スーパーフォーミュラ 2026年第8戦 スポーツランドSUGO Spotter Guide
今戦は、土曜日午後に予選〜Q3までの3セッション〜、日曜日午後に決勝の、2日間1戦のイベント。
タイヤ交換義務は「13周完了」から。

■レース距離:182.915km (スポーツランドSUGO インターナショナルレーシングコース 3.58657km×51周)
(最大レース時間: 75分 中断時間を含む最大総レース時間: 120分)
8月9日(日) 14時20分 フォーメーションラップ開始予定
■予選:ノックアウト予選方式〜今季、1大会1レースにおいて実施される「3ステージ方式」
Q1はA,B各組12車→各組上位6車・合計12車がQ2に進出→上位5車がQ3に進出。
8月8日(土) 14時20分Q1A組 開始予定
- 公式予選Q1はA組10分間、5分間のインターバルを挟んでB組10分間。そこから10分間のインターバルを挟んでQ2は10分間の走行。そこから10分間のインターバルを挟んでQ3は7分間の走行。
- 公式予選Q1のグループ分けは、第7戦決勝終了時のドライバーズランキングに基づいて、主催者(JRP)が決定する。ただし参加車両が複数台のエントラントについては、少なくとも1台を別の組分けとする。
- Q1の組分けは…

- Q2進出を逸した車両は、Q1最速タイムを記録した組の7位が予選13位、もう一方の組の7位が予選14位、以降交互に予選順位が決定される。
- Q2上位5車がQ3に進出。以下、予選6~12位が決定する。
- Q3の結果で、予選1〜5位が決定する。
- 公式予選通過基準タイムは、Q1各組それぞれの1位タイムの107%以内とする。
- 各セッション終了直前にアクシデント等で赤旗提示、走行が中断された場合は、コースインして1周し、次の周回でタイムアタックが可能な残り時間を設定して再開する。(スーパーフォーミュラの慣例として)
◼️今戦の(個人的独断)トピック
ここスポーツランドSUGOのインターナショナルレーシングコースは、一昨年シーズン前に前半部、昨年シーズン前に後半部と、コース路面の再舗装が行われている。
–日本のサーキット(と自動車メーカー、部品メーカーのテストコースのほとんど)の舗装に関する「道路」の専門家たちの発想→そこから生まれた舗装施工の特殊性と、ドライビングやクルマづくりへの(好ましからざる)影響については、AUTOSPORT誌本年8月号「なぜ日本人はF1で勝てないのか?」特集の中に、私が知る実態とそこからの考察をまとめた一文を掲載していただいた。興味のある方はご一読ください。–
その全面再舗装が完工した昨年は、平滑度向上と摩擦向上によってラップタイムが向上するか、と思われたのだが、後記するように、予選の最速タイム比較では、2024年6月開催では1分5秒244(野尻)。2025年8月開催では1分5秒517(岩佐)。気象条件、路面温度ともにそれほど明確な差はない条件での「伸び悩み」であった。
コース後半の舗装が平滑化、摩擦向上、さらにSUGOの“名物”だった最終コーナーのバンプ、すり鉢状の中で下向きGも受けながら回り込んでいくところで外側2輪が乗り越え、バウンスする路面アンジュレーションがなくなり、10%上り勾配に向かう加速でアクセルを奥まで踏みつけ、そのまま駆動をかけていけるようになった。これがタイムに現れるか、と思ったのだが…。1年が過ぎて路面も落ち着いた状態で、各車のセットアップとドライビングが新しいSUGOにどこまでマッチしてくるか、が、今戦の観戦テーマの一つ。以前、野尻SF初優勝の時のトラック・エンジニア、田中耕太郎さんが「SUGOのセットアップの“鍵”は、最終コーナー〜立ち上がりで左リアタイヤをどう使ってあげるか、にある」と語っていた。バンプがなくなったことでその「難しさ」は緩和されるはず、なのだが。
それも含めて最近気になっていること。
まず去年と仕様としては同じタイヤを履いていて、SF23パッケージももう4年目、各車・各人のセットアップが煮詰まってくる、のではないかという今季、というか昨年あたりから、「速い」「強い」ドライバー+車両、あるいはチームの並びが、毎戦のように変動するようになったような…。
