SuperFormula2025

AP代替戦組み込みで稠密プログラム、天候も不安定。だったら、レースはおもしろい!【SuperFormula 2026年Rd.6・7 第3戦代替 FSW】

スーパーフォーミュラ 2026年第6・7 第3戦代替 富士スピードウェイ Spotter Guide

SuperFormula2026
写真:JRP

【レース・フォーマット】

■レース距離:第6戦<7/18(土)> 180.017km  (富士スピードウェイ 4.563km×41・16時15分スタート予定)

第7戦<7/19(日)> 180.017km  (富士スピードウェイ 4.563km×41・15時35分スタート予定)

(ともに、最大レース時間:1時間15分 中断時間を含む最大総レース時間:2時間)

第3戦代替<7/19(日)> 114.075km (富士スピードウェイ 4.563km×25・10時05分スタート予定)

(最大レース時間:50 中断時間を含む最大総レース時間: 1時間15分)

■タイムスケジュール:第6・7戦はそれぞれ予選と決勝、第3戦代替戦は、予選は実施済みなので決勝のみ実施。

17日金曜日にフリー走行、1時間と50分+2組分け各10分を実施

18日土曜日は、午前中に第6戦、第7戦の公式予選、サポートレースを挟んで午後に第6戦・決勝レースを行う。19日日曜日は、午前中に第3戦代替戦、観客向けイベントを挟んで午後に第7戦・決勝レースを行う。

第6・7戦については「2026年全日本スーパーフォーミュラ選手権統一規則」第6条4項における「1大会2レース制」に該当。この場合、2戦それぞれのレース距離は最短110km、最長300kmとされる。

ちなみに

  • 先頭車両が2周回を完了する前にレースが中止された場合、レースは成立せず、選手権得点は与えられない。
  • 先頭車両が2周回を完了し、走行距離がレース距離の75%(小数点以下切り捨て)未満でレースが終了または中止された場合、レースは成立、選手権得点は1/2となる。
  • 先頭車両がレース距離の75%を完了した後に終了または中止となった場合、レースは成立、選手権得点は全てが与えられる。

第6戦、第7戦でこの「75%」に該当するのは、31周。

第3戦代替戦では16周。

予選方式:第6・第7戦については、ノックアウト予選(Q1-2の2ステージ)方式

2グループ(A組・B組)に分かれて走行する公式予選Q1、そのそれぞれ上位6台・計12台が進出して競われる公式予選Q2の2セッションで実施される。

5/23(土)は9時15分から、5/24(日)は10時25分から、実施予定

  • 公式予選Q1はA組10分間、5分間のインターバルを挟んでB組10分間。そこから10分間のインターバルを挟んでQ2は7分間の走行。
  • 公式予選Q1のグループ分けは、各戦とも前戦終了時点のドライバーズ・ランキングの上位から振り分ける形にて。ただし参加車両が複数台のエントラントについては、少なくとも1台を別の組分けとする。
  • 第6戦Q1の組分けは…

SuperFormula2026rd6QFSuperFormula2026rd6QF

  • Q2進出を逸した車両は、Q1最速タイムを記録した組の7位が予選13位、もう一方の組の7位が予選14位、以降交互に予選順位が決定される。
  • Q2の結果順に予選1~12位が決定する。
  • 各セッション終了直前にアクシデント等で赤旗提示、走行が中断された場合は、コースインして1周し、次の周回でタイムアタックが可能な残り時間を設定して再開する。(スーパーフォーミュラの慣例として/鈴鹿の場合は3分)

第3戦代替戦については、4月25日オートポリスにて実施された予選(Q1-2-3)結果をそのまま適用する。

◼️今戦の(個人的独断)トピック

SuperFormula2026
写真:JRP

今週はこの富士戦直前に1件出張が入っていてドタバタ。金曜日、富士スピードウェイのメディアセンターに着席して、ようやくこのSpotter Guideをまとめています。

現地では金曜昼前から細かな雨が降り出し、その中で始まったSFフリー走行1回目はとくにコースの後半がいわゆるダンプ路面、つまりちょい濡れ。1時間走る中で徐々に水が消えていきましたが、ドライタイヤを履くと相当に滑る状況で終了。今日はこの後、午後〜夜に降雨、明日・土曜日も朝〜昼過ぎまで雨、でも日曜日は曇り時々晴れ、の天気予報が出ている。天候・路面が安定しない中、明日は予選2回と決勝1戦、明後日は朝と午後に決勝2戦を走るわけで、「やる」側はなかなか悩ましい3日間になりそう。

