日本の「電圧事情」とBEV充電の密接な関係【自動車のCN化-その真実_全てBEVになる日は来ないvol.17】

改めて充電の問題を整理してみる

BEVを日常的な移動空間として使う中での問題、その機能を制約する要素として、電池の重さ・大きさに加えてもうひとつ、「充電」があります。

写真:Renault

この充電についても、日本でBEVが一時的ブームになった1994年頃に始まり、〜〜当時はNi-MH電池(ニッケル-水素吸蔵合金電池)がやっと実用化されたところで、一般的な鉛-酸電池を積んでいたクルマも多く、片道数十kmしかない航続限界にヒヤヒヤしながら走らせたものです。〜〜2010年以降、まずは日産リーフや三菱i-MiEVで、東京周辺でもごく限られた数しかなかった急速充電器を探して走ったものでした。
それから今日までの体験を振り返ると、「BEVの普及には充電設備の増加・充実が欠かせない」のはたしかなのですが、しかしそれだけで「普及」が進むとは言えません。

BEV、PHEV(外部からの充電も可能なプラグ-イン・ハイブリッド車)を購入して、定置場所、たとえば自宅に充電設備を設置する場合。日本では一般家庭まで供給される商用電源は単相200V。これは家庭用としては大電力を常用する広めの部屋用エアコンなどのために契約、設置されるものを、EVの充電用に使うものです。同じ200Vで「三相交流」もありますが、こちらは文字どおり、3つの線から周期をずらした交流電流を送り込むことで、モーターを一定速で回すなどの用途に対応したもの。つまり工場などの業務用で、EVの充電はこの種の電源には対応していません。

ここで、敷地に比較的余裕がある一戸建てで持ち家ならいいのですが、既存の集合住宅では共用区画にEV充電器を1、2基設置するだけでも、充電器やそれに付随する電気設備の工事だけでも合意形成から始めなければなりませんし、さらにそこで使った電力の費用をどう確認し、誰がどう支払うかも決めなくてはなりません。比較的新しいマンションでEV充電器を設置するところもできてきてはいるのですが、居住者がそれぞれEVを持つようになったとすると、それに対応するだけの充電設備を揃えるのは、今の日本では、あるいは欧米でも、現実的とは言えません。狭隘な敷地を連ねた住宅密集地の一戸建てでも、同じようにEV充電設備を各戸に備えるのは現実にはなかなか難しいでしょう。

後で急速充電の現状をお話しすると理解できると思いますが、BEVの使い方としては、定置場所から日々出かけてある程度の距離を走って戻り、走らせない時間、例えば夜間に時間をかけて充電する、という使い方を基本にするのがいいと、私は考えています。そのための駐車場所での充電として、当初は単相200V(電圧)で電流10Aを流し、電力としては2kWが日本の標準でした。これだと日産リーフの初期型が積んでいた40kWh、つまり2kWの電力を流して10時間分の電池をほぼ全放電から満充電にするには20時間かかる、という計算になります。最近は20A・4kWも選べますが、一般家庭としては一度に流れる電力量がかなり大きめなので、それを前提に電力設備・契約などから見直す必要がありそうです。ホテルなど市中施設での通常充電設備では6kW機材も増えてきていて(一般家庭・住宅向けも)、これだと宿泊時など長めの時間を使える充電では大容量電池もなんとか満たせるようになってきてはいます。問題はその料金で、サービスを供給するネットワークが複数あり、そのどこかと契約するか、都度従量制にしていちいちスマートフォンなどで手続きするか、BEVユーザーとしては悩ましいところです。

写真:Renault

これが西ヨーロッパ各国などになると、一般街区・住宅のすぐそばまで300〜400Vの給電網が張られていますから、10kW前後の充電器を設けることができ、BEVの使い方ももう少し柔軟に組み立てることができそうです。<続く>

(両角岳彦)

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