今シーズン全般は、ドライバーとしては太田格之進の勢いと、レースの流れが彼に向く瞬間が目立ってはいるが。
ダンパーのワンメイク化、それ以上に問題を深くしたイナータ〜の排除、などの重要な「変数」が生じたわけでもない。サーキットからファクトリーに戻ってくるたびに主要部分は全て分解され、整備やチェックを行なって再組み立てを繰り返されている車両。そこに目に見えない、定盤上で計測する各部の寸法や、通常の点検・検査ではとらえられない『疲労』が蓄積しているのではないか。とくにカーボン・コンポジット(複合材)は接合・接着の微小剥離などは検出困難、でも大きな荷重を受けている中での車両の微細な挙動には現れてくることがある。金属も応力を受け続けたり、分解組み立ての繰り返しの中で、結晶構造レベルのマイクロクラックが発生し、それが大きな破断の引き金になることは金属素材系の専門家なら承知していることだ。人間だけでなく、マシンも疲労が蓄積するものなのだ。全大会での64のトランスアクスルケースの亀裂発生(ということのようだ)も含めて、そんなことに思いを巡らせてしまう、ここ最近ではある。

写真:JRP
エンジン・パフォーマンス
■燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h
- 今季毎回触れているENEOS製「E10」ガソリンだが、公式通知として公示される「燃料性状表」は、本稿執筆時点ではまだ関係者向け情報ページには掲載されていない。ただこれまでも紹介してきたように、一般のハイオクガソリンよりやや重いが、揮発(蒸発)性を示す温度-留分の数値などは、今の真夏時期の一般的な市販ハイオクタン・ガソリンと同等と見なせる内容だったので、今戦に向けてもそうした特性を示すブレンドで製造されていると思われる。
- NRE(Nippon Racing Engine)導入直後の2014年は最大流量100kg/h(8000rpm以上)、2015年からは95kg/h(7600rpm以上)へ。この間もSUGOのみ90kg/h。2016年以降は鈴鹿と富士を除いて90kg/7200rpmまで絞られた。鈴鹿と富士は95kg/hを2020年まで継続。2021年からは全てのコースで90kg(7200rpm以上)の設定に統一されている。
■オーバーテイク・システム:最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)。
作動合計時間上限:200秒間
ステアリングホイール上のボタンを押して作動開始、もう一度押して作動停止。
- 一度作動→オフにした瞬間からの作動不能時間(インターバルタイム)は、2023年まで一律100秒間だったが、2024年からスポーツランドSUGO に関しては110秒に変更。
- OTS作動時は、エンジン回転7200rpmあたりで頭打ちになっていた「出力」、ドライバーの体感としてはトルク上昇による加速感が、まず8000rpmまで伸び、そこからエンジンの「力」が11%上乗せされたまま加速が続く。ドライバーが体感するこの「力」はすなわちエンジン・トルク(回転力)であって、上(燃料リストリクター作動=流量が一定にコントロールされる領域)は、トルクが10%強増え、そのまま回転上限までの「出力一定」状態が燃料増量分=11%だけ維持される。概算で出力が60ps近く増える状態になる。すなわちその回転域から落ちない速度・ギアポジションでは、コーナーでの脱出加速から最終到達速度までこの出力増分が加速のための「駆動力」に上乗せされる。
- ドライビングとしては、直線全体の加速(余裕駆動力)が強まり、先に待っているコーナーへのアプローチで速度が高まる、ということは、ブレーキングはその分だけ手前から始めないと、そのコーナーにターンインし、旋回することができる速度まで減速できない。OTSを作動させた時にはこの感覚の調整も要求される。