もし土曜日午前中が雨・ウェット路面になると、その中でのタイムアタック。2戦分の予選の間のインターバルは1時間半、外装交換以上の作業をする余裕はない。それが終わって午後の第6戦、レコノサンスラップ(直前コース確認)までは4時間弱、なので、もしクラッシュして足まわりにまでダメージが及んでしまうようだと、ある程度なら修復作業は可能だけれど、ピット内に暫定設営した4輪平面、いわゆる簡易定盤を使ってある程度精密なコーナーウェイト調整、ホイールアライメントと静的車両姿勢の計測・調整までをきっちり仕上げるのは大変。ファクトリーにあるきちんとした定盤上での計測に比べれば、今、日本のレーシングチームが用いている簡易定盤と計測の手法だと、どうしても誤差は残るし、再現性にも疑問が残る。そしてレーススタート前に車両の感触や特性がどこまで戻っているかを確かめる走行も、レコノサンスラップだとメインストレートは走れず、ピットロード通過で、時間も限られているし、そのままグリッドに向かわなくてはならないので、再調整する必要に迫られても最小限のことしかできない。まぁグリッドに行ってからスタート3分前まで作業することはできるけれど。

そのリスクを承知した上で、予選アタックをどこまで「行く」か。ウェット路面だと場所場所で毎周変化するグリップを瞬時に感知しつつ、摩擦力と車両運動の“エッジ”にどこまで踏み込むか、紙一重でとどめるか、踏み込むか、勇気か無茶か、ドライバー一人一人が持つ、知覚と運動制御のレベルと、それをどこまで統合して発現させているかの能力が現れるところだ。「ドライビングというスポーツ」は、畢竟そこに行き着くのですが。

その一方で、メカニックに“残業”をお願いすることになるような事態は、明日の朝にはまた、フリー走行なし、即レコノサンスラップから始まる第3戦代替戦が控えているだけに…と、周回をこなすドライバーの頭のどこかをよぎる、かも。

日曜日はまずオートポリス戦の日曜日午後、雨に包み込まれてスタートできなかった第3戦の代替開催。スターティンググリッドはその前日、土曜日の3ラウンド制予選の結果がそのまま適用される。ここ富士の今回の速さの並び順が異なるようだと、レース展開にも何かが…と思い描きたいところだが、25周、SCや中断がなければ35分ぐらいで終わるショート・スプリント。2026年全日本SF選手権統一規則・第7条「選手権得点」2項で、「レース距離150km未満」については、それを越える戦いでのフルポイント、1位20点、2位15点、3位11点…10位1点に対して、1位12点、2位9点、3位7点…9位1点と規定されている。そしてフィニッシュから4時間後には第7戦のレコノサンスラップに走り出さなければならない。そうなると…、一発勝負をかけるような鍔迫り合いには心理的抑制が働く。「勝負」はスタートの蹴り出しとそこからの速度の乗せ方に賭け、いったん並び順が落ち着いたら、とくに上位集団はポジション・キープの淡々とした周回消化になって不思議はない。F1といえども土曜日スプリントレースはそうなりがちなように。

というわけで、今週末の3連戦、白刃切り結ぶかのような、見る側も一瞬息を止めて引き込まれるような戦いが演じられるのは、日曜日午後遅めに走り出す第7戦かな…。思い返したら前戦・鈴鹿で、少なくても年に一度はこんなレースが見たい、と思うような競り合いを見せてもらえたのは2戦目の最終盤、だったわけで…。

さらに個人的には、7月初旬の合同テストで各車が何かつかんでいたか。例えば岩佐+小池エンジニアコンビは2日目前半セッションをロングラン(=レースセットとデグラデーションのデータ採り?)に徹していた一方、同じチームながら野尻+田口エンジニアコンビは細かく出たり入ったり(変更→結果を確かめたらすぐに戻る)だったり。こうしたアプローチがどこかに現れるか?

あとはメインストレートの路表面が張り替えられたとのことだが、金曜日はスタート練習できず。発進時のクラッチバイト、タイヤのスリップ率などが確かめられない状態で、とくにドライになった時(日曜日?)のスタートで、ダッシュに失敗、成功がいつもより大きく現れる、なんてことが起こるかどうか?

