東京オートサロンには、多くの自動車大学校の学生が卒業制作として作ったカスタムカーがあちこちに展示してあります。
電気で走ろうが、自動運転だろうが、空を飛ぼうが、人を乗せる機械の整備は無くなりはしません。いや、むしろ自動化などで運転者の負担を減らすにはしっかりした整備がより重要になります。そんな自動車の整備士を主に育ててくれるのが自動車大学校で、中には自動車を作るメーカーに入社したり、開発に関わったりする人も生み出しています。
そうした自動車大学校は大きく分けると自動車メーカー系と独立系に分けることができ、当然ながら自動車メーカー系はそのブランドのディーラーへの就職がしやすくなり、独立系ではブランドを選びやすくなったり地元の自動車関連業者へ有利になったりするでしょう。
今回紹介する日産・自動車大学校は、もちろんその名の通り日産系で、全国に5校展開し、その中から愛知校、京都校の2校が出展しました。
愛知校の下野クンらによって製作されたのが、U11ブルーバードマキシマをベースに、ブルーバードで走りと内装の極みを目指した「ブルーバード極(きわみ)」。ブルーバードの最上級モデルであったマキシマを超えるものを作りたいという思いで手掛けてきたといいます。
下野クンによると、センターピラーレスの4ドアハードトップがとても新鮮で、それを活かしながら走りを極めるために、センターピラー部分を通さないロールケージを学生が曲げて伸ばして組んだのもだそうです。今の若者がカッコいい、乗りたいと思うような表現になったのだと言います。
京都校の出展する1台が、池脇クンがリーダーを努めた「Z Lealia(リーリア)」と名付けた、M35ステージアをベースに、RZ34フェアレディZの顔面スワップをしたステーションワゴン。「リーリア」は、英語で率いる意味の「Lead」とラテン語で家族を表す「Familia」を組み合わせた造語だそうです。
今の日産にはスポーツワゴンがないということから、「家族と歩むスポーツワゴン」をコンセプトに、お父さんが憧れたであろうスタイリッシュなRZ35の顔を、走りも楽しめるV6エンジンを搭載した後輪駆動であるM35ステージアに取り付けたわけです。
ボディカラーはやはりRZ35の特別塗装色「イカヅチイエロー」で全塗装。家族を率いてドライブを楽しめる1台に仕上がったのです。
そしてもう1台、スカイラインマニアである京都校の小西クンが制作担当をした、「NEO Skyline」。モチーフにしたのはケンメリであるのは誰もが思いつくところですが、その中でも小西くんは、初期モデルの72年(昭和47年)式GTを選んだと言います。あえてGT-Rでなく、もっともケンメリらしくCMにも登場していたものをV35スカイラインクーペをベースに目指したのだそうです。
しかし、単に前期型ケンメリスカイラインの再現を目指したのではありません。スカイラインシリーズ全般をリスペクトして、ディティールに各モデルのエッセンスを散りばめています。
リヤタイヤを覆うハコスカ、ケンメリ、ジャパンに共通のサーフィンラインを再現したのはもちろんですが、例えば、その車名にもなっているNEOはR34後期型のRB25DETの愛称として登場したNEOストレート6からのもので、シートバックに刺繍されたNEO SKYLINEのロゴでは、NEOの下に位置するSKYLINEのロゴは、ハコスカ2ドアハードトップのリヤフェンダーのものを使用(セダンはロゴ形状が違うのだそうです)し、そのカラーはDR30スカイラインに搭載されたFJ20エンジンのヘッドカバーをイメージしたややくすんだ赤にしたとのこと。
この理由として、櫻井眞一郎さんが開発時に人間らしい意思の籠もったクルマづくりをしてほしいというということで、人の血の色のような赤にした、ということを聞いて、その赤を採用したといいます。いや〜、古いこと知ってますねー。
ちなみに、ケンメリ当時はボディーカラーに合わせた内装色があり、そのためNEOスカイラインの内装もブルーになっています。
GTのエンブレムはV37スカイラインNISMOのものですが、やはり元の赤を青に塗り替えて装着、リヤフェンダーのSkylineのロゴはケンメリのもの。リヤエンドパネルにあるSKYLINEはV35のものだそうです。
ボディカラーはケンメリ初期のイメージカラーであるブライトブルーメタリックを現代風に再現。「塗料のマイカをたくさんご協賛いただいたので可能になりました。購入してたら予算オーバーしていたかも」といいます。
小西クンとしゃべっていると、まるでスカGマニアのおじさんから教えてもらってるほどの錯覚を覚えます。
学生たち=若者が、日産の現在またはかつての名車をリスペクトし、カッコいいと思って、「こんな車があったら欲しい」と思ったカタチを具現化してくれているわけで、日産自動車のおじさんたちはそのままこれを市販車に取り入れたらいいんじゃないでしょうか? 彼らが将来の日産の救世主かも知れません。若者の好きな車ばなれしているのはおじさんのほうかも知れませんよー!
(文・写真:小林和久)
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