ヤマハ発動機(以下ヤマハ)から、電動アシスト自転車「PAS」シリーズに新しいモデルが追加されました。
新型のお話の前に、現在の電動アシスト自転車の状況は、販売台数では10年前が40万台くらいだったものが、80万台程度とおよそ10年で倍増しているそうです。
確かに、ウチの子が幼稚園に通っている頃(20年前)は、やや裕福だったり坂の上の豪邸に住んでいるような奥様しか、電動アシストママチャリには乗っていなかった気がします。当然、我が家は、ノンアシストママチャリでした。けれど、最近の保育園などの駐輪場を覗くと、子乗せ型のママチャリは、まずほとんど電動アシストが占めているように見えますね。それほど普及しているということが実感できます。
電動アシスト自転車は、すごく大きく分けると日常ユースタイプとスポーツタイプに分かれるといえます。日常ユースタイプはいわゆるママチャリやシティーサイクル的なものに電動アシストユニットを組み込んだものです。
今回ヤマハがリリースしたのは、ママチャリタイプとシティーサイクルタイプです。
その中でも、ママチャリタイプは子乗せ型、シティサイクルタイプは、高校生などを中心とした通学型と言えるでしょう。
子乗せ型のほとんどが電動アシスト自転車!?
子乗せ型は、先程の保育園で見てみると、かなりの数がPanasonic製品が多いように見えます。聞くところによると、ママチャリを選ぶ中心はママであり、乗り物好きには響きそうなYAMAHAブランドより、家電で馴染みのあるPanasonicがママに選ばれる傾向にあるのだそうです。家電量販店、ホームセンターんなどへの販売力の違いなども大きいとは想像しますが。
電動アシストを開発し、免許の要らない「自転車」として普及させるため多くの特許を公開したヤマハにとって、それはちょっと寂しいことです。でも、ヤマハはここでママにも使いやすく、さらにパパを味方につける戦略を取ってきました。
それで今回発表された「PAS babby」「PAS kiss」は、低重心化して乗りやすくするとともに、多くのパパにもタイプできるよう身長の高い人にも対応できるサイズ設計とし、サドルの高さを頻繁に変えることも考慮し、サドルポストをクイックレバーで高さ調整可能としています。サドル高さは、オフィスチェアによくあるガスダンパー式の簡単な調整機構を採用すればいいのに。YPJ Proにも採用されているんだから、流用できるでしょう。それだけで上代1万円上げても商品価値ある人にはあると思うけどなぁ。
カラーはママチャリに多い、赤や黄色の原色系ではなく、いい意味でくすんだりぼんやりしているいわゆるアースカラーがメインで、そのカラバリからも、子育てをパパママでやっていく今どきの若い夫婦世代に合わせた製品と言えます。
カラバリはすべてつや消しのマットが付きます。
女子高生だけでない男子高生にも乗ってほしい!
そして、通学タイプも現代のマーケットを意識しています。
電動アシスト自転車の使用者年齢層のグラフを見ると、15〜16歳でひとつの山があるのですが、これは高校入学とともに自転車通学するようになった学生さんたちのもので、電動アシストを購入する大きなタイミングとなっているそうです。
ところが、その内訳を見てみると、女学生が圧倒的に多かったのは想像に難くありませんが、ここ最近では、男子学生がめっぽう増えてきているのだとか。男子の軟弱化と嘆いている場合ではありませんよ。
こうした男女格差、隔たりが減少していくのに伴い、電動アシスト自転車も「ジェンダーレス化」したようです。
今回発表された「PAS ULU(パス ウル)」は、フロントバスケットの耐荷重を3kgから5kgへ増量したり、リュックを背負って乗車する時にリュックの重さを荷台が受け止めるようなことを考慮したり、学生の使い方を徹底的に調査してできあがったといいます。
それと、こちらのULUでも気になったのが、カラーラインナップです。リリースでは、
フェンダーやキャリアなどの部品類をマットブラックに塗り分けることで、カジュアルでありながらタフな印象を与える「マットカーキグリーン」、落ち着いた印象にさりげないアクセントを加えた「マットダスティダークブルー」、洗練されたエレガントな印象の「マットエクリュ」、どんな服装にも合わせやすいスタンダードカラーの「マットブラック2」の全4色
となっています。全色マットです。子供のランドセルは男の子は黒、女の子は赤、と半ば強制されて育った世代にはなんとも渋い色ばかりですが、上記の子乗せ型同様、いまどきは目立たない自然に溶け込むのがご希望なんでしょうか。
少し前の調査では、「知っているバイクメーカーは?」という質問への任意回答(つまり、バイクメーカーに限らない)で、ヤマハはバイクを作っていないトヨタより順位が低かったこともあったのだとか。
乗り物好きとしては、ヤマハのブランドは絶対的な信頼があるし、若い世代にもそれを広く知ってもらいたいとすら思います。
発表会に登壇した女学生の稲垣来泉さんはなんと13歳ですって。男子は織田惟真くんで「THE SUPER FRUIT」というグループに属しているんだとか。
「電動アシスト自転車」の「YAMAHA」をアピールしてほしい
ところが、今回発表された電動アシスト自転車には、一番目立つ横から見たフレームにあるロゴが、どれもYAMAHAの文字がない。う〜ん、もったいない。
聞いたところでは、ヤマハのブランドが知られていないから付けていない、という考えもあるのだそうです。けど、それってニワトリとタマゴの例えみたいなもので、まずはタマゴを産んで下さいよ。いや、すでに産んでるんだから、育ててもう一度ニワトリにしてくださいよ。幸い、YAMAHAブランドは楽器や音楽の分野でそれ自体を知らない人は少ないでしょうから。
ヤマハの電動アシスト自転車は「PAS」と「YPJ」に大きく別れ、その下に様々なペットネームを持つ車種が存在しますが、それが分かりづらい。2024年11月末現在のHP上でPASシリーズには以下のラインアップがあります。
PAS With
PAS With DX
PAS With SP
PAS CHEER
PAS SION-U
PAS babby
PAS kiss
PAS Crew
PAS Babby un
PAS ULU
PAS RIN
PAS Ami
PAS CITY-SP5
PAS CRAIG
PAS CRAIG PLUS
PAS CITY-C
PAS CITY-X
PAS CITY-V
PAS minä
PAS VIENTA5
PAS Brace
PAS ワゴン
PAS GEAR-U
うーん、これだけを覚えている人、販売店にもそうそういないんじゃないでしょうか? この上にYAMAHAが付くのを忘れてしまうのでは? 4輪の自動車の業界では新しい車名、ペットネームが1つできるとそのためだけで宣伝費が億単位で必要だと聞いたことがあります。型式認証が必要ないから増えちゃうんでしょうか? マーケティングの専門家でもありませんが、素人ゆえに気付いたような気がします。
せっかく製品は素晴らしいので、ブランド、ペットネームのシンプル化を検討してはいかがでしょうか。お客さんも販売現場もわかりやすく、親しみやすくなると思われます。中国製が多いと思われる、アシストでもない「電動自転車」が増えているなか、正当な「電動アシスト自転車」をしっかりと認知させていただきたいと期待します(そう言えば、発表会で新聞記者たちは「電動自転車」と言っていたけど……?)。
(文・写真:小林和久)
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