現在の実質的なBEVやPHEVの理想的な使い方を考える【自動車のCN化-その真実_全てBEVになる日は来ないvol.20】

BEVは充電時の温度管理も避けて通れない

それにしても「100kWhを5分間で」ということは電圧1000Vを電流1200Aで流すわけで…。電池は大丈夫なのだろうか、は傍に置くとしても、日常生活の中でこれだけの電力を当たり前に取り扱えるだけの電力設備を、普通の人々が安全に取り扱えるようにすることがはたして可能なのだろうかと、首を傾げてしまいます。こうした技術的試みに、“ダメもと”で取り組む積極性が、例えば小型ドローンなどでも起きているように、中国勢が世界をリードする可能性につながるかもしれません。しかし世界各国・地域にそこまでの大電力を扱う充電設備“網”が普及するかどうか。たぶん進むとしても何十年かの時間が必要でしょう。

2025年前後から、日本の高速道路、とくにNEXCO中日本・西日本では急速充電設備の更新、新設が続き、高速道路の長距離移動はずいぶん楽になった。この写真のようなマルチステーション型も増えているが、今のところ、全ての充電口が埋まっている状況に出会ったことはない。1、2基だけだと「充電待ち行列」ができてしまうことも多く、その対策として日本の急速充電網では「1回30分」が決まり事になった。奥のブルー/白のスタンドは最大90kW、手前の赤/白機材は最大150kWだが2口を同時に使うと90kW以下になる。この時のテスラModel3は20kW弱しか流れていなかった。急速充電器は大容量キャパシタを内蔵、大容量機材ではそれを地下に埋設するので、基礎工事から電気設備、一気に数十kWhを蓄えるための給電網の整備など、設置はそう簡単ではない。また最近は充電網(急速・通常)を運営する業者が増え(高速道路上はe-mobility power)、それぞれで価格設定も、支払い方式も異なり、相互乗り入れも行なっていないので、ユーザーとしては自分の移動・充電パターンと適合するものを選ぶ必要がある。この点でも「基本は定置場所での通常充電・その容量で走れる距離で行って帰る」使い方が、やはりBEVの基本だと実感している。
写真:筆者

我々にとってそれらの将来見通し不明の事象は見守ればいいとしても、最新の車両に実装されている充電性能、電池の使い方については、例えばBEVの開発と市場普及を急速に進めてきた中国勢は、現状、日本で実車を走らせ確認することができるBYDをみても、世界の標準レベルを頭ひとつ抜けたところまで踏み出しています。BYDはもともと電池の開発・製造から成長して、電動バス、そして乗用車へとものづくり領域を拡張してきました。彼らが作るリチウムイオン電池はリン酸鉄系です。
そうした背景もあるのでしょうが、日本のCHAdeMO急速充電器につないでも電池容量の「80%」で充電を止めずに“満タン”まで行きますし、そのギリギリまで受け入れ電力も給電側の能力いっぱいに近いレベルを維持します。「これ(大電力・フル充電)を繰り返して大丈夫かな…」と思ってしまうのですが、とりあえず中国本社側としては「(電池性能の7割程度を維持する前提で)4500回かそれ以上の繰り返し充電が可能」という見解だそうです。
こうした充電の中で問題になるのは「電池パックの温度」です。冬場で気温と電池温度が低いと化学的活性が低下して充電の“入り方”が悪くなったり、電費が落ちる傾向があります。逆に充電中は、電池の温度が上がるのを抑制しないと、受電能力が低下し(電力が“入りにくく”なる)、電池の劣化も心配です。ここで最新の大容量電池を積むBEVの多くは、電池パック全体を必要に応じて冷却、あるいは温度保持をするために、空調システムと同様の冷媒を循環させる温度管理システムを搭載するようになりました。これに対して日本のメーカーが販売しているBEVは、自然冷却に任せているものがほとんど。後でも紹介しますが、日本の自動車技術が世界の潮流から取り残されつつあることがここにも現れている、と言えるでしょう。
この「冷熱管理」の必要性からもわかるように、充電はもちろん、電力放出している時にも、電池パックは発熱していて、その温度・熱量はかなりのものになっています。その熱はどこから出ているのかといえば、電気抵抗がある回路・経路に電流を通せば、必ずそのエネルギーの一部が熱になるから。これを「ジュール熱」と言います。ここで熱になって放出された分だけ、エネルギー利用効率は下がる。これも基本です。この発熱を避けるとなれば、いわゆる「超伝導」を導入するなどの方策が考えられるわけですが、一般の自動車にはコストはもちろん技術面でも困難で、充電から走行まで、電力の出し入れに伴う損失が存在することも、BEVのあり方、使い方を考える時に一応は頭に入れておく必要があるでしょう。

BEVでのロングツーリングはまだまだ「冒険旅行」だが、最近お世話になっているのがスマートフォン・アプリ「高速充電なび」。高速道路のSA、PAに設置されている急速充電器を、出力・空き状態・使用開始時間(1回は30分)を表示。移動ルートを設定しておくとその経路に沿って追っていくこともできる。さらにSA、PAを指定すると充電機材の出力と空満、設置状況の写真まで表示される。
写真:筆者

そういえば、PHEVを高速道路のSA、PAなどの急速充電器につないでいる事例をかなり多く見かけます。PHEVはもともと「燃焼ガスの排出を抑えたい場所」、たとえば市街地や住宅地などを走る時には電動で、速度を上げてある程度の距離を走る時にはエネルギー効率が良いゾーンで使えて航続能力もある内燃機関で、と使い分けることを想定したものです。そこでハイブリッド動力システムを基本に少し多めの電池を積んで、外部からの充電ができるようにし、これを純電動走行に振り向けつつ、混合動力としても走るクルマにしてあります。
その成り立ちを考えてゆくと、電池の充電は定置場所で、が基本になります。出先で会議などある程度の時間はクルマを停めておく状況で、最寄りの駐車場所に充電設備があればつないでおくのも良い。でもここで電池の基本に戻ると、あまり容量の大きくない電池に対して急速充電を繰り返すのは、私だったらちょっと避けたいところです。もちろん、電池の劣化を抑えるため、がまずはその理由。そして日本国内に限った話ですが、最近は複数ある充電サービス・ネットワークと契約して月決め、あるいは使用時に支払う料金は、自宅など定置場所での充電よりもコストが高くなるから。私の知己で自動車開発の最前線に立つエンジニアが自宅を太陽電池や都市ガス改質による燃料電池発電などを備える、いわゆる省エネ住宅にして、PHEVと組み合わせて生活しているのですが、彼と奥様の試算結果もまさにその通りだったそうです。<続く>

(両角岳彦)

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