今年一年のモータースポーツ観戦計画の参考に
毎年、1年間のモータースポーツ観戦・中継映像録画・一部取材…のスケジュールを組む上で、どの週末に何かあるか、何と何が重なっているか、を見渡せるように一覧表にまとめています。並べてあるシリーズはあくまでも個人的関心度による選択。同じような整理をしている方も多いみたいですが、観戦計画や録画予約の参考になるかと思い、簡単な手作り表ですがここに掲載しておきます。なおセルの最初に[ ]で数字を記してあるのは、週末ではない日程の場合。
画像をクリックするとPDF版が開きます。拡大して見るにはこちらをお勧めします。
一応、それぞれのシリーズの簡単な紹介と私の視点からのポイント解説…
*動画中継についてはライブのみ。事後であればYouTubeなどにフル、ダイジェストをアップロードする主催者が増えています。
[国内]
◾️スーパーフォーミュラ

photo:JRP
国内トップフォーミュラで競う日本選手権シリーズ。ここ10年使っているダラーラ製SF14/19/23(骨格、足回りは継承)と燃料流量規制下で500馬力以上を出す4気筒2ℓ+ターボ過給”Nippon Racing Engine”(トヨタ、ホンダ)の組み合わせは、F1に最も近い運動性を持つフォーミュラとして世界的にも評価が高まっている。
⚫︎動画中継:J SPORTS, 公式アプリ”SFgo”, DAZN, ABEMA
SFL(スーパーフォーミュラライツ)は以前の呼び方だと”F3”(今はF1直下に同名シリーズが組まれている)。SFに最も近いカテゴリー。ダラーラ製シャシーはステップアップ・フォーミュラの中ではダウンフォース大きく本格的な競技車両。現用エンジンは3気筒1.6ℓターボ過給。
FRJ(フォーミュラリージョナル・ジャパン)は中間クラスフォーミュラカーの国際規定・各国地域別に沿って童夢製シャシーにアルファロメオの4気筒1.75ℓターボ軽過給エンジンを搭載したマシンで競う。
◾️スーパーGT

photo:Toyota GAZOO Racing
GT500、GT300(数字はおおまかな出力の目安)の2つのカテゴリーで市販車ベースのマシンが参加するシリーズ。日本のサーキットレースでは最も集客力が高い。GT500はNREを同一骨格・駆動機構(元はDTMと歩調をそろえるべく企画されたが今は日本だけ)を組み合わせ、空力性能を均一化する寸法・形状規定に沿って市販高性能車のフォルムを再構成した外皮をまとう。GT300はJAF規定に則った独自車両とFIA-GT3が混走。シリーズ戦での獲得ポイントによってサクセスウエイト(GT500では燃料流量削減も)を課すなどして、各戦ごとに競争力の突出を抑制する。
⚫︎動画中継:J SPORTS
FIA-F4:FIA国際規定の中で最もベーシックなフォーミュラカー。各国・地域で技術規定に則った独自車両を使用するシリーズを組む。日本シリーズは東レカーボンマジック製シャシーに4気筒2ℓ自然吸気エンジン(ベースはトヨタ)を組み合わせる。スーパーGTのサポートレースとして開催。
⚫︎動画中継:YouTubeライブ
◾️スーパー耐久
市販車をベースにモディファイした車両を複数のカテゴリーに分けて走らせる。技術的許容度を広げたことで国内自動車メーカーも技術トライアルや市場PRの場として活用するようになっている。日本の主要サーキットのレースではいまや唯一の24時間レースも富士スピードウェイで1戦組まれている。
⚫︎動画中継:公式ウェブサイト→YouTubeライブ
[国際]
◾️F1(Formula 1)

photo:Red Bull
言わずと知れた「世界ドライバーズ選手権」シリーズ。最高の技術を結集した車両を最高のドライバーが操り競う、というのが元々の枠組みだが、いまやスポーツ・エンターテイメントとしても世界で最も多くの資金を集め、大規模な仕組みで各国を回るイベント・シリーズになっている。参加チームはそれぞれ独自に車両を開発・製作することを求められ、巨額な資金を集め注入するのが当たり前になった。「ドライバーの選手権」としてはハイブリッド動力と空力に大きく依存した車体ともに複雑化しすぎている感が強い。V6・1.6ℓターボ過給のICE(内燃機関)に加えて高速回転するモーターを駆動・回生(後軸のみ)に介入させるMGU-Kに加えて排気でさらに発電機を駆動してその電力をMGU-Kに送り込んで増力するMGU-Hを加え、そうした機構面だけでなく動力の組み合わせをどの状況でどのくらいずつ使うかが非常に複雑になっている。現行の車両規定は今年までで、動力機構としてはMGU-Hは廃止となり、空力デザインも2026年には大幅に変更される(と言っても専門家以外が見てそうとわかるような変化ではないが)…。日本向け動画配信の契約も現状のものは今年いっぱい。
⚫︎動画中継:フジテレビnext, DAZN(併催の F2,F3も), 公式アプリ
◾️WEC(世界耐久選手権)

