電気を送る側だけでない、受け入れる自動車側の仕組みも重要
一般充電と急速充電の中間的存在として、10〜20kW級の比較的コンパクトな充電器も、自動車ディーラー店頭などに設置されていますが、これだと「ちょっと注ぎ足し」程度の充電しかできないので、最近は減少傾向のように見受けます。
こうした40〜50kW級の充電器もかなり使ってきましたが、当初は時間制限がなく、まだ他にはBEVが普及していなかったので「リーフの充電待ち行列」に加わって1時間以上待つ、なんてことも起こっていました。そこで日本の急速充電網では「1回の充電は30分まで」というルールができ、今もそれが継続されています。この後に述べるように、最近はさらなる大電力を一気に流す充電設備が現れているので、この「30分」しばりが適切かどうか、また考えたほうが良い時期なのかな、と思いますが。

写真:筆者
ただここで、充電器が送り出せる電力に対して、車両側の受容電力はそれぞれの車種で設定されていて、充電器に接続するとそこで電池の状態、残量などを含めた情報をやりとりし、流し込む電圧×電流の量と、例えば「最初はこのくらい流すけれど、(電池の保護を考えて)徐々にこう落としてゆく」といったプロセスを決めるようになっています。そこで多くの場合、最大充電能力が50kWある機材でも、車両によってその半分程度の電力を受け入れるのに留めるケースがほとんどでした。
そうなると、30分間で充電できるのは「1時間に20kWの半時間分」つまり10kWhか、多くても20kWh。それで走れる距離は、電費が5km/kWh(1kWhあたりの走行距離)として50kmか、100kmか。そうなると例えば高速道路を使った遠出では、30〜40分走ったら次のサービスエリアで充電器へ、を繰り返す走行にならざるをえません。
この状況に膠着しつつ20年近くが過ぎ、最近になって、日本の急速充電網にも少しずつ設備の改良・リニューアルとネットワーク拡充の動きが出てきました。充電器はまず90kW級へ。これが高速道路のサービスエリア、パーキングエリアなどに複数並べて設置されているところが徐々に増えています。さらに150kW級も実用化され、その設置も進みつつあります。私がBEVで移動する時には、こうした新型充電器が置かれているポイントと、その空き状況・充電開始時刻(そこから30分経てば空くはず)を確かめられるアプリを使いつつ、「今の電池残量と電費ならばどのあたりまで走れるか。目的地に着いた時にどのくらい残しておきたいか。ではどこの充電器で何十kWhぐらい充電するといいか…」と、暗算を繰り返すのが得意になりました。
とはいえ大容量充電器に接続しても、先ほども触れた「車両と電池の設定と現状によって流せる電力量」次第で、その能力をフルに使えない、つまり20〜40kWしか流れないことも起こります。このあたり、実際にBEVを持って使うようになったら、個々に確かめ、また経時変化も体験しつつ把握してゆくことになるわけですが。

写真:CHAdeMO,Volkswagen,Tesla
こうした「充電マネージメント」に関しては、テスラが急速充電についても独自方式で、当時としては大電力を扱うシステムを展開しました。そのコネクターを含めた急速充電規格の「テスラ方式」は、アメリカでは標準方式のひとつになっています。ちなみに日本の急速充電設備とコネクター、車両側との通信などの仕組みは、それを検討・規格化した自動車メーカー、電力会社などが組織した評議会の名前を取って「CHAdeMO方式」と呼ばれていますが、世界への浸透は進んでいません。日本方式では、200Vの普通充電には別のコネクターを使いますので、日本仕様のBEVには充電受け入れ口が二つ設けられています。ヨーロッパとアメリカでは普通充電と急速充電のコネクターを一体化した「COMBO」方式が標準化されている。という状況で、充電規格そのものも、まだ世界で「これ」と決まっていないのです。

写真:筆者
その一方で、最近はBEVそのものの開発・商品化だけでなく充電能力の向上に関しても、中国勢の台頭が急。「『100kWhを5分で充電できる』急速充電と車両側の対応を達成した」、といった発表は、もちろん技術的には可能かもしれないし、「新エネルギー車(中国でこう記した場合、BEVに限定した分類ではない。そこを「電気自動車」だと一括りにしてしまうあたりも、日本のメディアの変わらない問題点ですが)」を国策として推進している中国では、局地的にそうした実験システムの設置もできるだろう、と受け止めていますが。<続く>
(両角岳彦)

