マツダというメーカー、一度発売した車両をブラッシュアップしていくことに誠実なメーカーと感じております。
普通は小変更やマイナーチェンジでは行わないような、目に見えないような改良を、地道に、良かれと思うことはとことん追求する。他メーカーだったら、小変更時に密かにパーツの質感を落としたり、見えない部分を省いたり、パーツ点数を減らすなどのコストダウンをガンバったり……というケースも耳にします。
では、かつてどんなことをやってきたか。思い付くものだけでもピックアップすると……
●インパネをフルチェンジしたアテンザ
3代目でCX-5に次ぐ魂動デザインとなったアテンザが、マイナーチェンジでインパネを全面刷新。通常マイナーチェンジでインストルメントパネルは、基本デザインを変えずにメーターパネルやエアコンスイッチ類などの変更に留まるのが普通ですが、まったく違うデザインとなって登場しました。スタイリッシュな外観デザインに対し、インテリアデザインが見合わないと判断したのではないでしょうか。デザインへのこだわりですね。
●ロードスターRFはエンジンの中身だけを変えた
NDロードスターに国内で2リッター幌モデルが登場しなかったのは、「きちんと回る気持ち良い2リッターエンジンが間に合わなかったから」との噂があります。それを裏付けるように、ロードスターRFの2リッターエンジンを「中身だけ」変更。その理由は、「気持ちよく回るようにしたかった」とのこと。北米などではトルクフルなエンジン特性が重視されますが、日本では回るエンジンがスポーツカーにとって非常に重要。カタログや写真では絶対伝わらないそんな変更をきちんとやっていたのです。
●密かに鉄板の厚さを変えてしまったCX-3
小さなプレミアムSUVを目指しデビューしたCX-3でしたが、途中の小変更で、なんとリヤドアの鉄板の厚さを変えるという変更を行いました。理由は「高級車らしい静粛性」のためだったそうです。コストアップは素人考えでも想像できますが、生産部門との調整もかなり大変だったそうです。それでも相応しいと思ったことはやるのがマツダの姿勢なのです。
●排気量を上げて価格を上げなかったデミオ
かつてマツダは、コンパクトカー、デミオの1.3リッターエンジンを1.5リッターにするという変更を行いました。排気量を上げても実用上の燃費はほぼ同等。それよりの走りの余裕やシフトチェンジ回数の減少、同じ速度では回転数が下がることで静粛性が増すなどのユーザーにとっての恩恵が増えるだろう、との理由です。「そんな上手いこと言いながら、ホントは値上げする口実でしょ」と思うなかれ、その時の価格変更はありませんでした。
●マイナーチェンジでホイールベースを変えたコスモスポーツ
およそ60年前の1967年、コスモスポーツは世界初の実用ロータリーエンジン搭載量産スポーツカーとして登場します(1964年にNSUが1ローターのヴァンケルスパイダーを発売していますが、実用的ではなかったようです)。しかし、1968年にはそのホイールベースをマイナーチェンジで15cmも延長します。「当時、世界で通用するGTカーを目指し、直進安定性を狙ったためだった」と国際自動車ジャーナリストの山口京一さんからそうお聞きしました。
そんな例を上げたのは、CX-60が3月19日に行った「商品改良」の内容が凄い、細かいと思ったためです。そのリリースに書かれた内容は以下の通りです。
=======
1. 機能性の向上
①マツダコネクト操作性改善
全機種でApple CarPlay/Android Autoのタッチパネル操作機能を追加しました。
②風切り音の遮音性能の向上
フロントドアガラスを遮音ガラスに変更することで、風切り音の遮音性を向上させました。
③機能装備の追加
CX-80 で先行採用されている以下4点を CX-60 に追加。
・Amazon Alexa(アマゾン アレクサ)
・マツダオンラインナビ
・リアシートアラート
・360°ビュー・モニター(トレーラーヒッチビュー)
2. 安全性の向上
お客さまにより安全・安心に運転を楽しんでいただけるようにCX-80で先行採用されていた以下の3点をCX-60に追加しました。
・クルージング&トラフィック・サポート(CTS)[緊急停止支援機能付き(ドライバー・モニタリング連動)]・緊急時車線維持支援(ELK)[側方危険回避アシスト機能&ロードキープアシスト機能&対向車両衝突回避アシスト機能]・スマート・ブレーキ・サポート(SBS)[対向車衝突被害軽減機能]
3. デザインの変更
①シフトパネル/コンソールとドアトリムの加飾の変更
以下機種において、シフトパネル/コンソール、ドアトリムの加飾を「メッシュメタル:シルバーベゼル」から「マットブラックヘアライン:シルバーベゼル」へ変更しました。