- 後方を追走している側は、前走車がOTSを発動させれば加速が段付き状に強まるので、それがわかり、どう対応するかを判断することは可能なはず。先行する側は、「ここで使ってきそうだ」と思ったら“ディフェンス”OTSを発動させる手もあり、実際にそうしたケースが増えているが、後続車両のドライバーは早めにOTSを切ると、お互いの作動不能時間が終わるのが自車のほうが早くなるので、そこで仕掛ける、といった駆け引きが生まれている。
- このオーバーテイク・システム(OTS)の発動を知る方法としてはSFgoアプリのテレメトリーデータになるのだが、それぞれの車両を選択表示させた上で、その画面を注視することが必要。しかしそこにアプリ上の伝送遅れ時間が、通信環境にもよるが、何十秒間かある。
- チームとドライバーの無線交信の中で、直前・直後の車両のOTS関連情報を知らせる、問い合わせるケースが多くなっている。ドライバーからは「(直接競い合っている)車両・ドライバーがOTSを発動させたかを問い合わせる交信もあるが、SFgoには伝送遅延時間があり、即応が難しい。むしろ「(相手は)残り何秒?」が、競争の組み立ての中では意味が大きい。
- ロールバー前面LEDは、当初、緑色。残り作動時間20秒からは赤色。インターバルタイム中の点滅も引き続き表示される。残り時間がなくなると消灯。作動の状態にある時は、ロールバー上とリアのLED表示は「遅い点滅」。車両電源ONでエンジンが止まっていると、緑赤交互点滅。また予選アタック時にドライバー自身がその意思を外部に表示したい時には、このLEDを点滅させる「Qライト」機能も使用可。
で、スポーツランドSUGOという舞台では…
- まず最も標高が低い位置にある最終コーナーの中から作動させて、登り10%勾配のストレートを駆け上がり1コーナーの飛び込みまで、という使い方がタイム短縮、オーバーテイクともに基本になる。
- ヘアピン(T4)を立ち上がるところからの登りS字区間、ハイポイント~レインボー・コーナーを回るセクションで使うのも、駆動力を強めて上り坂の加速を速くする効果がかなり大きい。その先、バックストレッチは下りになるけれど到達速度が鍵になる状況ならば使い続けることで、馬の背(T9)手前〜ブレーキングで前車に仕掛けられる可能性がある。
- 今回、インターバルタイムが去年までより10秒延びて、一度作動させてしまうとその後110秒間作動不可、となった。ということは、レースラップが1分08~10秒(68〜70秒)とSF開催コースの中で最も短いSUGOでは、作動オフにしたポイントから1周半以上まで使えないことになる。
- 1コーナーへのブレーキング開始と同時にOTSオフにした場合、その周回+次の周回のセクター3、つまりバックストレッチを走り切って「馬の背」コーナーを回り込んだ先あたりまで…、と言っても「SP1-2コーナー」から最終コーナー旋回まではOTSを作動させても効果は薄いから、実質的には2周後の10%勾配・上り直線まで、作動不可状態になるわけだ。
- あるいはバックストレッチの加速終了、セクター2の区切りで作動オフにした場合は、そこからメインストレートを2回通過した先の、1-2コーナーを回り切った先まで、インターバル時間が続くことになる。

去年、同じ8月、ここSUGOの決勝レースは雨、だった。
タイヤ
横浜ゴム製ワンメイク ドライ、ウェットともに1スペック
今季のタイヤ仕様は、基本的には昨年投入されたものをキャリーオーバー。すなわち「再生可能と認定される素材・リサイクル素材」の比率(重量ベース)を、2024年仕様よりも高めたもので、ドライ、レインとその前後、4種の合算において46%に到達している、とのこと。以前にも触れたようにこれは必ずしもタイヤそのものを構成する素材が天然資源などに依るもの、再生材だという意味ではなく、「加工・流通の中で使用したと算定されるバイオマス由来の原料の重量分を織り込む(マスバランス法)などを含む計算の結果。またこのタイヤが使用後にリサイクルされるという意味でもない。

毎回のように書いているが、