【タイヤについて】

タイヤ使用制限:ドライ(スリック)

2026年全日本SF選手権統一規則・第23条4項には、「競技会期間中を通じ、1レース、車両1台あたりに使用できるドライタイヤは最大6セットとする」と規定されている、が、今大会は2連戦に加えて代替開催の短距離レースが1戦組み込まれている。この状況でのタイヤ使用・新品タイヤの供給はどんな形で行われるのか。主催者・運営側からはアナウンスメントが無いので、同様の状況だった昨年最終戦・鈴鹿の時を参考に「こうしているはず」を推定する。

まず今大会の2週間ほど前に、ここ富士スピードウェイでミッドシーズンの合同テストが行われ、そこで2日間・4セッションに対して新品6セットが供給されている。もしそれ以前からの手持ちに走行距離がない・少ないものが残っていればそれらも含めて、金曜日朝の時点で3セットを”持ち込み”タイヤとして準備することが認められる。まずそこに新品3セットが供給され、金曜日のフリー走行は合計6セットから走り始める。通常の週末2連戦ならこのまま土曜日へ、なのだが、今回は土曜日午前中に第6戦に加えて第7戦の予選も行われる。これに対応したタイヤ供給が必要になるわけで、まず金曜日の走行終了段階で2セットを返還、そこに新たに新品2セットを供給。これで「1レースあたり6セット」の規則をクリアしつつ、第6戦の予選2セッションと決勝レースに加えて、第7戦の予選2セッションに対応する新品セットが、各車に対してそろうことになる。つまり、持ち越しセットに新品がなくても、フリー走行で最低1セットは新品を試し、その上で第6戦、第7戦の予選とも、Q1に新品、そこからQ2に進出できたらもう1セット新品を投入、で合計5セット。

しかしここで、金曜日のフリー走行2セッションは共に雨。ウェットタイヤ装着での走行になった。午前中のFP1は路表面の水量が少なく、ウェットタイヤはブロックが摩擦に耐えきれずにブロックの千切れが発生、最後に走行ラインだけが見た目では水が消えて、ドライタイヤを数周履いた車両もいる。そして午後のFP2は完全にウェット路面。終盤には雨量が増えて、2組に分かれての予選シミュレーションも取りやめになったほどだった。こうなると、新品を最低5セット持って、土曜日の予選2レース分×2セッションをこなしても、新品1セットが残ることになる。つまり、全てドライ路面だった場合には、Q2進出車両は新品手持ちがなくなり予選アタック品でスタート、ということになるのだが、そこで新品を使えるし、それぞれでQ1止まりだった車両は決勝レースに向けて、a交換用のセットにも新品が残る、という計算になるわけだ。

しかし、土曜日も午前中は雨の予報。午前中の2レース分の予選で、ウェットタイヤ合わせて4セット投入、なんて可能性もある(後記のようにウェットタイヤは大会期間を通して8セット“しか”ない。金曜日にそのうち少なくとも2セットは“消費”した)。午後は雨が止んでもダンプ状態からマシン群が走るにつれて水が消えてゆき、もしも第6戦・決勝がそんな状況になれば、ウェットタイヤでスタートし、そのタイヤが途中で一気に消耗して、さてそこでもう1セット、ウェットタイヤか、ドライタイヤに賭けるか…。あるいは乾き方によっては、ドライタイヤに履き替えるタイミングが勝敗を分ける…というドラマが起こりうる。ほんとは、第3戦オートポリスの日曜日、スタートを2、3時間繰り上げていれば、ウェットタイヤの消耗〜履き替えのタイミングがいつ来るか、どう判断するか、というドラマが演じられたはず、だったのだが。

そして土曜日の走行終了後には1セットを返却して、それと交換に新品1セットを供給。これは、建前上はタイヤ交換義務なしの第3戦代替開催・短距離レース用の追加、ということになるが…。チームとしてはこの段階で他に新品が残っているか、によって、第3戦代替戦と第7戦のタイヤ配分を考えることになる。

SuperFormula2026
写真:JRP

◼️決勝中のタイヤ交換義務

第6・7戦→あり / 第3戦代替戦→なし

→第6・7戦については…

  • スタート時に装着していた1セット(4本)から、異なる1セットに交換することが義務付けられる。
  • 先頭車両が11周目の第1セーフティカー(SC)ラインに到達した時点から、先頭車両が最終周回に入る前までに実施すること。

