1: 20.895秒 S2: 24.628秒 S3: 35.672秒 スピードトラップ: 298.343km/h

2023rd6・牧野任祐(Q2) 1分22秒063  S1: 20.905秒 S2: 24.891秒 S3: 36.267秒 スピードトラップ: 296.703km/h

2024rd4・福住仁嶺(Q2) 1分22秒543  S1: 20.986秒 S2: 25.020秒 S3: 36.535秒 スピードトラップ: 303.371km/h

2024rd6・福住仁嶺(Q2) 1分22秒726  S1: 20.896秒 S2: 24.754秒 S3: 36.074秒 スピードトラップ: 291.105km/h

2024rd7・坪井翔 (Q2) 1分21秒880  S1: 20.965秒 S2: 24.634秒 S3: 36.454秒 スピードトラップ: 291.105km/h

2025rd6・野尻智紀(Q2) 1分22秒417  S1: 20.810秒 S2: 25.153秒 S3: 36.281秒 スピードトラップ: 300.000km/h

2025rd7・坪井翔 (Q2) 1分22秒940  S1: 20.778秒 S2: 25.166秒 S3: 36.996秒 スピードトラップ: 300.000km/h

2025rd9・S.フェネストラズ (Q2)  1分33秒967  雨・赤旗終了

2025rd10・牧野任祐(Q2) 1分22秒123  S1: 20.863秒 S2: 25.003秒 S3: 36.257秒 スピードトラップ: 300.000km/h

2026rd6・Z.オサリバン(Q2/WET) 1分32秒166  S1: 28.084秒 S2: 25.166秒 S3: 41.753秒 スピードトラップ: 283.465km/h

2026rd7・野尻智紀(Q2) 1分22秒815  S1: 20.843秒 S2: 25.112秒 S3: 36.860秒 スピードトラップ: 294.278km/h

最新情報をチェックしよう!