photo:ACO
スポーツカー系サーキットレースの世界選手権シリーズ。歴史を振り返ると紆余曲折があったが、近年は象徴的存在であるル・マン24時間(夜が最も短くなる夏至直前の週末開催が恒例)を含めて世界を転戦するシリーズに落ち着いている。参加車両はまずスポーツプロトタイプと総称されるクローズドコックピットの競技専用車両。ル・マン主催団体ACOを中心に企画され専用に開発されるハイパーカーと、アメリカ側で以前からのLMP2車両の骨格を使いつつメーカーがエンジンと車体外形を独自に作れるLMDhの2種があり、ハイパーカーは前軸側に独自の、LMDhは後軸側に共通のモーターを組み込むハイブリッド動力。駆動トルクから使用エネルギー量を積算してその総量を規制するなど細かな性能調整(BoP:Balance of Performance)を毎戦適用し、競争力の均等化を図る。もう1種は市販スポーツカーを元にしたFIA-GT3。他のシリーズで走る車両と基本は共通だが、長時間長距離レースに合わせた別仕様になっている。ル・マンだけはLMP2もまだ参加枠が設けられている。ル・マン24時間参戦権を設定した下部シリーズがヨーロッパ、アジアで行われている。
⚫︎動画中継:J SPORTS, 公式ウェブサイト&アプリ
◾️MotoGP

photo:Red Bull
モーターサイクルによるサーキットレースの最高峰。2輪車の社会浸透を背景に途上国にもイベント開催を拡大中。3クラスあり、最高峰はMotoGP。現在は排気量1000ccで最近は空力を利用して接地荷重を増やすなど技術高度化が進む。2027年から排気量を850ccに縮小、空力効果なども削減、簡素化する予定。日本メーカーはホンダ、ヤマハの2社が参戦を継続しているが、ドゥカティ、アプリリア、KTMの欧州勢に圧倒される状況。Moto2はトライアンフ製3気筒765ccエンジンを共通化しシャシーは自由だが現状2社に集約。Moto3は単気筒250ccで車体も含めてホンダとKTMが供給している。
⚫︎動画中継:日テレG+, 公式ウェブサイト
◾️Indycar

photo:indycar.com
5月末の戦没将兵追悼記念日に開催されるインディアナポリス500マイルを頂点とするアメリカのトップフォーミュラ。長円形のオーバル(長短あり)、常設サーキット(ロードコース)、市街地仮設(ストリート)と異なるレイアウト、路面のコースを転戦する。近年のマシンはダラーラ製シャシーにV6・2.2ℓツインターボ過給エンジンを締結。2024年シーズン途中から、トランスアクスル内にモーターを組み込みキャパシタで48V電力を供給するハイブリッド機構が追加された。「インディ」に代表されるハイスピードオーバルは車両形態・セッティングともに他と大幅に異なるものになり、周回平均速度は370km/hを超える。ドライバー頭部保護に欧州系フォーミュラは枠組みだけの”Halo”なのに対して、金属枠組みに透明シールドを張る。
⚫︎動画中継:GAORA
◾️IMSA

photo:imsa.com
International Motor Sports Associationの略。アメリカにおけるスポーツカーレース系の統括団体。近年はル・マン主催団体ACOと提携したアメリカン・ル・マン・シリーズと旧来からのアメリカン・スタイルのスポーツカー・シリーズを統合したスポーツカー・チャンピオンシップ(シリーズスポンサーは自動車用品のWeatherTech)を展開。シーズン序盤に歴史のあるデイトナ24時間、セブリング12時間、最終戦にプチ・ルマンが組まれている。参戦車種はLMP2系シャシーメーカー4社が製作するシャシーに参戦メーカーが独自のエンジン、外装フォルムを組み合わせたLMDhと、FIA-GT3相当のGTD(D:デイトナ)。FIA-ACO系のハイパーカーも”相互乗り入れ”の形で参加可能。
⚫︎動画中継:J SPORTS(一部)
◾️WRC(世界ラリー選手権)