「25S Exclusive Mode」「XD Drive Edition Nappa Leather Package」「XD-HYBRID Drive Edition Nappa Leather Package」
②エグゾーストガーニッシュの変更
ブラック基調外装の統一感をより強めるため、XD機種のエグゾーストガーニッシュを、クロームメッキからブラックメタリックへ変更しました。
③外装色の追加/廃止
・CX-60のスポーティな世界観を演出するカラーとして、「ポリメタルグレーメタリック」を全機種に追加。
・「ジルコンサンドメタリック」を全機種に拡大。
・「ソニックシルバーメタリック」を廃止。
4.「XD-HYBRID Drive Edition Burgundy Leather Package」追加
スポーティな走りを強調する赤内装を採用した「XD-HYBRID Drive Edition Burgundy Leather Package」を追加しました。
5. 機種体系の刷新
●新機種追加
「XD-HYBRID Drive Edition Burgundy Leather Package」
「XD-HYBRID Drive Edition Nappa Leather Package」
●機種廃止
「25S S Package」「25S Exclusive Mode(ピュアホワイト仕様)」「XD-HYBRID Exclusive Sports」「XD-HYBRID Exclusive Modern」「XD-HYBRID Trekker」「PHEV L Package」
=======
「商品改良」というタイミングでガラスを二重にするというのは、かなりの気合の入れようです。そこまでして、CX-60をマツダの(少なくとも国内では)フラッグシップにすべし、との思いも伝わりますね。これほど細かな改良、仕様変更、ラインアップの見直しなど、いやはや、クルマを作って売るのって大変だなあ。しかもこれを世界中で展開しなきゃならないんだから。と、妙に感心してしまった次第です。
さて今回、その商品改良したCX-60に新しく追加された「XD-HYBRID Drive Edition Burgundy Leather Package」をお借りし、3日間で約1400kmほど試乗しました。ディーゼル+マイルドハイブリッドです。改めて、長距離ドライブこそ、CX-60の良さだと実感しました。
サイドガラスが2重になったことで、明らかに静粛性は増していると感じました。遮音は長距離走行の疲労軽減にも繋がります。そのおかげか、「運転に疲れた」と感じることはありませんでした。
それは、助手席、後席の乗員にとっても同様で、それだけの移動距離ながら、どの席からも長く走っていることへの不満は一切出ませんでした。硬めの乗り心地も、高速メインの長距離移動には非常に向いていると言えます。ただ、路面の悪い道での突き上げはかなり和らいだと思いますが、かなりソフトに仕上がった新しいCX-5と比べてしまうと大きな差を感じます。それもキャラクターの違い、また乗り手の好みの範疇だと思います。
不満な点は、乗降時にシートやフロアと地面の高低差が大きく、小柄な人には乗り降りにやや苦労する、といったところでした。サイドシルの厚みも影響しているでしょう。大柄な外人に合わせたためなのか、足の短い日本人(筆者だけか?)には、ひょいと軽く飛び乗ったり降りたりのような感覚でもありますね。
タッチパネルとなったマツダコネクトも期待しましたが、走行中はタッチできないなど、現状ではやや中途半端に感じられます。やはりCX-5と同様のGoogleビルトインへの進化に期待しましょう。
シフトパターンが個人的に嫌いな逆L字パターン。これは次の「小変更」でも即ストレートにして欲しいところです。
およそ1400kmのドライブで燃費は15.8km/Lでした。ロングドライブのため、あまりマイルドハイブリッドの燃費効果は影響が少なかったようです。それでも、大柄なゆったりボディをどんなシーンでもかなりの余裕を持って走らせてくれて、単価の安い軽油で走れるのは大きな魅力でしょう。
CX-60は、その大柄なボディも含め、街中よりも遠出が似合うのは間違いなさそうです。愚直に技術を進化させ、クルマを深化させるマツダ。ある意味、商売がヘタとも言えるかも知れませんが、その姿勢は素晴らしいものだと感じます。かなりの完成度を感じさせるCX-60ですが、さらなる進化にも期待できると思いました。
(小林和久)







































