「タイヤは黒くて、丸くて、よくわからないもの…と続く=横浜ゴムで最初のADVAN開発設計、同時にレースタイヤ開発も兼務された技術者であり私のタイヤのお師匠様の一人・山下隆さんの名文句)」
まったく同じ仕様であっても、製造のたびに各種のゴム系素材や補強剤を調合し、オイルで混錬(練り合わせ)して作るトレッドの、その基部の、さらにスチールワイアと張り合わせるベルト部、そこからビード(これもスチールワイアの束)までテキスタイルコードと張り合わされて骨格を形作る、何種類もの「ゴム」。その分子レベルの構造は長く伸び縮みする「鎖」が絡み合った状態であり、素材そのものの微妙な差異が、最終的なゴムの特性に現れても不思議はない。SFクラスのレースの現場では、その「微妙な差異」が摩擦に現れ、それを感知しうるドライバーが戦っている。だから「去年と違う」、「この間と違う」、「昨日と違う」は、当然のように起こり、それをドライバーが感知し、タイムにも現れる。
ここで例えば、「タイヤを温める」と言ってもじつはトレッド表面の温度を上げ、「溶けゴム」状態になればいいわけではない。ほんの7mm程度(新品)の厚みでも、その表面から「芯」までの高分子鎖の絡まりも温度や引っ張りによって伸び縮みが変化する。それがつながるベルト層、そしてカーカスでも同じように、ゴムと糸類が絡まり合いつつ引っ張られ、その力と動きがビードにまで伝わって、初めて「タイヤがグリップする」のである。この、目に見えない、見たところでよくわからない、ゴムの、そして糸の絡まり合いをどう「揉んで」、あるべき伸び縮み状態を、トレッドのいちばん外側面からビードまで伝え、ミクロの動きを生み出すか。これが「タイヤを温める」時に起こっているプロセスなのである。
じつは一般のクルマでも、そのタイヤでも、同じことが毎回、異なる症状を見せつつ起こっている。私などはそこが気になる、のだが、一般のドライバーがそこまで感知することはまずない。でも感覚を鋭くしてクルマとの対話を始めれば、きっと毎回の違いがわかる。SFクラスのレーシングドライバーは、その「普通は感じることがない」デリカシーの領域に、日々踏み込んでいるのである。
■タイヤ使用制限:ドライ(スリック)
2026年全日本SF選手権統一規則・第23条2項には、「競技会期間中を通じ、1レース、車両1台あたりに使用できるドライタイヤは最大6セットとする」と規定されている。
今戦は、新品4セット、持ち越し2セットのはずで、これは予選がノックアウト方式3セッションに対応したもの。つまり、まず土曜日のフリー走行を持ち越しタイヤで走り始め、ロングランの確認もした上で、少なくとも新品1セットを予選シミュレーションに卸し、さらに予選でQ3まで進出した車両は各セッションで新品セットを投入できる。この場合、持ち越し品に新品か新同品がなかった場合、決勝レース用の2セットは1アタック品になる。もちろん、Q1、Q2でノックアウトされた車両は、走らなかった予選セッション分の新品を持って決勝レースに臨むことになる。この差がどの程度のアドバンテージになるかは、ラップタイム推移、とくにタイヤ交換を行った直後の“一撃”グリップを使うと、そのピークでのタイムなどに現れる、はずだが、じつは見分けにくい。現用ヨコハマ・ドライタイヤの場合、1アタックしたものか新品かの差は、周回を重ねる中で現れるグリップの低下〜ラップタイムの落ち込み、いわゆるデグラデーションには明確な形では現れにくい。むしろドライビングとマシン状態の差が、どこからどのくらいのデグラデーションが現れるか、を大きく左右する傾向が見られる。
■決勝中のタイヤ交換義務:あり
- スタート時に装着していた1セット(4本)から、異なる1セットに交換することが義務付けられる。
- 先頭車両が13周目の第1セーフティカーラインに到達した時点から、先頭車両が最終周回に入る前までに実施すること。(スポーツランドSUGOの第1SCラインは最終コーナーからの上り直線、ピットロード分岐で道幅が広がり始める少し手前、ピットロードを示す白線開始点と直角に引かれた白線。第2SCラインは、ピットロードが本コースに合流する所で、本コースの中までピットロード延長を示して引かれた白線の先端=仮想線)
- タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
- レースが赤旗で中断している中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは見なされない。ただし、中断合図提示の前に第1SCラインを越えてピットロードに進入し、そこでタイヤ交換作業を行った場合は、交換義務の対象として認められる。
- レースが(41周を完了して)終了する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには競技結果に40秒加算。
- 決勝レースを、ウェットタイヤを装着してスタートした場合、およびスタート後にドライタイヤからウェットタイヤに交換した場合は、このタイヤ交換義務規定は適用されないが、決勝レース中にウェットタイヤが使用できるのは競技長が「WET宣言」を行なった時に限られる。
■タイヤ使用制限:ウェット 1レース、車両1台あたりに使用できるウェットタイヤは最大6セット
■走行前のタイヤ加熱:禁止

◆レース中のタイヤ交換ピットストップについて
■ピットレーン速度制限:60km/h
■レース中ピットレーン走行+停止発進によるロスタイム: SUGOは2022年ピットロード出口側のレイアウトが大きく変わった。3コーナーの先までコース外側を走ってから合流するレイアウトにしたのだが、これだと合流直前に本コースを走ってくる車両を確認しようとしても、今のフォーミュラカーでは頭部保護のためにサイドが盛り上がったコックピット開口部後半に遮られて死角になってしまう。そこで2023年からは、合流点を3コーナーが曲がり込む手前・外側に移した。これでも以前の2コーナー立ち上がりに切ってあったピットロード出口よりは先まで行って合流、そこから3コーナー外いっぱいを走って、4コーナー・ヘアピンに向かってようやくフル加速に移る、という走り方になる。
分岐部直後から速度制限区間が始まり、そこから60km/h。すぐに現れるシケインを切り返してファストレーンを走り、ピット前で停止、発進して1-2コーナーの内側を回り込んだ先で本コース、3コーナーの外側へ…というパターンで、そこを走ることで、本コースを走ってくるのに対して増加するタイム、いわゆるロスタイムは、となるわけだが、昨年のこの地でのレースのタイミングデータから推測すると、「26〜28秒」。少し幅があるのは、タイヤ交換直後の冷えたタイヤではピットロードを出た先でもペースが上げにくく、これがアウトラップのタイムの中に入ってきていて、セクタータイムまでしか記録されていない公式タイミングデータでは純粋にピットロードの走行タイムだけを引き出すことができないため。いずれSFgoのオンボード映像を使って整理してみます。
これにピット作業のための静止時間、タイヤ4輪交換がスムーズに行えれば7〜8秒を加え、さらにコールド状態で装着、走り出したタイヤが温まって粘着状態になるまで、路面温度にもよるが、ピットロード〜本コース合流からセクター1で失う1秒ほど、さらにセクター2でもまだおおよそ1秒ほど遅いのを加えた、最小で35秒、若干のマージンを見て37〜38秒ほどが、ピットストップに”消費”される時間となる。既にタイヤ交換を終えてコース上にいる車両に対して、これ以上の差をつけていれば、ピットストップ+タイヤ交換を行ってコースに戻ったところで前に出られる、という計算になる。
実際、これまでのレースラップを見ても、ピットストップ+タイヤ交換によって失うタイムは最小がその37〜38秒で、そのためにはインラップでOTSを使うなどしてタイムを切り詰め、ピットロードに飛び込んできてギリギリのブレーキング、といった“アタック”が必要になる。前方の状況(いわゆるトラフィック)によっては40秒かそれ以上を”消費”してしまうケースもある。ピットロード手前がスピードを乗せてくる最終コーナーからのきつい上り勾配、出口側も速度を上げられず合流まで時間を食うレイアウトゆえに、インラップ〜ピットストップ〜アウトラップのタイムをどう削るか、延びてしまうかについては、見た目以上にシビアなコースなのではあります。