(富士スピードウェイの第1SCラインはピットロード分岐・本コースとの間に入るゼブラゾーンの起点、減速用S字カーブ手前で、本コースまで横切る白線で示されている。ちなみに第2SCラインはピットロード出口先・ピットアウト指示ラインがT(ターン)1・TGRコーナー手前まで伸びた先に直交する形で示された白線)

  • なお、セーフティカーが先頭車両10周回終了時点で導入されていた場合、そのSCが呼び戻され競技が再開された後(ということは第1SCラインは既に通過している)、先頭車両が最初に第1SCラインに到達するまでにタイヤ交換を実施しても、タイヤ交換義務消化とは認められない。
  • レースが赤旗で中断している中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは見なされない。ただし、中断合図提示の前に第1SCラインを越えてピットロードに進入し、そこでタイヤ交換作業を行った場合は交換義務の対象として認められる。
  • タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
  • レースが(31周を完了して)終了する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには競技結果に40秒加算。
  • 決勝レースの中でウェットタイヤを装着してコースインした場合、このタイヤ交換義務規定は適用されないが、ウェットタイヤが使用できるのは競技長が「WET宣言」を行なった時に限られる。

タイヤ使用制限:ウェット 1大会2レース制の場合、車両1台あたりに使用できるウェットタイヤは最大8セット

■走行前のタイヤ加熱:禁止

■決勝レース中の燃料補給:禁止

【燃料流量による性能調整について】

■燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(117.6L/h)

  • 今戦の公式通知「ガソリン性状」に記された比重の値は「7653」。今季開幕から使われているソルガム起源のエタノールを体積比10%混合したENEOS製「E10」燃料は、ベースの原油起源ガソリンのほうを重質成分側にして炭素含有量を増やしているので、比重はかなり大きく、揮発性なども通常のハイオクタン・ガソリンの“ブレンド”でいえば「高気温時期=夏用」に近いものになっている。今大会に向けて持ち込まれるものは、公示資料によるとオートポリスの時と比べて若干重め、前戦・鈴鹿の時よりわずかに軽い、程度で、常温揮発性、温度を上げて行った時の揮発の仕方などは、3戦それぞれ若干違うが、これは各1回の蒸留試験としてはばらつき程度の差と言えそう。ほぼこの時期の市販ハイオクタンガソリン相当かと。ただ毎回のデータを見ているとその時々に必要な量を少量生産しているのではないかと思われる。燃料リストリクター、すなわちあるエンジン回転速度から上になると燃料の流量上限が一定に保持される仕組みを使うと、その効果が発生する回転数から上では「出力一定」となる。出力は「トルク(回転力、すなわち燃焼圧力でクランクを回す力)×回転速度」なので、燃料リストリクター領域では回転上昇=時間あたり燃焼回数の増加に対して1回の燃焼に使える燃料の量が減るので、回転速度に反比例してトルクは低下する。つまり一瞬一瞬にクルマを前に押す力は減少しつつ、それを積み重ねた「仕事量」、つまり一定の距離をフル加速するのにかかる時間、到達速度(最高速)が各車同じレベルにコントロールされる、ということになる。
    SuperFormula2026
    エタノールを10パーセント混合、成分調整した専用ガソリンは、おそらく小ロットこんな缶で搬入され各チームに供給される。
    写真:JRP
  • NRE(Nippon Racing Engine)導入直後の2014年は最大流量100kg/h(8000rpm以上)、2015年からは95kg/h(7600rpm以上)へ。この間もSUGOのみ90kg/h。2016年以降は鈴鹿と富士を除いて90kg/7200rpmまで絞られた。鈴鹿と富士は95kg/hを2020年まで継続。2021年からは全てのコースで90kg(7200rpm以上)の設定に統一されている。
  • 現在の富士におけるSFのコースレコードは、2020年第7戦(コロナ禍の中、12月20日 晴れ・気温5℃・路面温度10℃)で野尻智紀がマークした1分19秒972。すなわち車両はダウンフォースが大きかった「SF19」、燃料リストリクター「95kg/h」でのもの。

 

