BEV-急速充電

統一されない充電規格。日本のCHAdeMOでは充電口が2つ必要【自動車のCN化-その真実_全てBEVになる日は来ないvol.19】

電気を送る側だけでない、受け入れる自動車側の仕組みも重要

一般充電と急速充電の中間的存在として、10〜20kW級の比較的コンパクトな充電器も、自動車ディーラー店頭などに設置されていますが、これだと「ちょっと注ぎ足し」程度の充電しかできないので、最近は減少傾向のように見受けます。
こうした40〜50kW級の充電器もかなり使ってきましたが、当初は時間制限がなく、まだ他にはBEVが普及していなかったので「リーフの充電待ち行列」に加わって1時間以上待つ、なんてことも起こっていました。そこで日本の急速充電網では「1回の充電は30分まで」というルールができ、今もそれが継続されています。この後に述べるように、最近はさらなる大電力を一気に流す充電設備が現れているので、この「30分」しばりが適切かどうか、また考えたほうが良い時期なのかな、と思いますが。

BEV-急速充電
BEVで一気に500km、さらには1000kmを一気に走る、という試乗を始めたのは2014年ごろから。それ以前は「片道100km程度を余裕を持って往復できれば…」というBEVとして適切と考えられた使い方に合わせた電池容量が基本で、こちらもそれに合わせた走行プランを組んでいた。東京〜岩手〜東京〜広島〜東京という超ロングドライブを初めて敢行したのはBMW i3の0.65ℓ発電用エンジンと9ℓのガソリンタンクを積んでいた「レンジエクステンダー」仕様。あの頃は高速道路のSAでも急速充電器、それも40kW器が数えるほどしかなく、日産、三菱のディーラーでも大方は20kW器で、あらかじめ走行ルートと充電場所(稼働時間帯も)を調査、計画立案した上で出かけることが欠かせなかった。写真はさらに5年ほど後の純BEV・1000km旅程の時のものだが、この頃でも高速道路SAの急速充電器は40〜50kW器だった。
写真:筆者

ただここで、充電器が送り出せる電力に対して、車両側の受容電力はそれぞれの車種で設定されていて、充電器に接続するとそこで電池の状態、残量などを含めた情報をやりとりし、流し込む電圧×電流の量と、例えば「最初はこのくらい流すけれど、(電池の保護を考えて)徐々にこう落としてゆく」といったプロセスを決めるようになっています。そこで多くの場合、最大充電能力が50kWある機材でも、車両によってその半分程度の電力を受け入れるのに留めるケースがほとんどでした。
そうなると、30分間で充電できるのは「1時間に20kWの半時間分」つまり10kWhか、多くても20kWh。それで走れる距離は、電費が5km/kWh(1kWhあたりの走行距離)として50kmか、100kmか。そうなると例えば高速道路を使った遠出では、30〜40分走ったら次のサービスエリアで充電器へ、を繰り返す走行にならざるをえません。
この状況に膠着しつつ20年近くが過ぎ、最近になって、日本の急速充電網にも少しずつ設備の改良・リニューアルとネットワーク拡充の動きが出てきました。充電器はまず90kW級へ。これが高速道路のサービスエリア、パーキングエリアなどに複数並べて設置されているところが徐々に増えています。さらに150kW級も実用化され、その設置も進みつつあります。私がBEVで移動する時には、こうした新型充電器が置かれているポイントと、その空き状況・充電開始時刻(そこから30分経てば空くはず)を確かめられるアプリを使いつつ、「今の電池残量と電費ならばどのあたりまで走れるか。目的地に着いた時にどのくらい残しておきたいか。ではどこの充電器で何十kWhぐらい充電するといいか…」と、暗算を繰り返すのが得意になりました。
とはいえ大容量充電器に接続しても、先ほども触れた「車両と電池の設定と現状によって流せる電力量」次第で、その能力をフルに使えない、つまり20〜40kWしか流れないことも起こります。このあたり、実際にBEVを持って使うようになったら、個々に確かめ、また経時変化も体験しつつ把握してゆくことになるわけですが。

BEV-急速充電
日本ではBEV本格市販(三菱i-MiEV、日産リーフ)が動き出した2010年に東京電力と自動車メーカーが主体のCHAdeMO協議会が設立され、急速充電規格を策定。アップデートを続けてきている。コネクター類の諸元だけでなく、接続時に車両・電池の制御ユニットと充電器が通信して充電管理を行うプロトコルもここで標準化されているが、輸入車や旧式車ではその通信がうまくいかないケースも体験している。また充電器側が高出力化しても車両+電池制御がそれに対応していないと、充電流量は低いままになる。そしてヨーロッパを中心に急速充電と通常充電をひとつのコネクターで対応するCOMBO、テスラが独自に策定し、BEV市場の中で存在感を増す中でとくにアメリカでは車両、充電網のデファクトになったNACS、さらに中国は独自規格と、急速充電はで最近は大電力一気投入方式が複数試みられていて、世界的な共通化・標準化は進んでいない。
写真:CHAdeMO,Volkswagen,Tesla

こうした「充電マネージメント」に関しては、テスラが急速充電についても独自方式で、当時としては大電力を扱うシステムを展開しました。そのコネクターを含めた急速充電規格の「テスラ方式」は、アメリカでは標準方式のひとつになっています。ちなみに日本の急速充電設備とコネクター、車両側との通信などの仕組みは、それを検討・規格化した自動車メーカー、電力会社などが組織した評議会の名前を取って「CHAdeMO方式」と呼ばれていますが、世界への浸透は進んでいません。日本方式では、200Vの普通充電には別のコネクターを使いますので、日本仕様のBEVには充電受け入れ口が二つ設けられています。ヨーロッパとアメリカでは普通充電と急速充電のコネクターを一体化した「COMBO」方式が標準化されている。という状況で、充電規格そのものも、まだ世界で「これ」と決まっていないのです。

BEV-急速充電
欧州標準のCOMBO受電口に対して、CHAdeMOからの充電を受け入れるための変換コネクター(ソフトウェアも実装)を介して急速充電を行う。Fiat 500eでの事例。テスラも日本では同様の変換コネクターを提供しているが、筆者は未体験。
写真:筆者

その一方で、最近はBEVそのものの開発・商品化だけでなく充電能力の向上に関しても、中国勢の台頭が急。「『100kWhを5分で充電できる』急速充電と車両側の対応を達成した」、といった発表は、もちろん技術的には可能かもしれないし、「新エネルギー車(中国でこう記した場合、BEVに限定した分類ではない。そこを「電気自動車」だと一括りにしてしまうあたりも、日本のメディアの変わらない問題点ですが)」を国策として推進している中国では、局地的にそうした実験システムの設置もできるだろう、と受け止めていますが。<続く>

(両角岳彦)

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