■ピットストップ: ピットレーンでの作業が認められる要員は6名まで。ただし1名は「車両誘導要員」として、いわゆる“ロリポップ“を手にしての誘導に専念することが求められる。したがってタイヤ交換に関われるメカニックは5名となる。この人数の中でタイヤ交換以外の作業時間を削り取るべく、まず前側ジャッキアップを自動化。車両ノーズの進入を接触センサーなどで検出して空圧(正確には、圧縮窒素ボンベからのガス圧力で伸縮する)シリンダーを伸ばしてリフトさせる。後側は人手で空圧ジャッキ挿入後、リフトを自動化。どちらも空圧を抜けば車両重量でジャッキが“落ちる”、という手法が2018年後半から急速に普及した。前側に自動上昇ジャッキを使うことで、後のジャッキ(これも空圧作動が普及)の挿入・上昇の作業に1名が付き、残り4名は各輪の場所で待機して車両が滑り込んできたら一気に4輪交換に入る。前輪側の一人が作業終了して移動、反対側の作業完了を確認した瞬間にフロントジャッキを落とし、リアは専任者が同様にジャッキダウンして、発進…というプロセスになる。ここで、誰がどう動くかのフォーメーションは、各チームの知恵と練習の成果が現れるところ。
こうした作業手順でタイヤ4輪交換に必要な静止時間は、車両停止の瞬間から作業終了してジャッキを“落とし”、ドライバーがクラッチを繋ぐ瞬間まで、何も支障が起こらずに進めば最速6秒程度、なのだが、近年の実績ではスムーズに進んだケースで実質7秒、ちょっと何か遅れが生じると8秒かそれ以上を費やしたピットストップ事例も少なからず見受けている。

写真:JRP
ご参考
◆スポーツランドSUGO インターナショナルレーシングコースのセクター平均速度
*2019年スーパーフォーミュラ第3戦・予選最速タイム(山本尚貴・Q2)=現在のSFコースレコードにて計算
| セクタータイム[秒] | 区間距離[m] | 平均速度 [km/h] | 1周タイム比率[%] | |
| セクター1 | 16.857 | 840 | 179.39 | 26.36 |
| セクター2 | 18.699 | 1110 | 213.70 | 29.24 |
| セクター3 | 13.859 | 730 | 189.62 | 21.67 |
| セクター4 | 14.538 | 1024 | 253.57 | 22.73 |
| 周回 | 63.953 | 3704.256 | 208.52 | (100) |
- セクター1は、コントロールタワー前・計時ラインからT4(ヘアピン)立ち上り、T5までの短い直線区間の中間。中速コーナーの連続からタイトに曲がり込んで上りにかかる、という区間。
- セクター2は、T5-T6(上りのS字)からT7(ハイポイント)-T8(レインボー)の標高最高点の2連コーナーを回り込んでバックストレッチを駆け下り、T9(馬の背)前の軽い右キンク(折れ部)に差し掛かるところまで。速度計測もこの場所で行われる。
- セクター3は、最高到達速度から一気にブレーキングしてT9(馬の背)T10(SPイン)-T11(SPアウト)を一連のリズムで回り込んだ先、T12(110R)につながる直線区間の中間まで。ダウンフォースを乗せつつタイヤのグリップを引き出して旋回する、スーパーフォーミュラにとっては中速コーナー区間。
- セクター4は、T12(110R)で旋回運動を作りそのままT13(最終コーナー)を強大な横G(旋回運動の遠心力)とさらに下向きGを受け続けながら回り込み、10%勾配を駆け上がる。平均速は4つのセクターの中でも飛び抜けて高い。
SF23に空力チェンジしてからの予選最速タイムは、2024年6月のシーズン第3戦・Q2(QF開始時の気温31℃、路面温度50℃)で野尻智紀が記録した1分5秒244。
残り半分の舗装も新装なった2025年はQ2(QF開始時の気温29℃、路面温度・記録忘れ)で岩佐歩夢が記録した1分5秒517がベスト。
(両角岳彦)