■オーバーテイク・システム:最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)。

作動合計時間上限:200秒間

ステアリングホイール上のボタンを押して作動開始、もう一度押して作動停止。

一度作動→オフにした瞬間からの作動不能時間(インターバルタイム)、富士120秒

  • OTS作動時は、エンジン回転7200rpmあたりで頭打ちになっていた「出力」、ドライバーの体感としてはトルク上昇による加速感が、まず8000rpmまで伸び、そこからエンジンの「力」が11%上乗せされたまま加速が続く。ドライバーが体感するこの「力」はすなわちエンジン・トルク(回転力)であって、上(燃料リストリクター作動=流量が一定にコントロールされる領域)は、トルクが10%強増え、そのまま回転上限までの「出力一定」状態が燃料増量分=11%だけ維持される。概算で出力が60ps近く増える状態になる。すなわちその回転域から落ちない速度・ギアポジションでは、コーナーでの脱出加速から最終到達速度までこの出力増分が加速のための「駆動力」に上乗せされる。
  • ドライビングとしては、直線全体の加速(余裕駆動力)が強まり、先に待っているコーナーへのアプローチで速度が高まる、ということは、ブレーキングはその分だけ手前から始めないと、そのコーナーにターンインし、旋回することができる速度まで減速できない。OTSを作動させた時にはこの感覚の調整も要求される。
  • 後方を追走している側は、前走車がOTSを発動させれば加速が段付き状に強まるので、それがわかり、どう対応するかを判断することは可能なはず。先行する側は、「ここで使ってきそうだ」と思ったら“ディフェンス”OTSを発動させる手もあり、実際にそうしたケースが増えているが、後続車両のドライバーは早めにOTSを切ると、お互いの作動不能時間が終わるのが自車のほうが早くなるので、そこで仕掛ける、といった駆け引きが生まれている。
  • このオーバーテイク・システム(OTS)の発動を知る方法としてはSFgoアプリのテレメトリーデータになるのだが、それぞれの車両を選択表示させた上で、その画面を注視することが必要。しかしそこにアプリ上の伝送遅れ時間が、通信環境にもよるが、何十秒間かある。
  • チームとドライバーの無線交信の中で、直前・直後の車両のOTS関連情報を知らせる、問い合わせるケースが多くなっている。ドライバーからは「(直接競い合っている)車両・ドライバーがOTSを発動させたかを問い合わせる交信もあるが、SFgoには伝送遅延時間があり、即応が難しい。むしろ「(相手は)残り何秒?」が、競争の組み立ての中では意味が大きい。
  • ロールバー前面LEDは、当初、緑色。残り作動時間20秒からは赤色。インターバルタイム中の点滅も引き続き表示される。残り時間がなくなると消灯。作動の状態にある時は、ロールバー上とリアのLED表示は「遅い点滅」。車両電源ONでエンジンが止まっていると、緑赤交互点滅。また予選アタック時にドライバー自身がその意思を外部に表示したい時には、このLEDを点滅させる「Qライト」機能も使用可。

で、富士スピードウェイという舞台では…

  • 富士スピードウェイのコース・レイアウトを考えると、言うまでもなく最終コーナーの立ち上がり加速から作動開始、ストレ―トエンドまで約20秒連続作動させて加速と最終到達速度を高め、前を行く車両を捕らえるのが、まずは定番の使い方。
  • 100RからADVANコーナー、さらに300Rと続く高速区間も、空気抵抗も増えている高速域でパワーオン、加速する時に駆動力の上乗せがタイムを削る効果を生む。直線よりもタイム短縮効果が大きい可能性すらある。したがって、ライバルに対してラップタイムを削っておきたい状況、例えばピットストップに向かうインラップをできるだけ速く走って、いわゆるオーバーカットを狙う、という時にはここで使うと意外に効果大かと思われる。
  • セクター3はずっと上り勾配が続くので、出力増大がコーナーとコーナーの間の過渡駆動(トラクション)を強める効果を生むのだが、SFの場合はそもそもコーナリングスピードが速く、車両の質量に対して余裕駆動力が大きいので、このセクションの旋回からの「蹴り」はアクセルペダルをデリケートにコントロールする「パーシャル」領域がほとんどになる。したがってこの上り勾配区間の中でのOTSはあまりメリットがなさそうだ。
  • ドライビングとしては、直線全体の加速(余裕駆動力)が強まり、先に待っているコーナーへのアプローチで速度が高まる、ということは、ブレーキングはその分だけ手前から始めないと、そのコーナーにターンインし、旋回することができる速度まで減速できない。この感覚の調整も、とくに富士の長いストレートとシャープに曲がり込む1-2コーナーでは難しいところだ。上りつづら折れの続くセクター3では、旋回の中からのアクセルオンで、ターボ過給特有の吸気圧力上昇の応答遅れ(ターボラグ)からただでさえ強く立ち上がってくるエンジントルク=低いギア(変速段)での駆動力がさらに燃料増量分だけ一気に強くなり、テールスライドを起こしやすくなる。元々デリカシーが必要な右足に、さらに繊細な感覚と動きが求められるわけだ。
  • 一度作動させてしまうとその後120秒間は作動不可、ということは、最近の富士のレースペース(ラップタイム)がドライ路面では85〜86秒、タイヤ交換直後&燃料搭載残量・少で84秒台半ばあたりだったので、作動-OFFから後は1周と2/5、例えばストレートエンドまで使った場合は、そこから次の周回のストレートを走り切り、セクター2を終わるあたり(ダンロップコーナー手前)までは使えない、という計算になる。
SuperFormula2026
写真:JRP