photo:Toyota GAZOO Racing
市販乗用車の姿形そのままの競技車両が一般公道を走る競技の世界選手権シリーズ。今日の”速さ”を競うラリー競技はクローズドされたSS(スペシャルステージ)を3日間で20セクション前後走り、そのタイムの合計で順位を決める。雪氷路、舗装路(ターマック)、非舗装ダート(グラベル)と路面も様々。ヘアピン折り返しが連続するタイトな峠道から平原地帯フラットアウトまでコースも土地土地によって異なる。そこをタイヤ摩擦と車両運動の限界でコントロールして走る。クルマの動きもドライビングも見てわかりやすいし、世界のモータースポーツの中でも車両を操る能力が最も高いドライバーがそろっている。今は空撮、オンボード映像、GPSによる刻々の位置とタイムなどが観る側にも提供されるので、遠隔観戦でも臨場感は高い。参加車両は鋼管溶接構造のサバイバルセルに市販乗用車の形を再現した外皮を組み付け、1.6ℓターボ過給エンジン+前後軸間クラッチ結合方式4WDで走らせる「R1」(ここ2シーズン義務付けられていたモーター+電池パックは今年は廃止)と、市販車骨格を用いつつ同様の4WD機構を組み込み、エンジンの最大排気量1.62ℓ+過給とされた「R2」の2クラス。2027年にはさらに自由度を増した車両規定に移行する。
⚫︎動画中継:J SPORTS, 公式ウェブサイト&アプリ
◾️フォーミュラE

photo:Formula e
電池-電動駆動のフォーミュラカーによる世界選手権シリーズ。現在使っている車両は第3世代(gen.3)で骨格はダラーラ製。前後に300kW級のモーターを備え、駆動と回生を行う。フロントモーターが駆動にも使えるようになったのは今季から(Evo.=発達型と称する)。電池はワンメイクだが、モーター、電力制御ユニットなどは各チーム独自のものが使える。モーター合計出力と電池からの電力使用総量を制限、管理することで競争力を均一化。ダウンフォースは今日の競技車両としては少なく前後のウィングは接触保護材のように使われている。排ガスがなく動力機構の音も少ない(走行中、最も耳につく音はタイヤのスキール音)ので、市街地に仮設したコースでレースを行なえることをセールスポイントにするが、コースが狭く屈曲している中を、多少狭めたとはいえ全幅1.7m、全長は5mのマシンが並び合うのは難しく、順位変動が少ない。その機会を増やすべく、コーナーを大回りする「ゾーン」を通過することで+50kWを使えるようになる「アタックモード」が導入され、2回(合計8分間)の実施が全車義務付け。今季からピットストップして30秒・4kWh弱を充電する「ピットブースト」もイベントを選んで実施。その際はこれも全車義務付け。競争の中での”変数”は増えるが…。
⚫︎動画中継:J SPORTS
◾️DTM(ドイツツーリングカー選手権)
“Deutsche Tourenwagen Masters”の略。かつてはまさにドイツ・メーカーの量産乗用車をベースにした車両で競うシリーズだったが技術開発が先鋭化しすぎて行き詰まり、2000年代に入って主骨格やシャシー要素を共通化、V8・4ℓ規定のエンジンは各社開発、という車両で出直した。この時いったんは日本のスーパーGTと車両を共通化する方向で動いたのだが、レース形態を含めて隔たりも大きく同床異夢で立ち消えとなった。再び行き詰まったDTMは主催団体も変わり2021年からFIA-GT3によるレースに転向。フェラーリ、ランボルギーニも参戦し「ツーリングカー」の競争ではなくなっている。短距離・1ドライバーによるスプリントレースでかなりアグレッシブな競争が演じられるのは以前から。
⚫︎動画中継:日本でのライブ中継はなくなった。
◾️IGTC(International GT Challenge), WoER(World of Endurance Racing)

photo:24h-rennen.de
FIA-GT3規定の車両による国際シリーズがIGTCで地域別のシリーズ(ヨーロッパ、アジア)も行われているが、各国で行われる12時間、24時間などの耐久レースでGT3クラスが最速カテゴリーになる競争の代表的イベントを国際シリーズとしてノミネートしている。多くのカテゴリーの混走となるニュルブルクリンク24時間(旧来の北コースと現用のグランプリサーキットをつないだ長く難しいコースを走ることでも有名)、スパ-フランコルシャン24時間の長く続くイベントに、2025年から鈴鹿1000kmが加わった。これに対してWoERは近年に始まった12時間、24時間レースのシリーズでこの一覧には欧州のイベントをリストアップしたが北半球の冬場には中東でも同様のレースが開催されている。
⚫︎動画中継:各々YouTubeライブ
(両角岳彦)
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