【レース中のタイヤ交換ピットストップについて】

■ピットレーン速度制限:60km/h

■レース中ピットレーン走行+停止発進によるロスタイム: 富士のコースでは、長いストレートを加速して行く途中でピットロードが分岐、S字状の速度抑制部を抜けた先から速度制限区間が始まる。ここから出口シグナルまでの速度制限区間は約380m(Google mapによる)。そこを60km/hで走り抜ける中に停止・発進を挟むと走行時間は25秒ほど。しかし減速は手前の屈曲部で始まり、出口側でも速度制限区間が終わったところで、レーシングスピードでストレートを走ってきた車両の速度は250km/h(秒速69.4m)を越えようとしている。ちなみに燃料流量制限90kg/hで走ったプレシーズンテストで、レースペース想定と見られる周回で、OTSやスリップストリームを使っていない状況でスピードトラップを通過した速度は290km/h前後。ピットアウトしてきた車両との間の速度差は200km/hほどにも達する。

かくして富士スピードウェイでのSFのレースでは、ピットインにおけるピットロード走行+停止・発進のロスタイムはかなり大きく、28〜30秒と見積もられ、実際に近年のSFのレースデータから抽出・概算した値もそのくらいに落ち着いている。これにピット作業のための静止時間、現状のタイヤ4輪交換だけであれば7〜8秒を加え、さらにコールド状態で装着、走り出したタイヤが温まって粘着状態になるまで、路面温度にもよるが半周、セクター3にかかるあたりまでのペースで失うタイム、おおよそ1秒ほどを加えたぎりぎり最小で36秒、若干のマージンを見て3840ほどが、ピットストップに”消費”される時間となる。

■ピットストップ: ピットレーンでの作業が認められる要員は6名まで。ただし1名は「車両誘導要員」として、いわゆる“ロリポップ“を手にしての誘導に専念することが求められる。したがってタイヤ交換に関われるメカニックは5名となる。この人数の中でタイヤ交換以外の作業時間を削り取るべく、前側のジャッキアップを自動化。車両ノーズの進入を接触センサーなどで検出し、圧縮窒素ボンベからのガス圧力で伸縮するシリンダーを伸ばしてリフトさせる。後側は人手で空圧ジャッキ挿入後、リフトを自動化。どちらも空圧を抜けば車両重量でジャッキが“落ちる”。各チームのメカニック・グループの設計製作なので、車両検知・リフトのメカニズムがそれぞれに異なる。前側に自動上昇ジャッキ、後のジャッキ(これも空圧作動が普及)の挿入・上昇の作業に1名が付き、残り4名は各輪の場所で待機して車両が滑り込んできたら一気に4輪交換に入る。前輪側の一人が作業終了して移動、反対側の作業完了を確認した瞬間にフロントジャッキを落とし、リアは専任者が同様にジャッキダウンして、発進…という流れが一般的。このあたりは、各チームの知恵と練習の成果が現れるところ。

*レースペースとその変化、タイヤの“一撃”の使い方とデグラデーション傾向などを見るための参考に、昨年同時期に開催された第6戦(36周)と第7戦(41周。今回の第6・7戦と同じだが、途中SCが入っている)の、決勝上位10車のラップタイム推移のグラフを掲載しておきます。SuperFormula2025rd6raceSuperFormula2025rd6race

【ご参考】

◆富士スピードウェイのセクター平均速度

*現在のコースレコード=2020年スーパーフォーミュラ第7戦・予選最速タイム(野尻智紀)<燃料流量上限95kg/h>にて計算

セクタータイム[秒]区間距離[m]平均速度 [km/h]1周タイム比率[%]
セクター120.551  (18.553)1305228.6025.7
セクター224.187  (24.463)1523226.6830.2
セクター335.234  (40.028)1735177.2744.1
周回79.972  (83.044)4563205.41(100)

(注)2020年に記録されたこのコースレコードをそれ以前の最速タイムと比較すると

セクター3でのタイムアップ幅が大きい。2017年・国本の従来最速タイム-()に記す-より4.794秒も速い。

逆にセクター1はほとんど2秒遅い。つまり低中速でもダウンフォースが効くところまで、

空力セッティングを低速寄りにシフトしているのが最近の傾向なのである。

 

◆SF23導入以降における予選最速タイムは…

2023rd1・野尻智紀(計時予選) 1分22秒062  S1: 21.001秒 S2: 24.966秒 S3: 36.095秒 スピードトラップ: 299.169km/h

2023rd2・野尻智紀(Q2) 1分21秒196  S1: 20.895秒 S2: 24.628秒 S3: 35.672秒 スピードトラップ: 298.343km/h

2023rd6・牧野任祐(Q2) 1分22秒063  S1: 20.905秒 S2: 24.891秒 S3: 36.267秒 スピードトラップ: 296.703km/h

2024rd4・福住仁嶺(Q2) 1分22秒543  S1: 20.986秒 S2: 25.020秒 S3: 36.535秒 スピードトラップ: 303.371km/h

2024rd6・福住仁嶺(Q2) 1分22秒726  S1: 20.896秒 S2: 24.754秒 S3: 36.074秒 スピードトラップ: 291.105km/h

2024rd7・坪井翔 (Q2) 1分21秒880  S1: 20.965秒 S2: 24.634秒 S3: 36.454秒 スピードトラップ: 291.105km/h

2025rd6・野尻智紀(Q2) 1分22秒417  S1: 20.810秒 S2: 25.153秒 S3: 36.281秒 スピードトラップ: 300.000km/h

2025rd7・坪井翔 (Q2) 1分22秒940  S1: 20.778秒 S2: 25.166秒 S3: 36.996秒 スピードトラップ: 300.000km/h

2025rd9・フェネストラズ (Q2)  1分33秒967 雨・赤旗終了

2025rd10・牧野任祐(Q2) 1分22秒123  S1: 20.863秒 S2: 25.003秒 S3: 36.257秒 スピードトラップ: 300.000km/h

こうして並べてみると、気温・路面温度が上昇する7月はタイムがかなり落ちていることがわかる。とくに2024年第4戦は全体のタイムが伸びていない中で福住がセッティングか、直前車両のスリップストリームがうまく使えたか、などの要因で僅差の最速を記録、ポールポジションを獲得したのでは…? ちなみにこの時の予選Q2は上位4車が0.03秒差の中に集中する結果だった。この日は気温30〜31℃、路面温度40〜42℃。

同第6戦ではポールポジションの福住と2番手・太田の差が4/1000秒。翌日第7戦では全体にタイムが伸び悩む中、坪井が最速。直線エンド手前の速度が前日の福住と全く同一なのが興味深い。

2025年になると、開催時期による傾向は同様だが、ストレートスピードも少し稼ぐ方向へセッティングしてきているような…。その一方、7月の2戦はタイム落ち込み傾向の中でさらに2日目は天候に加えて実施時間帯が遅いことで気温・路面温度が上がり、全体にタイムが出なかった。その中で本人も「?」だったと語る坪井は、S3のタイムは落ち、むしろ直線〜Aコーナー〜100Rでポールシッターとなるタイムを稼いでいる。 2023年第6戦と2年後の第10戦で最速を記録した牧野の場合は、やはりコース前半、ストレート〜Aコーナーで少しタイムを稼いでいるが、S2、S3のセクタータイムは「誤差範囲」。ドライバーの再現性の高さも窺えるが、仕様も開発も凍結されている2社のNREパワーユニットはもちろん、SF23の煮詰めも「重箱の隅」レベルにある、と読み解いてもよさそうだ。

(両角岳彦)

SuperFormula2025
最新情報をチェックしよう!
>慌てない乗り物情報「henshusha.com」

慌てない乗り物情報「henshusha.com」

最新情報をいち早くお届けするのではなく、気になる情報をじっくりと私見を交えてお届けするのが「henshusha.com」です。
疲れたときに読んでほっこりするのを目指しています。

CTR IMG